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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第8章 オーバーランしても後退禁止ってなぜ?
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第94節 意図せぬ再会

再会っていいものです。

なかなか会えない人に再び会えることは、いまでは贅沢ですらありますが。

会えない会えないと思っていたら、鬼籍に入られていたということも少なくありません。

会えるうちに会っておくのが後悔しない生き方だと思うのですがさて。

今回はそう言うお話です。

それでは、どうぞ。

<異世界召喚後38日目午後>

 場所:サッシー王国レーベン辺境区ネトラレ山

 視点:ユリ(ハイドウルフ)


 私の名前はユリ。

 ハイドウルフのユリ。

 ご主人様は、ノナカというらしい。

 精霊たちはマスターとか言っている。


 ご主人様、と同じような意味なのだろうか?

 なら、私も精霊達に習ってマスターと呼ぶことにしよう。

 もっとも、ウルフの私は吠えることはできても話しかけることはできない。

 せっかく言葉が分かるのに、役に立てないのが歯痒い。


 でも最近、「はい」と「いいえ」のジェスチャーを覚えた。

 頭を縦に振れば「はい」。

 横に降れば「いいえ」。

 マスターがやっているのを見て覚えた。


 これをするようになってから、マスターが指示を出してくれるようになった。

 正直嬉しい。

 私のことをよく見ていてくれている。

 あと、暇な時は、棒を投げて私と遊んでくれる。


 今回は、その指示の一環として、ウーバン村まで行って、マインウルフを一個小隊借りてくるというお使いクエストを指示された。

 楽勝だと思った。

 山を登って、降って、マインウルフに一声かけて、引き連れて戻ってくればいい。

 それを1日から2日の期限でやればクエスト完了。


 他の人には難しくても、私には簡単だった。



 とりあえず窪地になっていた温泉から、マスターの身を挺したアシストで脱出すると、ひたすら山頂を目指した。

 ウーバン村までの道なんて覚えていない。

 ウーバン村の匂いも、ちょっと探すには厳しい。

 だから、匂いの届くであろう山頂を目指す。


 山頂からなら、きっと帰ることができるはず。

 そう思って、ひたすら雪山を登っていった。

 流石に寒くて冷たい。

 でも、走っていると体は熱い。


 舌を出して体温調整をしつつ、もう少しで頂上というところで、モンスターに遭遇した。

 逃げようとしたが囲まれた。

 こいつら、なんだ?

 いや、見たことある。


 アイスエレメントとスノーエレメント。

 エレメント族だ。

 でも、知らない顔。

 知らない匂い。


 とりあえず、吠えて威嚇した。

 全く動じない。

 効果なし。

 じゃ、そゆことで。


 私はもう一度、逃げようとした。

 でも、道を塞ぐ黒い影がいた。

 あ、こいつは知っている。

 ダークエレメントのクロウだ。


「お、なんだよ、ノナカんとこのユリじゃねぇか。なんでこんなとこいるんだよ?」

「ばふぅ。」

「なんだと? そうかそうか。よしよしよし。」

「あの、クロウ? ユリの言いたいことが分かるのですか?」

「無理! 分かるわけねーだろ! 数少ない同属性だからな、可愛がってるんだよ。」

「あ、ちょっと。私にももふもふさせなさい。」

「だ〜め。おめーは神聖属性だろうがよ。俺と一緒でダメージ喰らうから。ユリが。」

「ちょ、ちょっとだけ。ちょっとだけですから。」

「諦めの悪いやつだな。」


 後から来たのはホーリーエレメントのモンド。

 素っ裸の白く光り輝く女の人だ。

 真面目で優しくて、よく撫でてくれる。

 でも、触られると属性効果でダメージが入る。


 あと、同性だって気がついているのかな? 大丈夫かなこの人?


「え〜なになに、そうかそうか。よしわかった。一緒に行こうか。」


 クロウが私の首輪から、こっそりメモを取り出すと、それを読んで納得していた。

 というか、話せないのを見越して、羊皮紙の切れ端メモを預かっていたのを忘れていた。

 同属性とかそういうの抜きにしても、さすがはエレメント族。

 よく、見えている。


「え、ちょっと。見せてください。なんて書いてあるんですか?」

「ああ。お使いクエストだ。野菜と肉を買ってきてくれってな。」

「絶対嘘です。本当のことを言いなさい!」

「ほらよ、読んでみれ。」


 クロウがモンドに手紙を渡す。

 指先がちょっと降れて、クロウが飛び退く。

 ダメージが入ったみたいだ。

 それも結構。


「ふむふむ。そうですか。わかりました。それでは、そうですね。私が代わりに村に行ってきてあげましょう。クロウは、ユリと一緒にノナカたちに加勢してください。時は一刻を争います。あと、ここのエレメント族の人にも協力要請をしましょう。」

「お、なんだなんだ? なんか暇つぶしか?」

「西の麓で魔王軍が町を壊滅させているそうです。お手伝い願えますか?」

「どっちだ? 魔王軍側か? 人間側か?」

「どちらかといえば、人間側?」

「わかった、じゃあ、すぐ行こう。人間は貧弱だからな。早く行ってやらないと、死んでるぞ?」


 予想外の展開。

 クロウがまた参戦してくれるらしいです。

 というか、エレメント族達はまだ山を降りていなかった。

 ここで、もし追撃があったら食い止めるつもりだったのかな?


 あと、なぜかエレメント族が増えていた。

 主に、氷雪系のエレメント族が。

 雪山だし。

 吹雪くし。


 そうして私は、マスターからの指示をホーリーエレメントのモンドに引き継いで、ダークエレメントのクロウとともに、マスターのところに戻ることにした。

 あと、クロウの新しい友達のアイスエレメントのアイズと、スノーエレメントのスノーマンも仲間になった、というかついてきた。 


「戦力になるぜ!」


 とか、サムズアップして、歯を光らせて言っている。

 ちなみにアイズの歯は、氷なので透明だった。

 スノーマンとは違って白くはなかった。

 太陽を反射して眩しく光っているけどね。



<異世界召喚後38日目午後>

 場所:サッシー王国レーベン辺境区雪原

 視点:野中のなか


 当たり前のことなんだけど、町までは、徒歩だった。

 しかも、雪の中を。


 レインは空を飛んでいたり、僕の肩に乗っていたりするので、雪があっても全く関係ない。

 ロッコとラストはちびっ子なので進むのは大変そうだ。

 ちびっ子なので、楽しそうだけどね。

 ラストは、油断していると雪だるまとか作りそうな勢い。


 実際に、雪が邪魔だとか言い出して、雪玉を作りながら進んでたし。

 途中の坂道でリリースして、結果として大きな雪玉にしてしまったのは秘密だ。

 なお、雪がなくなって、歩きやすかったのは、よかったけれども。

 危険だからね。


 そんなアホなことをしつつ、日が暮れる前にはと頑張って進んでいると、町のような外観の風景が見えてきた。

 こちらは、林の中の道から、ちょうど平原に出るところ。

 ここが、村長に教わった偵察に適した場所で、ここから先が、敵に見つかるゾーン。

 とりあえず、林の中から、町の様子を伺う。


「マスター、町の様子、とか余裕ブッこいている場合じゃないのですよ!」


 レインが慌てた様子で指をさしている。

 何があったというのだ?


 そして、その指先に視線を向けると、町の西側で戦闘が発生していた。

 夕方、日が西の山に隠れて、暗くなりかけている黄昏時に。

 魔王軍と戦う、かなり少数の人間。

 あれ、全滅寸前なんじゃ?


「町は後回しだ。助けに行こう。」

「すでに、あの人たちは囲まれているのです。作戦が必要なのですよ?」

「そうか。そうだな。玉ねぎ作戦で行こう。」

「どゆことですか?」


 作戦概要を説明した。

 林の中を、魔王軍に見つからないように西に進んで、主戦場に接近する。

 主戦場から離れたところにいる魔族から優先してBANして、消していく。

 気がついた時には、魔族がいなくなっているという凄技作戦。


「ロッコ。敵勢力は分かるか?」

「ん。大きな悪魔が2体。魔族が数百人。あとは、大きなイノシシとか白い虎の魔獣がたくさん。合計して数百頭規模。」

「じゃあ、魔族を優先してBANする。そうすれば、戦線は瓦解する。」

「ん。了解。」

「マスターは何をするんだ?」

「できることはない。見つかって酷い目に遭わされないように隠れているよ。」

「マスターも働くのです。お札を分けてもいいのですよ?」

「いや、僕、精霊じゃないから使えないし。冗談はいいから、作戦開始だ。」

「おー! なのです!」


 そういうと、3人は、林の結構奥を西に進んでいった。

 僕は、この安全な距離を保っていなければいけない。

 なぜなら、攻撃力もなければ守備力もない。

 いわゆる一般人枠。


 魔物にも魔族にも一瞬で殺されることうけあい。



 この作戦には計算があった。

 おそらく、町の中にはほとんど魔族や悪魔はいないだろう。

 いま、作戦行動中だからだ。


 なら、交戦中の人間達と協力すれば、少ない労力で、魔王軍を消耗させることができるだろう。

 単独交戦より、絶対に楽ができる。

 遠征中なのだから、こちらの消耗をできるだけ抑えたいのだ。


 そんな小狡いことを考えているうちに、一番外周にいる魔族から、BAN祭りが始まった。

 ラストとロッコが、BANのお札で魔族を消滅させ、それを見た魔族達が、空に逃げる。

 逃げたところに、空中で待ち構えていたレインが、死角から接近して後頭部とか見えにくい部分を触ってBANの魔法の餌食にしていた。

 レイン達の乱入で、戦場は混乱を極めていた。


 魔王軍の主戦力はいつだって魔族だった。

 遠距離からの強力かつ多彩な攻撃魔法による攻撃。

 それを守る前衛の魔物や魔獣。

 ところが、後ろから攻められるのにはとても弱かった。


 前衛がどんなに頑張っていても、いつの間にか攻撃役の後衛がいなくなっていたら。

 これほど怖いことはない。

 だって、後衛が討伐されたってことは、退路を絶たれるということ。

 もう、そこに、生きて帰れるという希望はなくなる。


 前衛が人間なら、この時点で戦線はパニックになって崩壊していただろう。

 だか、流石は魔王軍。

 前衛はそんな難しいことを考えることすらない、イノシシ型魔物と、トラ型の魔獣。

 いつの間にか後衛がすっからかんになったところで自分たちには関係ない。


 なんなら、たまに誤射で自分たちを攻撃してくる魔族がいない方がありがたかったりもする。

 別に後衛なんていらねーし。

 それくらいの頭だったのだろう。


 日が沈んで、空に星が見え始めた頃、魔族は全てBANされていた。

 まだ、悪魔と魔物が残っている。

 だが、精霊3人で、魔王軍の戦力の半分は削った。

 頭のいい指揮官なら、ここが引き時だ。


 ここで引かないと、戦場と心中することになるから。

 引かない選択肢はないはず。


 でも、相手指揮官は悪魔。

 本当の意味で悪魔。


 なぜなら、悪魔は転移魔法が使える。

 転移魔法でギリギリでも逃げられる。

 だから、自分以外の全ての配下が死んだとしても、まだ、戦場にいられる。

 殺されそうなピンチになって初めて、転移魔法で逃げればいいだけだからだ。


 つまりそう。

 魔族も魔物も使い捨てなんだよな。

 もったいない。

 おかげで、こちらとしては、大量の魂を元の循環に戻すことができる訳なんだけど。



 うしろから、背中を結構大きな手でツンツンされた。

 いや、今、忙しいから。

 その手をどかす。

 結構毛深い手だった。


 そして、今度はツンツンではなくて、そのまま手を背中に乗せられた。

 重い。

 結構な重さがある。

 これは、ちょっときつい。


 そこで、初めて後ろを振り向くと、大きな狼の顔がドアップになっていた。

 死んだと思った。

 食い殺されると思った。

 なぜなら、その足で地面にうつ伏せにされて押し付けられたから。


 動けなかった。


 そして、その大きなオオカミが、何かを攻撃した。

 そう、その何かは白くて大きな虎。

 ホワイトタイガーとでもいえばいいだろうか。

 もう少しで本当に食い殺されるところだった。


 助けてくれたのは、ユリ。

 背中に手を乗っけて、「伏せろ」というゼスチャーをしてきたユリ。

 僕には伝わってこなかった。

 無理だよ。それ。


 ユリの他にも、途中まで一緒だったダークエレメントのクロウと、あと、新顔のエレメント族が二人。

 仲間が増えていた。

 油断して、完全に後ろを取られていた。

 まあ、ハイドウルフだし、当たり前だけど気配はしないよね。


 ダークエレメントも気配ないしね。


「お、生きてるか? お使いなら、モンドに任せたぜ? 今は、ほら、物理攻撃のできる戦力が必要だろ? 俺は無理でも、こいつらは結構重い攻撃ができるぜ?」

「初めまして。スノーエレメントのスノーマンだ。雪だるまじゃないぜ?」


 明らかに雪だるまだった。

 おい、この異彩を放つエレメント族は大丈夫なんだろうな?


「ええと、いいかしら。私はアイズ。アイスエレメントのアイズ。」


 こっちは美女だった。

 やはり全裸だった。

 でも、透明で、光っていない分、美術作品みたいでエロさが伝わってこない。

 精神的負担が少なくていい感じだった。


 服は、着てくれないよね。

 エレメント族的には全く意味ないしね。


「よろしく。ユリのマスターのノナカだ。今、魔王軍と戦っている。」

「見ていただけにしか見えないのだけれども。」

「……そうとも言う。」


 無駄話はそこまで。


「じゃあ、攻め込むか。あのイノシシ達を狩り取ろう。」

「いいですけど、もう、始まっていますよ?」

「なんだと?」


 遠目に見ても、何か、一方的な殺戮が行われているのが確認できる。

 銀色に光る小さな何かが飛び回り、イノシシとトラの4本の足を根本から切断していた。

 もちろん、そうなってしまうと、イノシシだろうがトラだろうが既に戦力外だ。

 なんなら、もう、肉の塊としか見えない。


 動けなくなった魔物達の首にトドメを刺して回るラスト。

 そして、死亡確認を兼ねて、空間魔法でその肉を収納していくレイン。

 なお、生きているうちは空間魔法では収納できないので、こういう使い方もできる。

 命をなんだと思っているんだとも思うが、あれが僕たちの「今日のごはん」なのだからそうも言っていられない。


 程なくして、魔王軍の戦力は、悪魔2体のみとなっていた。



 出遅れ感はあるが、ユリ達と一緒に現場に向かった。


「おせ〜ぞ!!! マスター!」


 銀色の何かが飛ぶように接近しながら、罵声を浴びせてきた。

 そして、足元から服の内側に入り込むと、鎖帷子に戻った。


 冷たいんですけど。


「あ、やっぱり外れたままにはならないのね?」

「当たり前だ! そういう約束だからな。ほら、あとはボス2人だけだぜ?」


 ちょっと、悪魔に同情しそうなくらいのワンサイドゲームだった。

 悪魔側に、工夫とかそう言うの、今回はなかったしね。

 と、今、最初からいた人間と交戦中の悪魔を見てびっくりする。


「お、お前! 生きていたのか! フリドラ!!!」

「なんだよ!!! お前! しつこいんだよ!!! カリマサ! こいつだよ! こいつらに半殺しにされたんだよ! 危険な集団なんだよ! テロリストなんだよこいつら!!!」

「落ち着くんだフリドラ。たったこの程度の人数で、悪魔に対して何ができる。それにフリドラは対物理攻撃では無敵。対魔法攻撃でもだ。」

「だから、殺されかかっていただろ? 対策されてるんだよ。一旦引くべきだ。」


 慌てるフリドラ。

 そして、フリドラの相手をしている4人には、見覚えがあった。

 懐かしいと言うか、ここで会うはずはないと言うか。


 フリドラの攻撃を大きな盾で受けたり受け流したりしてなんとかしているのが、江藤さん。

 そして、江藤さんの作ったスキに、大きな両手剣で悪魔を攻撃をするのが、阿部さん。

 回復役らしい桜井さん。


 そして、助けた相手パーティーの中心には親友の猿渡がいた。


「よ、よう。生きていたのか?」

「お前こそ、というか、お前らなぜここに?」

「それはこっちのセリフだ。」


 2年7組のクラスメイトとの再会は、予想外のところから発生したのだった。

ブックマークと評価ポイントありがとうございました。

今日も自由気ままに頑張らせていただいています。

毎日1話分は投稿しようと言うのだけが、しばりです。

それ以外は自由です。


本文の話は、微妙なところで終わりました。

だって、タイトルが「再会」だから。

ユリとの再会、エレメント族との再会。

敵であるフリドラとの再会。

そして、クラスメイトとの再会。

それぞれがそれぞれに、いろいろな感情があって、本来ならそのドラマだけで色々書けそうなものですが。

それを書く機会があるかどうかは、分かりません。

今のところは、プロット上には載っていません。

それでは、筆者自身がプロット上から消されていなければ、明日も12時すぎに。


訂正履歴

 始めて石鹸 → 初めて石鹸

 身を呈し → 身を挺し

 お湯に使って → お湯に浸かって

 ※ 以上3件誤字報告感謝いたします。

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