第35話 空からの
投稿が1時間ほどずれてしまい申し訳ございませんでした。
お詫び申し上げます。
幕間の章、最後の話です。
猿渡と悪魔との戦いがどうなっていくのか。
そう言うお話です。
そう言うお話ですが、本題はそこじゃないんです。
それでは、どうぞ。
<異世界召喚後38日目午前中>
場所:サッシー王国ベーレン辺境区
視点:カリマサ
先日のことは、残念でした。
悪魔の隊長を3人も派遣したのに、コソナ灯台を手に入れられませんでした。
灯台を守る、コソナ砦を陥落させることには成功しました。
ですから、後から占拠しに行けば簡単に手に入りそうなところまで、作戦は進んでいます。
昨日、ガーター領に攻め込んだムラモスが、反撃にあってグレイボーアを9割失った段階で、引くべきでした。
カメ鶴が頑張って低く飛ぶことで偵察したところでは、戦いの結果は辛勝であったと。
そこでわたしは、彼のために、魔族を追加派遣しました。
ところが、そこまでしたにもかかわらずコソナ灯台まで、手が届かなかったのです。
ウーバン村も陥落させ、コソナ砦も陥落させ。
なぜ、コソナ灯台だけ手に入らなかったのでしょうか。
正直なところ、理解に苦しみます。
結局、この戦いの最後の方の具体的な情報は入ってきませんでした。
一番最後のカメ鶴の情報は、カメ鶴自体が攻撃を受けていると言う理解不能な報告。
上空7000メートルですよ?
誰がそんな上空まで攻撃できると言うのでしょう。
バカも休み休み言えと思いましたが、考えを改めました。
なぜなら、それを最後にカメ鶴が一羽も帰ってこないからです。
つまり、話は荒唐無稽だとしても、真実だったと言うこと。
わたしたち悪魔の存在自体が荒唐無稽なのを棚に上げて、勝手に相手の戦力を見誤っていました。
そこまで考えるとやはり、あの段階で作戦を中止すべきだったのですね。
部下の作戦が失敗に終わったとフリドラは感じたのでしょう。
偵察にネトラレ山までちょっと行ってみたら、山頂で敵軍と交戦したというのです。
訳がわかりません。
なぜ、氷雪属性のフリドラが完全に無敵なはずのネトラレ山の山頂で、攻撃されるんですか?
敵は、かなりの飛行戦力を持っていると考えるのが妥当なようですね。
おそらく、カメ鶴と似たような戦力を保持しているのでしょう。
なぜなら、カメ鶴自体もやられてしまいましたし、フリドラが山頂で攻撃されたのですから。
これはいけません。
相手の戦力を早急に洗い出さなければいけません。
このままでは、数では勝っていても、いずれ、その数的優位は失われてしまうことでしょう。
今のうちにできる対策を講じる必要があります。
私の目の前に、ネトラレ山で戦っているはずのフリドラが緊急転移してきました。
一眼見て分かるほどの瀕死状態でした。
言葉に詰まりました。ありえません。
雪山でなら、魔王軍でも無敵と言われた男です。
わたしは、間髪入れず、回復魔法を唱えました。
とりあえず、減り続けていたHPは一定量回復して、一命は取り留めたようです。
一瞬、視界の端で何かが光ったような気がしました。
しかし、探そうとしたときには、もう、何もありませんでした。
わたしは部下に対して、フリドラを回復させることと、何があったのか聞き出して報告するように指示を出しました。
唖然としていた部下達も、指示を聞いて、自分を取り戻すと、テキパキと仕事をしはじめます。
いい部下達です。
これでも、有能な部下達なんですよ?
わたしは、こうして大魔王様の一つ目のオーダーには、適切に応えることができませんでした。
大魔王様のもう一つのオーダーは、女神教の総本山を制圧すること。
ただし、必ずコソナ灯台を占領してからにするようにと厳命されていました。
おそらく、その順番には、魔法効果的な意味合いで、何かあるのでしょう。
私ほどの大悪魔でも、本当のところは窺い知ることができません。
しかし、すでにコソナ灯台は制圧したも同義。
ならば、今から総本山を攻め滅ぼしましょう。
皆の敵討ちです。
恨みつらみというやつです。
部下を集めて、女神教の総本山に攻め込む準備に入りました。
こちらには、大した守備隊もいないので、すぐに制圧が完了することでしょう。
今度こそ、吉報を待っていますよ。
<異世界召喚後38日目正午>
場所:サッシー王国ベーレン辺境区女神教総本山
視点:猿渡
魔王軍に対抗するために、総本山前に防衛線を張って3日が過ぎた。
3日間、魔王軍のこちらに対する動きは全くなかった。
そのため警戒を緩めて、教団の総本山内部に引っ込むこととなった。
いくらなんでも、ずっと警戒し続けていては、心も体もまいってしまうからだ。
それが、あだとなった。
正午。
突如として動き始める魔王軍。
脇目も振らず、総本山に突撃してきた。
先頭は、大将の悪魔。
どこから集めたのかわからないくらいの軍勢。
具体的には、魔族だけでも一千人規模。
魔獣も一千頭規模。
町から出てきたその戦力は、防衛線を守っていた、300人の神官兵たちの、視界を埋め尽くしていた。
まさに悪夢。
そして、物量による一瞬での蹂躙だった。
僕らは、女神とともに、総本山の一番奥の部屋に入っていた。
そこに、神官兵の伝令が、戦線の状況を報告に来る。
魔王軍の始動から、防衛線の壊滅までは、ほんの少しの時間しかかからなかった。
そして、伝令とかしている状況でもなくなっていた。
教団の総本山が蹂躙されているのに、女神は動かない。
普段なら、皮肉のひとつも言いながら、すぐに対応するのに。
何かが噛み合っていない感じがした。
何か、重要なことを忘れているような気がした。
「このままでは、殺されるだけだ。打って出るぞ!」
「ダメです。もう少し堪えてください。」
「なにか奥の手があるのか、女神的な?」
「そんなものはありません。今からあなた方に付与魔法をかけてあげます。しばらくは、無敵になることでしょう。それで、魔獣や魔族を蹂躙してくださいね?」
そういうと、女神の足元を中心にした、禍々しい魔法陣が床に広がり、僕たちをその範囲内に飲み込んでいった。
ステータスを確認すると、「付与:熱属性」「守備力アップ(中)」「攻撃力アップ(大)」と出ていた。
この魔法陣の効果なのだろう。
そのまま、目の前の細い通路を攻め込んでくる、魔族1体1体と交戦した。
魔族は、馬鹿の一つ覚えのように、全員が全員氷結属性で、氷結魔法を遠距離から放ってきた。
こちらは熱属性なので、その氷結魔法が目の前で溶けて水になって、こちらはずぶ濡れになる。
部屋には、何らかの魔法がかけられている様子で温かいから、まあ、風邪をひく、ということにはならなさそうだ。
でも、気分の良いものではない。
HP視点だけで言えば、相手の攻撃の効果が無効になっているので、こちらにダメージが入っていない。
これなら、少なくとも負けることだけはない。
阿部さんの熱属性にされた両手剣で攻撃すると、弱点属性なのか、魔族にダメージがよく通り、数撃で一人を倒すことができていた。
狭い通路なので、一人ずつしか交戦できないし、後ろから攻撃魔法を飛ばすこともできない。
完全に1対1の戦い。
ならば、体力さえあれば、勝ち目はあった。
魔族が死ぬと、黒い粒子になって消える。
それが、そのまま再び魔族の魂となるのか、それとも人間の魂となるのかはわからない。
ただ、死んだ時に死体が残らないので、通路を塞いでしまわなかったことが、ラッキーだった。
それほど、たくさんの魔族を、阿部さんは攻撃して、かつ討伐していた。
全く相手の攻撃を受けないというわけでもなく、通常の物理攻撃とかは、普通にダメージを受けてしまう。
そこで、阿部さんの回復が必要になってくる。
阿部さんが回復に専念している間は、江藤さんがその大きな盾で敵を抑え、攻撃や進軍を防いでいた。
このような役割分担をすることで、教団の奥深くではあったものの、すでに魔族300人ほどを殺していた。
相手の魔族はおおよそ1000人規模。
ちょうど3割を削減したところだ。
3割失ったのだから、帰って欲しいところなのだが、なかなか相手も踏ん張る。
なにより、300人討伐したところで、数的には相手の方がが圧倒的に有利なのは変わっていない。
女神が言うには、今いるところが教団施設の最奥。
ここさえ死守できれば、あとはどうにでもなると言うのが彼女の言い分だった。
さっきまでいた、女神のいる部屋には、そんな気配は感じられなかった。
どういう意味なのか、考えるだけ無駄なのかもしれない。
でも、気になるのだ。
阿部さんがちょっと押していて、狭い通路から広い部屋に飛び出しそうになった。
引き込もうとする魔族達。
これは、トラップだったようだ。
でも、阿部さんは引っ掛からなかった。
この通路を使って、地道に魔族を倒していくしかない。
そう割り切って、地味な戦いが始まった。
通路を使った1対1戦法。
とにかく、攻撃力のあり、防御属性の付与されている僕らが何とか最終、本当に最終防衛ラインを死守していた。
前にも出られなければ、後ろにも戻れない。
まさに、膠着状態。
このまま、地味に戦っていれば、2〜3日後には、相手を全滅させられるはず。
でもそれでは、時間がかかりすぎる。
そう、時間がかかりすぎるのだ。
痺れを切らした阿部さんが、狭い通路から飛び出して、攻撃に打って出た。
属性付与のおかげで、大したダメージも受けることはなかったし、こちらの攻撃は、大ダメージと化していた。
でも、愚策だった。
なぜなら、それは、ここ限定だから。
阿部さんが無双できているのは、あくまで女神の付与があったから。
付与を使うことなく、勢いだけで戦ったら、命が軽く飛ぶ。
興奮していた阿部さんには、そうなっていることを理解できていない。
ジリジリと相手からHPを削られて、最終的には物理で大ダメージを受ける。
防御付与が切れているわけではない。
相手の攻撃が予想以上に強いからだ。
江藤さんが慌てて壁となり、大盾を上手に使って相手の攻撃をいなしている。
死にたくない阿部さんは、何らかの大技を出して、とりあえず、自分の周りにいた魔物や魔族を駆逐した。
もうすぐ死ぬような瀕死の相手は、簡単に死んでいった。
やはりと言うか何と言うか、そうそう、やすやすとは、死ぬようなレベルや性質じゃない相手も多い。
気をつけなければと、魔族を切り裂きながら進んでいると。
魔族達が施設から逃げ出し始めた。
もしくは、別のターゲットに、攻撃対象を変化させた。
この機会に、僕たちは女神を残して施設から飛び出して相手をしようとした。
これが、僕たちをおびきだすための罠だったのだ。
集中攻撃を受け、瀕死になる僕たち。
女神の魔法陣から離れてしまったので、付与魔法が消えてしまった。
ただの勇者に成り下がった。
ニヤリと悪魔の顔が歪む。
そして、僕向かって、暗黒魔法を放とうとした瞬間。
その悪魔は、縛られていた。
訳がわからない。
その上猿轡もかまされていた。
本当に訳がわからない。
そうして、あっさりと、敵の大将と思われる悪魔は行動不能に陥っていた。
だれがこれを?
不思議に思って悪魔を見ると、そこには可愛らしい精霊が2人。
ロープを持って、悪魔を拘束していた。
そして、頭上から声がした。
「お前達のお頭は、このレインが捕縛したのです! 殺されたくなければ投降するのです! 今なら、許してやってもいいのですよ?」
レインとか言う人形のような小さな精霊は、そう、空の上から宣言していた。
ざわつく魔王軍。
しかし、人望がないのかどう言う訳なのか、投降する魔族も魔獣もいなかった。
そして、僕たちに対する苛烈な攻撃が再開される。
多勢に無勢で殺されそうになった時。
聞こえてきたのはさっきの精霊の声。
「BAN! BAN! BAN! 魔族はすぐに居なくなるのです!」
「ん。BAN!」
「そうだぞ! BAN! いいから消えるんだ! BAN!」
末恐ろしい数の魔族に囲まれながら、たった三人の精霊が魔族を消し去っていた。
僕たちには、彼女達が天使に見えた。
神様が、僕たちによこした救いの手。
そして、その手は、再び空からやってきた。
中途半端なところで終わっていますが、仕様です。
次からの新しい章は、この前後からのお話になります。
明日こそ、今日のような事故が起きなければ、12時すぎに。
訂正履歴
結構 → 結局
でていた → 出ていた
魔法がかけ枯れている様子で暖かい → 魔法がかけられている様子で温かい
それは、そのまま → それが、そのまま
大したダメージを → 大したダメージも
あいては、簡単に死んでいた。 → 相手は、簡単に死んでいった。
声質じゃない → 性質じゃない
気をつけ泣けえればと、 → 気をつけなければと、
この期に、 → この機会に