第34話 大魔王のオーダー
寒い冬がやってきました。
雪は危険です。
ちょっと埋まるだけで簡単に凍死します。
雪山で雪洞を作って寝ていると、朝には天井が若干下がっていて、死にそうに感じます。
計算が必要ですね。
今回は、追い詰められる猿渡と、追い詰める魔王軍の2本立てです。
それではどうぞ。
<異世界召喚後35日目午後>
場所:サッシー王国ベーレン辺境区グレイトフィール町
視点:猿渡
「どうすれば、どうすればいいんだ?」
「いや、喋ってないでどうにかしろよ!」
「どうにかって言ってもうわっ!」
正直なところ、お手上げだった。
なにしろ、相手は航空戦力。
江藤さんが大盾で攻撃を防いで、阿部さんが剣で攻撃する。
そのスタイルの僕らのパーティーは、航空戦力に対して無力だった。
厳密には、江藤さんの属性耐性魔法で防御した阿部さんが、低空飛行していたブリザードバードやダークホークをやっつけてはいる。
そう言う意味では、討伐数なら今回、レーベン辺境区側戦力でトップだ。
なにしろ、教会の戦力である神官達の攻撃は、効いていない。
魔法も届いていない。
討伐数は、ブリザードバード10羽に、ダークホーク11羽。
ダークホークは、直接攻撃をしてくる一瞬だけ、地上に降りてくる。
阿部さんがそこを狙って狩り取ることに成功した。
それもしばらく続けると、鳥頭なりに学習されてしまった。
やつら、阿部さんの近くには降りて来なくなった。
逆に言えば、僕らの周りは、物理攻撃も攻撃魔法も来ない安全地帯と化していた。
いや、カメ鶴の超高高度からの空爆は、遠慮なく降り注ぐ。
当たったら終わりだけど、上さえ注意していれば、十分に避けられる。
建物の被害は防げないけれども。
そう、僕らは戦えていた。
そして、経験値を稼げていた。
なんなら、レベルが上がっていた。
阿部さんの活躍で、僕のレベルも6まで上がっていた。
でも、ステータスを確認している余裕がないので、覚えた基礎魔法がわからない。
攻撃が一段落したら、みんなでステータスを確認して、戦術を組み替えよう。
もしかすると、ひっくり返すことができるかもしれないから。
それほど、戦いは苛烈で、午前中からぶっ通しで敗走し続けている僕らの体力は限界だった。
教会の戦力も、もちろん疲弊していて、何なら、300いた神官戦力は、120にまで減少していた。
本来なら公爵領の戦力が助けに来てくれる手はずなのだが、やはりこない。
情報が伝わっていなかったのが大きい。
でも、兵士を3人も公爵領に戻している。
途中で殺されてさえいなければ、ある程度の状況は伝わることだろう。
とはいうものの、じゃあ、本当に助けに来てくれるのかと言うと疑問だ。
公爵がどれほどの人物かによるし、公爵領の戦力次第とも言える。
つまり、助けは来ないものと考えるべきだった。
グレイトフィールの町まで撤退してきていた。
町の人たちは、公爵領に避難済みだった。
今日の今日で避難ができたのは、何度か攻め込まれていたことが大きい。
町の人たちに危機感があった。
その、ガラガラの街に逃げ込んできた。
魔王軍は、町まで進軍してきて、占領するつもりらしい。
僕らは体制を立て直すべく、時間を稼ぎたかった。
そう言う意味では、町の建物が目隠しになって、ある程度時間を稼ぐことができていた。
すぐさまステータス魔法で、自分の習得した基礎魔法を確認した。
Lv5で「計算」、Lv6で「運動」。
完全に僕は、基礎魔法に舐められていた。
なにこれ?
計算魔法って何?
運動魔法って何?
基礎魔法は、その魔法が一体何なのかについて研究するところからがスタートになる。
それが原因で、研究者でも実用的に使いこなせるのは1つか2つになるというのだから。
でも、逆に言えば、研究さえ成功すれば、すべての基礎魔法を使いこなすことだって夢じゃない。
使いこなせているかどうかは甚だ疑問だが、火魔法と生物魔法は、とりあえず使えている。
使いこなしているかどうか判別できるのは、その魔法の奥深くに潜んだ能力を引き出せているか知ることができてからだ。
つまり、研究を突き詰めなければ、自分が使いこなしているかどうかすらわからない。
とりあえず、安易に考えてみた。
計算魔法は、単純に考えれば計算してくれる魔法だ。
試してみた。
地面に「1+1=」と書いてみた。
ステータス魔法で覚えた呪文で、「計算魔法」を発動させると、地面に「2」と表示された。
使用されたMPは、ほとんどなかった。
単純な計算なら問題ない。
でも、これくらいの計算なら、自分でもできる。
この異世界の文明レベルがどのくらいなのか。
微分とか積分とか、存在しているのか。
ああなるほどと、そこまで疑問に思って理解できた。
そういうことだ。
今の文明レベルでは計算できない内容でも、魔法を使えば答えだけは出せると。
そう言う類の魔法なのだろう。
もちろん、今のところ戦闘で役に立ちそうにはない。
役立ちそうな利用法が思いつかない。
次に「運動魔法」だ。
もっとわかりにくい。
わからないのでとりあえず呪文を唱えてみたけれど、何も起こらなかった。
さっぱりだ。
でも、ちょっと待て。
運動魔法っていうんだから、単純に考えれば運動させる魔法なんじゃないだろうか。
そこで手のひらの上に小石を乗せて、その小石に向かって運動魔法を弱く使ってみた。
小石は手のひらから前方へ飛び出して地面に落ち、3メートルくらい先の地面まで転がっていた。
なるほど、とりあえずの使い方はわかった。
これは、物体を動かす魔法。
超能力でいうところの、「サイコキネシス」とか「念力」に当たるのではないだろうか。
なんか、本当に魔法使いっぽいなこれ。
ま、研究者なんだけどね。
調子に乗って、小石に、できる限りの魔力と速度のイメージをのせて、呪文を唱えた。
小石が手のひらから、一瞬で消えて、手のひらには裂傷が残った。
なお、飛んでいった小石はかなり遠くの建物の窓に当たり、木でできた窓が粉砕されていた。
これ、攻撃魔法なんじゃないだろうか。
ん?
これは、これは使える。
気がついてしまった。
今、一番欲しい武器、スリングショット、僕の地元じゃパチンコっていうけれど、それのかわりになるよね?
なんなら、威力がおかしいよね。
試しに、空中結構高くを旋回しているダークホークに狙いを定めて、小石を放った。
あっさり命中する小石。
撃ち落とされるダークホーク。
落ちた場所で確認すると、討伐できていた。
なにこのチート。
もっとも、この攻撃方法には大きな欠点がある。
集中力が必要なので、荒れた戦闘中には使えない。
激しく動き回っている相手には、当てられない。
つまり、今みたいにこそこそ隠れて、スナイパーの如くちまちま撃ち落としていけばいい。
小石の軌跡さえ見られなければ、どこから攻撃しているのかさえわからない。
これはいける。
MPさえあれば、対空中戦、なんとかなりそうだ。
そう思って、ひたすら隠れては瓦礫を打ち込むというルーチンワークを実施。
気がついた時には、ダークホークもブリザードバードもいなくなっていた。
圧勝。
ではなかった。
結局のところ、魔族や悪魔に対抗する手段にはなり得ず、その数に押されて、町はじわりじわりと占領され、最終的には敵味方を巻き込むカメ鶴の空爆により、教団戦力は瓦解した。
そこまでは、区長に化けた女神が、教団の神官達に回復魔法をかけたり、チートなバフをかけたりしていた。
もっとも、女神なので、自分自身で攻撃することはできない。
女神属性攻撃だとバレれば、すぐ敵に捕縛されてしまうからだ。
そして、付与魔法にしても、女神属性がつかないように注意を払っていたようだ。
つまり、そこそこ戦力にはなっても、教団勢力は所詮人間。
しかも、本来戦闘向きではない神官。
中には神官戦士もいたらしいが、大差はなかった。
ちょっとは女神のバフで善戦するものの、結局、数で圧倒されていた。
なにしろ、相手の悪魔はダークホークをほいほい生み出してくる。
異世界召喚かもしれない。
魔法陣の中から、定期的に発生しているのだから。
僕らは、そんな無限に発生するダークホークを発生するそばから討伐するという行為で、悪魔のヘイトを稼ぎすぎてしまった。
悪魔は、流石に僕の所業が許しがたかったらしく、召喚魔法をやめて、自ら攻撃に打って出た。
そうして、悪魔と魔族の激しい魔法攻撃により、町は瓦礫と化していった。
僕たちは、守るべき教団の総本山がある町の東側へ退避した。
事実上の敗北。
こうしてグレイトフィールの町は占領されてしまった。
町の南はるか遠くに、人間の兵士の並んでいるラインが見える。
あれはおそらく、防衛ラインだ。
ああ、来てはいたのかと気付かされた。
そう、あれは公爵領の兵士たち。
公爵領を守るため、町の南側に最終防衛ラインを引いて、魔王軍の南下に備えていた。
教団もそれは同じで。
町の西側に最終防衛ラインを引いていた。
魔王軍の西進に備えていた。
魔王軍は、殺した人間を町の中心に山積みにすると、転移魔法か何かを使ってそれを一瞬で消し去った。
命と魂が、大魔王に簒奪されていく瞬間だった。
女神が変身した区長が、忌々しいという顔でそれを睨みつけていた。
女神属性が邪魔をして、手が出せないのがいかにも歯痒そうだ。
しばらくすると、魔王軍の援軍が北から押し寄せてきた。
大量の大きすぎるイノシシの魔物を引き連れた、悪魔と魔族の軍勢。
今度は地上兵力か。
ならば、やっつけてやる。
そう意気込んで攻め込まれるタイミングを観察していたのだが。
いつになっても攻め込んでこない。
なぜ?
なんなら、南の公爵領の兵士たちの方へも攻めて行かない。
不思議。
そして、動きがあった。
いや、動き自体は相当前からあったのだろう。
でも、町の西側にいた僕たちにはわかりにくかった。
援軍の戦力は、そのまま、街から東へ、山に向かって突っ込んでいった。
雪山であることもお構いなしに。
もっとも、辺境区の北側も、かなり厳しい雪山だ。
そこから来たのなら、この程度の雪山は何のことはないのだろう。
そうして、魔王軍は街を占拠し、さらに東へ進んで……。
ん?
東だと?
そう。
ここから東へ進むと何がある?
ガーター領だ。
そして、親友である野中たちの飛ばされた、ウーバン鉱山がある。
まずいな。
狙われたか。
魔王軍の次の狙いは明らかにガーター領だったのか。
しかも、想定していないであろう、雪山越えだった。
早くなんとかしないと。
僕らは、教団施設を守るための防衛ライン死守を命じられていた。
<異世界召喚後35日目夕方>
場所:サッシー王国ベーレン辺境区ネトラレ山
視点:ムラモス
大魔王様からのオーダー。
俺は、その実行隊長その3だ。
実行隊長が3人、それぞれ違うルートから攻め込んで、現地で落ち合う計画だ。
オーダーは難しくない。
サッシー王国のガーター領にある、コソナ周辺を陥落させること。
陥落自体が目的ではなく、コソナ灯台を制圧すること。
意味がわからない。
そして、さらに訳がわからない情報があった。
コソナ灯台は、魔物の制圧下にあると。
それなら、俺たちが制圧に行く必要、ないんじゃないか?
なぜ、わざわざ暑い方に出張って行かないといけないだ?
大魔王様のお言葉は絶対。
疑問を挟むことは死を意味する。
でも、今回のオーダーは、ちと理解に苦しむ。
それは上司のフリドラも同じようで、正直どうしたものかと言っていた。
そのさらに上司のカリマサに至っては、もう、やる気がなかった。
「フリドラさん。そこそこでいいですよ、一応攻め込んだよって言う形が大事ですから。」
「いいのかカリマサ。また、大魔王様からきついお叱りを受けるぞ?」
「いいんです。ここのところ、あの地域に攻め込んだ魔族が大量に消息不明になっています。原因を突き止めるまでは、迂闊に手を出していい場所じゃありませんよ?」
「しかし、魔族が大量にいなくなるとはな? 何かの魔法装置が働いているとかじゃないのか?」
「いいえ、そう言う反応はありません。なにしろ、攻め込んだもの達がほとんど帰ってこないのですから。帰ってくるのはカメ鶴ばかりです。彼らは目が悪いので。」
「そうか。おい、ムラモス、そういうことだ。そこそこでいいぞ。消耗を避けた作戦で行くぞ?」
「わかりました。」
そういう会話があった。
正直納得いかない。
人間なんて貧弱な相手に、どうしてそこまで用心するのか理解に苦しむ。
ウーオ帝国なんて、すぐだったのにな。
ここに来て進軍のスピードが格段に落ちている。
大魔王様は何も言わないけれども、きっとご立腹のはずだ。
なら、俺が頑張るしかない。
使えない、やる気のない上司の代わりに。
あの、大魔王様に反抗的でやる気のない、女言葉の入っているのがカリマサ。
一応、俺の上司の上司だ。
肩書き的には、魔王軍の南南部戦区の司令官だったりする。
ちなみに、この南南部戦区と言うのは、魔王軍の戦区の中でも旧ウーオ帝国内のことをいう。
年季で言えばフリドラの方がはるか昔から大魔王様に仕えているらしい。
だから、上司と部下なのに、言葉遣いが逆だった。
ただ、カリマサが困らないように、フリドラも言うことは聞いている。
俺の上司二人は、そんな面倒で微妙な関係。
まあ、仲がいいので、そう言った面倒ごとがないことが救いだな。
このカリマサが、大魔王様からオーダーを受けたので、俺たちはそれなりに頑張った。
この間、俺だって、陸から一度攻めているんだが、魔族をだいぶやられて転移して帰ってきた。
他の隊長達も、いろいろ考えて、海から攻めたり、空から攻めたり、一周回って考えすぎた奴が地下から攻め込んでいたりした。
全て失敗に終わった。
なぜなら、敵は、何らかの方法で魔族を消し去っている。
俺たちは、強制転移魔法じゃないかと睨んでいた。
だから、司令官のカリマサは「大量消失」と言っている。
行方不明とも。
でも、俺は、違うと思う。
ほんとなら悪魔しか持つことのない転移宝玉を、何人かの悪魔に持たせて、もし、転移させられたら、遠慮なく使うように指示していた。
でも、誰一人として戻ってこなかった。
だから、あれは転移魔法なんかじゃない。
でも、人間とその仲間達が魔族を一瞬で消し去る方法としてそれ以上の方法があるとは思えない。
謎だった。
せいぜい、自分自身が消されないように気をつけることにした。
そうして今、魔族12名と魔獣グレイボーア1000頭を引き連れて、ネトラレ山を通過して、ガーター領に侵入した。
俺たちが、もうじき村に到着しようとした時、突然爆発音がした。
連続して3回。
この距離でバレるのか?
まあ、雪山から、これだけの軍勢が動いてくれば分かるか。
打ち上げられたのは、大砲か何かだった。
幸い、俺たちに当たることはなかった。
奇襲は、すでに失敗していた。
でも、これだけの戦力があるのだから、負ける道理がない。
一番手前の村、ウーバン村とかいったか。
そこの人口は500人程度だと聞いていた。
女子供まで全員でかかってきても、こちらが2倍以上の戦力だ。
そう思っていたが、話が違う。
最初は、遠くから見て村の入り口には、粗末な木でできた取ってつけたようなボロい門。
そして、その左右には、これも木でできたボロくて低い木の柵しかなかった。
ところが、村に接近すると同時に、門のあたりに10メートルぐらいの石壁が生えてきた。
何だありゃあ?
その上、門の前にも同じような石壁ができて、その上に犬っころが乗っていた。
訳がわからない。
とにかく、侵入を阻止しようとして村の住人がそういう魔法なり魔法道具なりを使ったんだろう。
そんなの関係なく、魔獣グレイボーアで突撃をかました。
今は反省している。
1時間程度で、魔獣グレイボーアたちは、300にまで数を減らしていた。
なぜ?
答えは難しくなかった。
あの犬っころ、魔法を使いやがる。
番犬にしては優秀すぎるだろう。
この番犬達は、まず、石壁というか丸い円筒状のステージを作ってその上に乗っていた。
この段階で、俺の配下の魔獣達は、番犬達に攻撃できない。
なぜなら、その壁を登る手段がないから。
そして、番犬達は、最小限の魔法で、着実に魔獣を屠っていった。
すごく小狡い。
まるで悪魔のようだ。
なるほど、番犬達は黒くて悪魔の犬と言ってもいいだろう。
いやいや、そんな犬、いない。
あいつらは、岩石魔法を操るウルフだ。
なら、空を飛べる俺たちの出番じゃねーか。
魔族も俺も、後衛とか言っていないで、あいつらに直接攻撃してやろうとして近づいたところで、異変が起きた。
空を飛んだ途端、超超遠距離から、魔法攻撃を受けた。
結構な大ダメージに、一度地に足をついてしまった。
なんだ?
なんなんだ?
どこから攻撃されたのかもわからない。
少なくとも、近くからじゃない。
そして、攻撃方法がわからない。
俺の左肩が、何かで焼き切られて貫通していた。
部下の魔族が、急いで回復魔法をかけている。
程なく見た目は元に戻った。
続いて爆発音がした。
追撃か?
でも、そうではなかった。
村が爆発した。
石壁が爆破された。
犬っころが乗っていたステージが爆砕された。
やられたと思っていたのに、この一瞬で勝敗の天秤が変わってしまった。
原因は、空爆。
これこそが南南部戦区司令官カリマサの奥の手。
カメ鶴による、超超高度からの、卵爆撃。
カメ鶴に攻撃できる相手などいない。
なぜなら、7000メートルの高さで飛んでいるから。
逆にそのことが命中精度を下げているのだが。
それでも十分だった。
圧勝だった。
納得いかないが。
本来なら、7割の戦力を失ったので、撤退すべきだが、そうはできない。
戦力を集めてさらに東へと進軍した。
そこで残念なことに気がついた。
野郎、味方まで爆撃しやがった。
失った戦力は9割だった。
そして、村の中を探したが、人間は一人も見つからなかった。
やられた!
もぬけの殻だった。
大魔王様に捧げるべき人間の命は、そこにはなかった。
俺たちがコソナ灯台の見えるあたりまで進軍した頃には、コソナは乱戦状態になっていた。
他の悪魔の隊長達が先についていたからだ。
海からやってきたのは、おそらくグレイボーアの親玉、ボアキンだろう。
頭がボーアになってしまっているのが特徴だからすぐにわかった。
直情型のアホだが、あいつはいいアホだ。
真面目に働く分には。
そして、コソナに着く前に、空爆を終えたカメ鶴が司令官にチクったおかげで、魔族が追加で投入されていた。
100人になっていた。
心強い。
お心に感謝したい。
これだけの魔族がいて、他の悪魔も魔族を引き連れてきていたので、コソナの戦場には300人くらいの魔族がいた。
それぞれが強力な攻撃魔法を放つことができる、優秀な戦力だ。
しかし、そいつらが警告してきた。
「ボス! あの銀色のスライムには注意してください!」
「なんでだ?」
言う側から、俺の膝下が切り裂かれた。
近くにいた魔族達が急いで回復魔法をかけてくれる。
なるほどな、危険だ。
「待っていろ、悪魔の恐ろしさ、思い知らせてくれる。」
そうして、俺はありったけの氷雪魔法をかけてやった。
液体状のスライムには、この氷結魔法が天敵だった。
しかし、この銀色のスライムには、一切効かなかった。
なぜ?
「ボス、あいつらには魔法攻撃が一切効きませんぜ?」
なんだと?
じゃあ、魔法主体の俺たちには、どうしようもないんじゃ?
「任せておけ。」
ボアキンが得意満面で、召喚陣を放って、グレイボーアを召喚し始めた。
そして、その召喚したグレイボーアに群がる銀色のスライム3体。
魔法陣からクレイボーアが出た途端に四肢を刈り取り、行動不能にしていた。
召喚され、足を刈り取られ、そして、魔法で消され、を繰り返していた。
まさかそんなこととは思わずに、ボアキンは、召喚を継続していた。
集中が必要な魔法なので、それは仕方のないことなのだが、あれではあんまりだ。
気づかせるために一発こついてやろうとつかづいて行き、一発殴ろうとして、足をかけられた。
ボアキンに1発入れることはできて、魔法陣の機能が停止する瞬間。
俺は態勢を崩して、その大魔法陣に触れてしまった。
これはあれだ。
召喚魔法の反対、逆召喚される流れだ。
反魔法を使って争ったが、ボアキンの魔法陣の魔力があまりにも強く、抵抗は無駄だった。
そして、俺は、グレイボーアの無限にいる異世界に飛ばされてしまった。
ブックマークありがとうございました。
さて、本文の話です。
今回は珍しく、魔王軍視点のお話が混ざっています。
中間管理職的な隊長の立場にいる悪魔の話です。
最後がカッコ悪いのですが。
こういう微妙なお話は、商業作品でもあまり見られないので書くのは面白いです。
ただ、需要はないんでしょうね。
なんで敵方の話を読まないといけないんだとか思われてしまうんですよね。
でも、相手がどういう経緯で、こんなことしているのかって考えるのは大好きですね。
思い違いしていることも多いので、結論がはっきりするとなお気持ちの良いものです。
はっきりさせないで描写しないで、わからない不安感を煽るのも良いですが。
さて、訳がわからなくなって無理! とか言い出さなければ、明日も12時すぎに。
訂正履歴
超超高度 → 超高高度
基礎魔法をすぐに確認 → 基礎魔法を確認
実用的にに使い → 実用的に使い
研究と突き詰め → 研究を突き詰め
東側に最終防衛 → 西側に最終防衛
動き自体ま → 動き自体は
粗末の木 → 粗末な木 ※以上7件誤字報告感謝いたします。