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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第6.5章 この冒険ハードモードにつき要注意
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第27話 「町」に入れないハードモード

RPGとかでは、やり込みとか縛りプレイとか色々な楽しみ方があるようです。

最近では、ゲーム自体に公式縛りプレイ要素が混入している場合もあります。

さて、本来そんなことしなくてもいいという選択肢があるならまだしも。

選択肢もなく、初めから縛りプレイありきのゲームだったならどうでしょう。

一般的に、そういうのはクソゲーとして、アワードに投稿されてしまいますよね。

今回は、前回に引き続き、そう言うお話ですが、え? ちょっと待ってください。

そういうお話ではないと? え? どういうことです?

とりあえず、それでは、どうぞ。

<異世界召喚後8日目昼過ぎ:王国ガーコ領/猿渡視点>


猿渡さるわたりくんは、どこに行こうとしているのかな?」


 江藤さんが単刀直入に聞いてきた。

 まさか、知らないとは思っていなかったので説明していなかった。


 そう、僕たちがどこに向かっているのかについて、このパーティー内で知っているのは、僕だけでした。

 何と言うことでしょう。

 そういえば、まだ、言っていなかったっけ?

 言っていたような気もするんだけど。


「野中のところ。助けに行く。流石にもう、死んでいるかもしれないけれども。ただ、7日間生き延びていたのだから、生きている可能性はかなり高い。なんなら、助けに行かなくてもいいかもしれないくらいに。」


 この世界に異世界召喚されたとき、この世界の女神様が役に立たないとして、3人のクラスメイトを、廃鉱山に空間転移させてしまった。

 魔物蔓延る危険な廃鉱山を抜け出すことができれば、役に立つ勇者と認めるという、女神様の慈悲の心という話になっている。

 しかし、魔法についてよくわかない僕たちには、どこまで本当のことなのかは知る由もない。

 なんなら、空間転移といいつつ、存在そのものを消す魔法である可能性すらある。


 城の王様とか魔法使いの人たちが何も言わなかったところを見ると、そうではなさそうだけれども。


「どこに飛ばされたのか、知ってるのか?」

「ああ、もちろん。ウーバン炭鉱って女神様は言っていたからな。調べた。」

「で、それはどこなんだ?」

「この国の北東外れにある辺境の地のさらに山奥だ。街道から外れているから、辿り着くのはかなり難しい。」

「そんなところに行こうとしていたのか?」

「辺境だから、身を隠すには最適だからね。仲間もいればなお心強い。」


 ぶっきらぼうな言いようの桜井さん。

 長身で細身の桜井さんは、そのスタイル通り、ちょっと神経質なところがある感じがする。

 レッテルかもしれないので、もう少し様子を見た方がいいかもしれないけれど。


 ちょうど昼なので、森の中の人気のないところで休憩することにした。


 地面に王宮からこっそりいただいてきた地図を広げる。


「昨日、僕が偵察してきた町が、地図の真ん中のここ、ガーコの町。そして、この地図の端っこのほうにあるウーバン村が、おそらく、ウーバン鉱山に一番近いところ。」

「おい、正気か? どんだけ歩いていくつもりだよ?」

「この距離を歩くの? 無理じゃないかな?」

「ダイエットには、なるな。」


 三者三様、いろいろな意見がおありのようで。


「これだけ離れれば、追手も来ないだろ? 逃げるなら大胆に逃げ切る必要がある。」

「そう言うもんか?」

「仕方ないよね、追われてるもんね?」

「ダイエットにはなる。体も鍛えられるし一石二鳥だな。」


 やや肉付きのいい感じの阿部さんは、剣道部のエースで体育会系だった。

 あ、でも、戦闘では役に立ちそうだね。

 戦わないで僕の魔法、じっと見ていたけど。


 昨日の肉の残りを食べて、少し休憩すると、また、森の中を歩き始めた。

 と言うのも、今日は、川沿いを歩くのをやめていた。

 なぜなら、昨日、聞いてしまったからだ。


 この世界での運搬は、馬車がメインだとたかを括っていたのに。

 何と、川下りの船も、物流に一役買っているらしい。

 文明的にはありがたいけれども、逃亡者としては厄介だった。

 つまり、川岸にそって歩いていると、船に乗っている人たちに見つかる可能性が出てくる。


 昨日1日、そんな船には出くわさなかったけれども、それは、川が厳しい渓谷で、物流向きじゃなかったからだ。

 上流まで上がってくると、簡単に岸から川に入ることができるくらいのなだらかな川になっている。

 これでは、隠密行動をする上で、目隠しにならない。

 そこで、川を遡るのを諦めた。


 あと、もう一つ。

 つまり、舟運ができるほどのいい感じの大きな川がこの川とは別に近くにあるということ。

 ずっと北上してきたのだけれども、いつかはその川を渡る必要が出てくるかもしれない。

 西側にあることを祈りたいが、東側なら、渡るのも一苦労だろう。


 その考察の結果として、人気のない森の中を抜けていくことになった。

 もちろん移動スピードは格段に落ちる。

 今日1日で10キロ進めるかどうかだろう。

 登山をしているのと変わらない。


 そして、問題はそれ以外にもあった。


 森の中にはそこそこ魔物が出る。

 これが厄介だった。

 もっとも、肉限定にはなるけれども、やっつけさえすれば食べ物に困らないのは二重の意味で美味しい。

 一応、「火」魔法を使えば、よっぽどのことがない限り倒すことはできる。


 時間はかかるけれども。


 あの神官の爺さんが、「研究、がんばれよ」と言っていた意味がわかってきた。

 僕の魔法はそもそも攻撃魔法じゃない。

 研究魔法だ。

 魔法力がどう変化するのかを、火に特化して研究できるのがこの「火」魔法。


 つまり、研究しさえすれば魔法力を適切に操って攻撃魔法としても使える。

 威力は弱いけれど。


 つまり、しっかりと使い方の研究さえすれば、一つの魔法をいろいろ変化させて使い回すことができる優れものなのだと言うことに気がついた。

 攻撃魔法として使うにしても、火を、どのように相手にぶつけるかを操作できる。

 1体に全威力を込めて攻撃するのか、複数に、少しずつダメージを与えて、威嚇するのか。

 変わった使い方では、相手の魔法を相殺するのにも使える。

 なんなら、松明の代わりにもできる。

 ライター代わりにも。


 つまり、それだけ使う機会が発生するだけの結構な頻度で、戦闘していたのだ。


 討伐後の大型動物や、毛皮がいい感じの動物については、桜井さんが、皮をなめしていた。

 この女、できる。


 その後、昼前に、昨日の街とは違う街を見つけて、入ろうとした。

 けれども、町の入り口で、兵士が手配書を見ながら検問をしていた。

 無理だった。

 昨日、ある程度予想はしていたけれども。


 警備が厳しくて、町には入れません。

 なんなら、女の子3人にも、何らかの職業についてもらって、戦力の底上げを図りたかったのだけれども。

 あと、結構魔物を討伐したから、冒険者ギルドで換金しておきたいのだけれども。

 町に入れないので、どちらも無理でした。



 そこで、考えたのが、小規模な村なら潜入可能なのではないだろうかと言うこと。

 でも、そういう小さな村は、王国の地図には載っていない。

 自分の勘で探すしかない。


 この日は、山の中腹に、いい感じの浅い洞窟があったので、そこを寝床にすることとした。

 例によって、洞窟の外に、目立たないように、即席のかまどを作成した。

 動物は、火を怖がると言う。

 ならば、入り口に火があれば、近づいて来ないのではないだろうか。


 魔物が、普通の動物基準の行動を取るかどうかはわからないけれども。


 日が暮れたので、集めてきたたきぎに火をつけた。

 「火」魔法で。


 ちなみに今気がついた。

 冒険者タグのステータス魔法で確認したところ、レベル2になっていた。

 おそらく、一緒にパーティーを組んでいるので、あの3人娘にも自動的に経験値が入ってレベルが上がっているはず。

 もしかすると、ちょっとは戦闘で使えるようになるかも。


 そう期待しない方がおかしいけれども。


 でも今は、そんな他人の事より、自分の事だった。

 「火」魔法の次は、「氷」か「水」だろ? とたかを括っていたのだけれど、違かった。

 「生物」とかいう訳のわからない魔法だった。

 どう言うことですか?


 使ってみたけど、というか、そもそも使い方がわからない。

 「火」魔法みたいに、使ったら火が出るならわかる。

 でも、「生物」魔法は、使ってももちろん「生物」は出ない。

 本当に、これは、何なのだろう。


 とんでもない魔法を手に入れてしまったのか、または、無駄魔法だったのか。

 本当の意味で「研究者」としての活動が必要になってきた。

 寝る前にいろいろと試してみたけれども、何の成果も、ありませんでした!



<異世界召喚後9日目午前中:王国内/猿渡視点>


 まずい。

 まずい。

 これはいけない。


 洞窟から這い出て、先に起きていた女子たちにとんでもないことを言われた。


「ここ、どこ?」

「だから、昨日の地図では、ガーコの町からあまり進んでいないから。ちょっと北に動いた程度だよ。」

「おかしい。そんなはずはない。だって、地図、ガーコの町の北側に、山なんてない。西か東の山の中で、迷っているんじゃないの? 見通しが効かないから、どこだかわからないし。」


 阿部さんが、厳しいつっこみを入れてきた。

 確かにその通り。

 日が暮れていたので気にしないようにしていたのだけれども、確かに地図と地形が違う。

 こんな大雑把な地図で、地形なんぞあてにできるものかと思っていたのは内緒だ。


「あと、この子。なんか朝起きたら近くにいた。肉を分けてあげたら、仲良くなった。」


 おい!

 僕たち逃亡者だから。

 仲良くなったとかないから!


 桜井さんが、串焼きの肉をまだ与えていた。

 喜んで食べる子ども。

 でも、ちょっと待て。

 なぜ、ネコミミ?

 ふざけているのか?


「あの子、猫耳があるんだけれども、こっちの世界にも秋葉系文化があるのかな?」

「いや、違うぞ? あれは本物だ。猫耳と尻尾のある種族らしいぞ? 鼻も耳もいいから、ここで肉を焼いていることがバレてしまってな。もらいにきたそうだ。」


 なんて、ずうずうしい子。

 人様が肉を焼いていたからって、たかりに来たのか。

 解せぬ。


「めちゃめちゃかわいいよ? 猿渡くんも、もふもふしたらいいよ?」


 ちょ、なにしてるの?

 その子、嫌がっているように見えるのだけれども。


「もふもふは、やめて欲しいの。お肉のお礼に、村に案内するよ? 迷子? なんでしょ? お兄ちゃんたち。」


 状況判断が的確だった。

 なんなら、迷子になったと認めていないのに、そうだと看破されてしまった。

 この子、侮れないな。

 できるぞ、こいつ。


「ちなみに、なんて名前の村なんだい?」

「ないよ? 周りの人間たちは、異種族の隠れ里って言っているの。」

「異種族、だと?」

「そうだよ? 私は、ニャー族とエルフのハーフなの。ミャオー王国は、異種族を人間として認めていないから、見つからないようにこっそり生活しているの。見つかると食べられちゃうんだってお母さんが言っていたよ?」

「僕たちはいいのか?」

「お兄ちゃんたち、王国の人じゃないでしょ?」


 こいつ、なぜわかったし?


「いいからついてきて。」


 有無を言わさぬ感じに、ついていってしまった。

 まあ、肉を与えたんだ。

 悪いようにはされないだろうと、たかをくくっていました。



「で、今日の獲物は4匹か。よしよし、大漁だな。」

「そうなの。ちょろかったの。肉も食べさせてもらったの。」

「なんだと?」

「肉を焼いて、食べさせてくれたの。」

「そうか、じゃあ、お礼をしないとな。」

「そうなの?」

「恩を仇で返すのは、よくないことだといわれているからな。今日の獲物はなしだ。」


 村に着くと、というか、集落といった方がいいのか。

 全部で20〜30人くらいの規模の集落だった。

 全員猫耳と尻尾があったけれども、毛皮の模様はまちまちだった。


 不穏な発言は、女の子の親御さんらしい人から発せられていた。

 この子、僕たちを食べるつもりだったのか?

 なんて姑息な手段を!


「客人。失礼した。娘が食事をご馳走になったそうで。礼を言わせていただきたい。」

「いえ、たまたま、余っていたので。なんなら、持ちきれないくらいたくさんあるのですが、食べますか?」

「な、なんだと? どういうことだ。このところ、不猟続きで、なかなか肉にありつけんと言うのに。なんなら、人間でも食べてしまうしかないかと、そこまで追い詰められていたのに。」


 あ、言わんでいいこと言い始めた。


「なら、人間に手を出す前で良かったです。あなたたちも狙われたら、食べられちゃいますよ? 肉を運べる人員は?」

「全員だ。」

「なら。」


 そう言うと、先程の洞窟に戻った。

 昨日魔法でやっつけた、魔物たちが山になっていた。


「これはすごい。」

「なぜこんなに?」


 猫耳族(勝手に命名)の人たちは、その数にびっくりしていた。

 びっくりはこっちだよ。

 だって、こいつら、一晩で僕らに襲いかかってきた魔物たちだから。

 どっかから運んできた訳じゃないから。


「野営をしていたら、散髪的に襲いかかってきたので返り討ちにした。それだけだ。」

「信じられん。こいつら、結構強いんだぞ?」

「我が魔法の前では、それほどでもなかっただけだ。」


 魔法で攻撃され、絶命している死体を確認して、僕の魔法の強さに気がついたらしい。

 でも、この魔法って初級魔法な上に、威力も小さいはず。

 すごいって思われるほどじゃないはずなんだけど。


「この焦げ跡、おぬし、ファイアーが使えるんだな?」

「ま、まあ、そんなところです。」

「教えてくれ! どうすればファイアーは使えるようになるんだ。もう寒いのは嫌なんだ!」


 どちらかといえば、「火」魔法を、生活魔法っぽく使った方がいいように感じるけれども。


「職業を、クラスを保持すればいいだけですよ? 魔法使いのクラスを。」

「なん、だと?」


 そこで、猫耳族たちは挫折した。

 人里に出ていくわけにいかない彼らにとって、職業安定署の神官の前に行くのは無理。

 なるほど、ファイアーはお蔵入りになりました。


「おまえ、この村で暮らさないか? 何、毎日、その火の魔法で、村の家を温めてくれればいいだけの簡単なお仕事だ。魔物が寄ってくるなら、なお歓迎だ。」


 あ、便利に使われそうになっている。

 まずいな。

 しかし、渡りに船。

 身を隠すには、これ以上の条件はない。


 ただ、いざと言うとき、食べられやしないかと言う心配が拭えないのが嫌だ。

 背に腹は変えられない。

 どのみち、防寒対策ができなければ、ウーバン村まで辿り着けないのだし。

 防寒対策をする間だけでもと、しばらく期間限定で厄介になることにした。

 女神様の言っていた「150日縛り」、忘れちゃダメだしな。


 ちなみに、女の子の名前は、サルフィー。

 ちょっと、僕の苗字にかぶっているのが気にいらない。

 サルフィーだけじゃなくて、村の人たちも、僕たちを歓迎してくれるようだ。

 でも、思ったよ。



 おまえら、防寒対策しろよって。



 なぜなら、なんでか、この寒い中、みんな薄着だから。

 ちらちら見えてはいけないものが見えていますから。

 子どもかと思って、おおめに見ていたけど、全員これかよ。

 せめて大人は、もっと服着ようよ。


 サルフィーの母曰く、


「服は、なかなかいい状態で手に入らないから。」


 どうやって入手しているのかについては、具体的に聞かない方が良さそうな感じだった。

一休さんとか、とんちとか大好きです。

言葉遊びとかも好きですね。

ですから、お笑いとかも好きですが、そう言う意味で勉強になる芸人さんが引退を発表されました。

残念でなりませんが、私としては、執筆活動は続けるとのことなので、ありがたい限りです。

惜しまれるような文章書きになりたいものですね。


それでは、食べられたりしていなければ、明日の12時すぎに。

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