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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第6章 教科書知識でチートな国家運営(笑)
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第78節 攻め込まれた嬢王陛下

今日はかなり長めです。

2話分くらいあります。

文字数的には、最長ですね。

この章最後のお話です。

それでは、どうぞ。

<異世界召喚後30日目午前中:ウーバン村/伊藤視点>


 今日は、この国の役人や兵士となる人たちを任命する儀式を行います。

 ごきげんよう。

 私は、伊藤 洋子です。

 異世界に飛ばされて、なりゆきでこの国の嬢王になりました。


 これまで色々ありましたが、とりあえず、ひと段落ついたので、国としての体裁を整えようということになりました。

 落ち着いて考えてみたら、お城っぽいものもできましたが、嬢王以外に、国の役人がいませんでした。

 そこで、昨日、異世界転移してきた仲間達と相談して、役人を決めました。

 当人たちにも了承されたので、今日は地味に式典です。


 精霊のレインさんが、任命状を作ってくれました。

 こういう仕事、いつも早いですね。

 あらかじめ用意していたんじゃって邪推しちゃうくらい。

 そろそろ時間のようです。


 今日は、この世界に来てから初めて、嬢王としての正装である、白いフワッフワのドレスを着ています。

 胸元とか背中が大きく開いていて、とても寒いので、白い毛皮のファー的なものを首に巻き付けてあります。

 少しは温かいです。

 すぐにでも普段着というか制服に着替えて、温まりたいです。


 あ、でも、下半身は、いつもより暖かいかもしれません。

 何しろフワッフワのロングスカートというかドレススカートというか。

 とにかく、温かいのです。 

 


 式典は滞りなく進み、最後に近衛騎士団の任命というか、認証になりました。

 目の前にはエルフ姿のゴンザレスとその息子たち。

 昨日、ゴンザレスの息子たちは、精霊のレイン様によってクラスアップされました。

 ゴンザレスと同様、マインウルフからマインエルフにクラスアップしたのです。


 私は期待していました。

 イケメン6つ子集を毎日侍らすことができるようになると。

 執事服的なものを着させて、いろいろ私をお世話しちゃうんだろうと。

「お嬢様、おかえりなさいませ。」

 とか、言わせちゃうんだろうと。


 現実は厳しいです。

 挫折しそうです。


 悪ガキが6人。

 これが現実でした。

 小学生高学年くらいの、140センチくらいの男の子が6人。

 顔もほぼ同じで、区別するのが困難なくらい。


 この子達が、毎日私の周りにまとわりつくんですね。

 人選、失敗したかも。

 どちらかというと、私がお世話する方なんじゃないかと、心配な未来が見えてきます。

 どうして、こうなった?


 理由は簡単。

 この子達、まだ、生まれて1年も経っていないんですね。

 ゴンザレスがマインウルフにされたのが1年前。

 そこから、いろいろあってゴンザレスが妊娠して、子どもを産んだのは、それから今までの間。


 つまり、赤ちゃんにならなかっただけありがたく思えと。

 マインウルフだった時にはあんなに頼もしかったのに、エルフの幼い姿を見て、頼もしさのかけらもありません。


 その上、ゴンザレスの血を引いているので、すけべです。

 6人が6人、すけべなんです。

 しかも、ゴンザレスと違って、全員オス、というか男の子です。

 これは、災害ではないでしょうか。

 人災という意味で。


 本心では、ちょっと認証したくありません。

 でもまあ、マインウルフでいる分にはとても強力な戦力ですし。

 今後は、意思の疎通もできるのでしょうし。

 将来性に期待して、ゴンザレスの教育に期待して、認証しました。



 駅前での式典が終わって、珍しいものをみにきていた村人たちが帰っていくと、執事服に着替えたゴンザレス親子7人がそろっていました。

 おい!

 近衛兵に認証したはずなんですけれど?

 腰には、レイピアか何かを下げていた。


 息子たちのレイピアは、それぞれ短かった。

 しかも、個人で長さが違う。

 揃えなさいよ、長さくらい。


「嬢王陛下。この出立ちでよろしいのでしょうか? 大岩井殿と野中殿が、ガーターの服飾職人

たちに発注した、オーダーメイド? だそうですが。」


 ああ、あいつら。

 ちょっと、頭痛がしてきた。

 絶対のりのりで発注をかけたに違いない。

 野中に至っては、私の個人的な趣味を完全に理解しているところが、幼馴染。


 解せぬ!

 だが、グッジョブ!


 こんなのダメだって、頭ではわかっているのだけれども、こういうの大好き。

 野中もそれを知っていて、なお、このデザインにしてきたと。

 いいでしょう!

 そちらがそのつもりなら、こっちだって、意表をついて、そのまま楽しんでしまいましょう。


 執事服最高!

 少年執事最高!

 あ、私、ショタじゃないですからね。

 本当ですよ?



<異世界召喚後30日目認証式後:ウーバン村/野中視点>


「上手くいったのか?」

「ええ、とても。あの蕩けた顔は、ちょっと引きましたけれども。」


 ゴンザレスたちに執事服を着させて、伊藤さんに送り込んだ悪役は僕たち2人。

 息子たちはいいのだけれども、ゴンザレスは今、女の子だ。

 メイド服にするのか、執事服で押し通すのか、ゴンザレスも含めて会議が行われた。

 その結果、メイド服は戦闘時に動きにくいという欠点を指摘され、執事服に至った。


 これはこれで、よいものだった。


 それはそれとして、ゴンザレス一家以外にも、今回の大規模戦闘でレベルが20を超えて、クラスアップした結果、マインウルフからマインエルフになった、元村人たちがいた。

 彼らももちろん、大岩井さんの配下の兵士になっているのだけれども、それはそれとして、実家に帰ってもいいことにしてみた。

 家族がいる者も多いし、親と一緒にいたいという者もいるからだ。


 反応はバラバラだった。


 いい反応をしたのは、もともと結婚前で親元にいた男の子たちと、結構高齢で、息子夫婦とかに面倒を見てもらっていた爺さんたちだった。

 男の子たちは、たいそう不満をもらしていた。

「娘も欲しかったんだ。望みを叶えてくれてありがとう。」

 とか、親に言われたと、ほとんどの男の子が嬉しそうに、残念感を出して言っていた。


 そして、爺さんたちは、面倒見る手間が省けていいと、家族に喜ばれたと。

 これも、嬉しさ半分、悲しさ半分。

 しかし、感情はともかく、この人たちは、大切な家族から、家族として認められて、受け入れられたのだから幸せ者だった。


 悲惨だったのは、新婚ほやほやの青年たちだった。

 だって、もともと男だったのに、可愛いエルフの女の子になって帰ってきたんだから。

 流石に話しているうちに、間違いなく自分の夫だとは分かったみたいなのだけれども。

 じゃ、夜、いざ、一緒の布団に入って、となると。


 夫婦不和の大きな原因ともなります。

 せっかく帰ってきた夫が、男じゃなくなっていたなんて!!!


 まだ、初日だし、長い目で見ましょうということになりました。


 結局、エルフになったのはゴンザレスまで含めると30人。

 全員が、自分の家に戻ることができた。

 めでたしめでたし。

 とは、ならないよ?


 だって彼らは王国兵士団。

 兵士として働いてもらわなくてはならないから。


 もともと、いろいろな仕事をしていたというので、兵士としての仕事さえしてくれれば、そこは融通を効かせることになった。

 とりあえず、王宮兵士団でエルフになった高レベルの者、といっても昨日エルフになってLv1になったのだが、とりあえず、この人たちを、それぞれ小隊長とか分隊長とかにした。

 指示が分かりやすくなるからだ。


 マインウルフ軍団からは、ちょっと不満の声もあったらしいが、レベル上げのいい動機にはなったようで、無駄に訓練にはげむようになったそうだ。


 王宮兵士団は、実際のところ、あまり仕事がない。

 実働部隊として、城の周りを警備するのはゴンザレス一家で十分なので、それぞれの町の警備をするくらい。

 だから、一つの町に、1分隊くらい置いておいて、休みのたびに交代することになった。

 本隊は、もちろんウーバン村になる。

 王都なのに村なのは、結局変わらないのね。

 

 国境警備隊は、昨日の段階で、オールドコソナを拠点にさせようとしたのだけれども、隊長のエナジナーが断ってきた。

 かれらの要望で、オールドコソナとウーバン鉱山東口を結ぶ道の中間地点、ちょうど、国境の壁と道が離れて、東口に向かうあたりに、拠点が欲しいと言われた。

 なぜなら、いくら何でも、異種族混成団すぎて、慣れているとは言っても、オールドコソナの人間にも、刺激が強すぎるだろうという配慮からだった。


 線路もないので、とりあえず、サイズ大きめの貨物駅をLv1で作ってみた。

 ラストがイキリ立って、ここまで線路を伸ばすと言い出していた。

 確かに、他のところは線路を引く作業は終わってしまっているし、バラストも枕木も十分にストックがある。


 そもそも僕に止めようもなく、線路を作り始めてしまった。

 そして、今日の昼には、繋がってしまっていた。

 親分たちが、相変わらずいい仕事をしてしまっていた。

 最近この親分たちは、ラストにだだ甘であることが分かった。


 なんだか、娘みたいに思われているみたいだ。

 まあ、慕われていることに悪意はないだろう。

 生暖かい目で見守ることとした。


 ちなみにその駅は、「国境警備隊本部前」という駅名にしたのだけれども、結局のところ、駅そのものが本部になってしまった。

 すぐに、駅の周りには、それぞれの種族の住みやすい家が作られ始めていた。

 小さな村になっていきそうな予感がした。


 ワーランドの方がガラ空きになることもなく、ある程度は残っていたし、山神様やまのかみさまが、サッシー王国から、拉致してきているんじゃと心配になる程積極的に、異種族を保護してきていたので、住民は、増えていく様子だった。



<異世界召喚後30日目昼過ぎ:オールドコソナ/大岩井視点>


 私は、それぞれの町や村に兵士を駐屯させるために、ガーター町、ワーランド村、とめぐって、いま、オールドコソナにマインウルフ軍団と来ていました。

 ちょっと気になった、というかマインウルフたちもとても気になるというので、異種族の方々が、一体どのようにして国境警備や人の出入りを扱っているのか、見学に行きました。


 

 これは、決して、何らかの予感があったとか、そういうつもりはありません。

 マインウルフ兵団ともども、ただのデバガメでした。


「こんにちは。国境警備はどうですか?」


 国境唯一の門で、人の出入りを警戒しているエレメント族のエナジナーさんに声をかけました。

 ライトエレメントなんだそうで、とても眩しいのですが、門の下はちょっと暗いので、ちょうといいくらいでした。

 適材適所、と言う訳ですね。

 かれが、国境警備隊長なのですけれども。


「はい。オーイワイ殿。順調ではありません。昨日、ミャオー王国の国境警備隊の方から引き継いで、仕事自体は順調です。この門を出入りするのは、商隊が、1週間に1回程度。それ以外に通行者はほとんどありません。ですが今日は、珍客がたくさん。」


 珍客?

 どういうことでしょう?

 少なくとも、商隊ではないのですね?


「どこの方ですか?」

「隣町の、イツナから来た帝国の住民たちです。亡命したいと、泣きついてきています。」

「亡命? どういうことでしょうか?」

「なんでも、帝国内に魔族や魔物が多くなって生活しにくくなったと。いつ殺されてもおかしくない状況になってきたと。兵士が対応しきれなくなってきていると。」


 ちょっと、重要な情報だった。

 そして、心配事が発生した。

 心配なら今、すぐに指示を出せる。


 私は、配下のマインウルフ兵団に、国境の壁に登って、魔族の襲来がないかどうか確認するように伝えた。

 彼らは、嬉々として門から国境の壁に登ると、展開していった。

 10匹、1分隊は門に残ってもらった。


「で、亡命、認めてもいいでしょうかね? 気持ちとしては認めてやりたいんですが。」

「人手不足ですし、いいと思いますが、その前に少し、待っていただくことは可能ですか? 精霊のレイン様をお呼びします。魔族ではないことを確認してから入国させたいのです。BANをかけてもらいます。」

「あ、ああ。あの。聞いております。ですが、私どもエレメント族には、魔族かどうかは見ただけで分かりますけれども? なにしろ、実体には意味のない種族ですし。」

「それなら、魔族は弾いていただいて。」

「分かりました。」


 こうして、亡命者の受け入れが開始されました。


 もともと、オールドコソナには住人が少ないようですね。

 砦を守る兵士と、その兵士相手に商売をするお店と、兵士がいるから安全だと言って畑を作る農民とが、主な住人でしたから。

 そのうち、国境警備隊はそもそもこの町に住まなくなってしまいました。

 代わりにこられたのが、兵士と称しているマインウルフが10匹。


 そう言う訳で、ちょうど人を受け入れる家が、多少はありました。

 昨日から徐々に国境に集まってきていて、合計60人くらい、亡命者を受け入れました。

 魔族だったので、15人には丁寧にお帰りいただきました。

 

 魔族だからって差別するなとエナジナーは罵られていましたけれども、光のエレメント族は、魔族にとっては天敵なんだそうです。

 場合によっては触ったり抱きしめたりしただけで、魔族を消し去ることが可能だとか。

 なるほど、距離をとって遠吠えしていたのには、そう言う理由があったのですね。



 その、魔族たちが復讐に来た、と言う訳ではないのでしょうが、午後3時過ぎ、魔族たちが魔獣を引き連れて国境の門に近づいてきました。

 完全に武装しているので、此方に攻め込む気満々のようです。

 その数は、魔族が50に魔獣が300程度。

 魔族が魔獣を操っている感じに見えます。


 かなり早い段階からマインウルフの鼻にひっかかっていましたので、こちらは斥候まで出して、迎え撃つ準備は十分。

 マインウルフ兵団は、国境の壁の上に70匹配備中。

 彼らは岩石系の魔法を習得していますので、遠距離攻撃が可能です。


 あとは、国境警備隊の異種族混成軍団の皆様。

 エナジナーさんが伝令を放って、国境の門付近にはエナジナーさんの同族、ライトエレメントのみなさんが立ち塞がりました。


 これを見て、


「おい! だから言っただろ! ここの国境には、ライトエレメントがいるって! 俺たちには無理だって!」

「そんなバカなことがあってたまるか! サッシー王国は、人間至上主義だぞ? 異種族は国民として認めていないんだぞ? 国境に異種族が配備されるなんて有り得ん!」

「じゃあ、あの門の前にいる、ライトエレメント5体と、門の上にいるファイアエレメント7体は何ですか? 見間違いにしては、ちょっと無理がありますよ!」

「ええい! きっと見せかけだけだ! 先に魔獣を突っ込ませて、こっちから遠距離魔法で壁と防衛隊を破壊すればいい! 何の問題もない!」


 という会話がダダ漏れで聞こえているそうです。

 マインウルフ軍団の耳を舐めていますね。

 確かに、1キロくらい先の森の中です。

 いると知っていなければ、わからない相手です。


 でも、相手のセリフからも分かる通り、こちらが見えているご様子。

 ならば、こちらから見えない道理はありません。

 それどころか、マインウルフイヤーは地獄耳なんですよ?

 なんでも聞こえてしまいます。


 今は、マインエルフに変身できる子もいるので、もう、その情報、ダダ漏れです。


 あ、エナジナーさんが部下に何かを指示しました。


 部下の方、何か魔法を唱えましたね?

 え?

 先程、無駄話をしていた、今回の襲撃のボスと見られる魔族の方、吹っ飛びましたね。

 1キロくらい先にいるんですけれども。

 ライトエレメントさんの攻撃、えげつないですね。


「ほら! 本物だぞ! レーザーで攻撃されたぞ! あの攻撃は見えないんですよ! 避けられないんですよ! これでもやっぱり近すぎたんです!」

「そんなバカな! ありえん。」

「あんた、今、吹き飛ばされておいて、何言っているんですか!」

「しかし、むう。突撃させろ。魔獣軍団を。数で圧倒しろ!」

「蹂躙されますよ! しかも相手は砦にこもっているんですよ!」

「構わん! やれ!」


 ああ、なんて方。

 上司が無能だと、部下は困るパターンですね。

 同情いたします。

 あの方、先程ライトエレメントさんたちに、国境からつき返された人ですね。

 まだ、その方が作戦としては優秀でした。

 いい部下をお持ちですのに、もったいないです。


 なぜか今回の魔王軍? の襲撃は、地上戦力のみ。

 魔獣も、ちょっと凶暴な感じの巨大猪的なものばかり。

 ああ、力任せに国境の壁とか、砦の門とか破壊して通過するおつもりなんですね。

 分かります。

 ええ、手に取るようにわかります。


 対して、こちらは、ライトエレメントたちの遠距離レーザー魔法攻撃。


 圧倒的。


 なにしろ攻撃線が見えません。

 炎にしろ氷にしろ、魔法なら、どうしても術者からの攻撃線が見えてしまうものです。

 しかし、レーザーは実際ほぼ透明。

 着弾? するまで見えません。

 もちろん光ですから一瞬です。

 最初に弱いレーザーで照準をつけて、出力をあげて、焼き切る。

 こう言う仕組みみたいです。

 もっと出力を上げると、さっきみたいに爆発させて吹き飛ばすことも可能なようですね。


 でも、エレメント族にも弱点があります。

 エレメント族には、HPという概念がありません。

 MPとHPが兼用になっています。

 アンデットとかと同じような仕様ですね。

 ですから、MP使いすぎると消滅してしまいかねません。

 魔獣が門に近づいてきた段階で、マインウルフたちの攻撃魔法に切り替えました。


 相手は巨大な猪。

 ただの攻撃魔法では止められません。

 突撃を繰り返されれば、砦といい、壁といい、そのうち粉砕されてしまうでしょう。

 マインウルフにとらせた作戦は、攻撃魔法ですが、相手は魔獣では有りません。

 地面です。


 あらかじめ、地面に魔法をかけてありましたので、エレメント族が撃ち漏らした巨大猪は、地面の穴に落ちていきました。

 がんばって、10メートルくらいの深さで掘ってもらいました。

 流石に這い上がってこないご様子。

 ここまでで、魔獣の9割は、行動不能にさせました。


 残り1割。

 つまり30匹くらいが、壁や砦に突撃して、破壊しようとしています。

 相手の作戦は、大成功です。

 でも、まだ、突破された訳じゃ有りません。

 マインウルフたちも、大量の猪肉を前に、大興奮です。

 一年分くらいの肉が確保できそうですから。

 こんな美味しい話、なかなかないですよね。


 ここからは、本当に地味な戦いです。

 国境の主戦力、リザード族が、大きな槍を持って飛び降りていきます。

 その数は10。

 こちらもそこそこ大きいですが、巨大猪は、リザード族のおよそ2倍の大きさ。

 均衡する、と言うほどの戦力にはなりません。


 そして、それを補助するのが、城壁からのマインウルフですが、混戦中になると、なかなか役に立ちません。

 俺たちも、地面に降りて戦う! とか言っていますけど止めています。

 危ないですから。


 なぜ、危ないのか。


 それは、ガルダ族が、にっくきリザード族ごと、魔獣に対していろいろな攻撃魔法を放っているからです。

 空を自由に飛べるって、すごく有利ですね。

 相手に空を飛ぶ戦力のいない今、空は、完全にこちらの支配下です。

 これで、何とか、国境の壁をドン! される攻撃は無くなってきました。


 しかし、なかなか相手の数も減りませんし、じわりじわりと後衛の魔族が迫ってきています。


 ここで、隊長のエナジナーが奥の手を放ちました。

 スライム。

 シルバースライムを3体、攻撃に参加させました。


 本当に奥の手です。


 シルバースライムは姑息な攻撃をします。

 かなり素早い彼らの持ち味は、本来その強力な防御性能にあります。

 スライムなので物理攻撃はほとんど無効で、シルバーであるが故に魔法攻撃もまた効果が期待できません。

 しかし、それは、スライム側も同じ。

 非力なので、物理攻撃は弱く、シルバーであるが故に他のスライム種とは異なり、魔法が使えないことになっています。


 このあいだ、ガーター町の金属加工職人との会合で、悪の技を身につけてしまいました。

 そう、刃物です。


 スライムですから、自分の体を自由自在に変化させることができるのです。

 そして、金属加工職人たちから、よく切れる刃物についてのレクを受けてしまい、一時的に、体の一部を、本当によく切れる刃物にする技を身につけてしまいました。


 つまり、俊足で近寄ってくる、よく切れる刃物、ただしこちらの攻撃は無効。

 シルバースライムたちは今、そういう立場になりました。


 彼らは、ひたすら、巨大猪たちの足だけを狙いました。

 30匹の120本の足を。

 全て狩り取った時に、砦の前には魔族が50人ほど迫っていました。

 ここからがおそらく戦いの本番です。


 相手は、やる気?


「おい? なんで、これだけやっても砦があるんだよ? 普通更地になってるだろ? 今までどこの砦も城壁も、この手で上手くいっていたのに。」

「うそだろ、おい。」

「いや、おい、バカ! 撤退だ! 早く逃げろ! 焼き殺されるぞ!」


 魔族との戦いは、こちらとしても避けたいところ。

 昨日までの王国国境警備隊だったなら、今頃町は蹂躙されて、更地になっていたことでしょう。

 しかし、昨日から、この国境を守るのは、異種族混成軍団。

 対人間に特化した集団は、ある意味、こちらに取っては好都合。


 相手の判断にも助けられましたが、何とか退けることができました。


 でも、私、しばらくこの国境から、動けそうにありませんね。

 またいつ、攻撃されるのかも分かりませんし。


 とりあえず、警戒体制を解いて、皆を労うと、次の戦いに備えるのでした。

ブックマークと評価ポイントありがとうございました。

今後の作品の糧として、がんばります。


さて、本文の話です。

異世界もので、敵勢力に攻め込まれる場面は、大好物ですね。

なんなら、悲壮感漂う負け戦の方が、読み物としては古来より多く執筆されています。

やはり、勝ち戦は、サーガとしてはともかく、心を揺さぶる文章を書きたい書き手としては、難しいのだと思います。

負け戦は、悲壮感や、逃走中のスリルあふれる描写、極限状態で崩れる人間関係、信頼関係、そこで差し伸べられる救助の手、自らを犠牲にして味方を助ける兵士など、感動する要素満載です。

そのうち、そういう内容で、書いている自分が涙腺崩壊するような文書も書いてみたいものです。


それでは、泣きすぎてパソコンを壊していなければ、明日の12時すぎに。


訂正履歴

 触ったりだし決めたり → 触ったり抱きしめたり

 どうして術者からの → どうしても術者からの

 通り → 道理


 レーザーで標準 → レーザーで照準

 拠点させ → 拠点にさせ

 王国兵師団 → 王国兵士団

 一家意外 → 一家以外 

※ 以上4件誤字報告感謝いたします。

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