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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第6章 教科書知識でチートな国家運営(笑)
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第77節 嬢王陛下は専守防衛がお好き

前書きに、専守防衛について書いていたところ、5000字を超えてしまいましたので、本文より長いのはどうかという意見と、思想上の検閲の上で削除しました。

前書きが、やむ落ちになったことを深くお詫びいたします。


今日はそう言う話です。

それでは、どうぞ。

<異世界召喚後29日目午前中:ウーバン村/大岩井視点>


 皆様、おはようございます。

 大岩井です。

 今日は、昨日の悪魔討伐記念の宴会が夜遅くまで行われました。

 それで疲れ切った私たちは、ウーバン村の駅にお泊まりしました。


 ところが、なんということでしょうか。


 朝から、なにやら険悪なムードです。

 伊藤さんと野中がちょっとけんかしています。

 いいえ、違いますね。

 意見の対立が、本格的になって表面化してしまったのです。


 原因は簡単なこと。

 現場を見ていない伊藤さんと、国民のことを見ていない野中と。

 どちらも、周りが見えていなくて、間違った方に進みそうなので。

 ここは私の出番かと。


「さて、言いたいことは、もう、それでよろしいですか?」


 満面の笑みで、お二人に声をかけました。


「お、おう。大岩井さん。何か?」

「大岩井さん? トラブルに口を挟むなんてらしくないわね?」

「そんなことありません。自分の命に関わることですし、当然のことです。」


 お二人とも、キョトンとしてしまいました。

 ご自身で話し合われていた内容が、まさか他人の命に直結しているとは思っていらっしゃらなかったご様子ですね。

 ちょっと、重症かもしれません。

 これは、お灸をすえる必要があるかもしれません。


「野中さん。あなたは実際に、悪魔と戦ってしまいましたね。本来なら、戦いは回避すべきでした。レインさんがチート魔法を使わなければ、皆、死んでいましたよ?」

「うぅ。すまない。」


 野中さんは、私の胸をチラチラと見ながら、見ちゃダメだと誘惑と戦って、しかし負けてを繰り返しつつ、しょんぼりとした顔で、そう言いました。

 仕方のない殿方です。

 よっぽど私のお胸が好きなのでしょうね。

 でも、甘やかしません。


「それと伊藤さん。逆に、野中さんが戦いに出ていなければ、おそらくこのウーバン村も、ミャオー町同様、廃墟と化していましたよ? レインさんが活躍したのも、野中さんが戦いに出向いたからです。おそらく、長期的に見れば、国は滅んでいましたね。」

「え、あー。うん。ごめん。」


 お二人のお話は、どうしても平行線になる話でした。

 そもそも正しい答えなんてありません。

 たまたまうまく行っただけの現実。

 それに意味を見出すのは、愚か者のすること。


 拾った命なのだから、それを繋ぐためには、今後どうするべきかを考えるのが賢明でしょう。


 過去のことをうだうだねちっこく非難し合うのは「生産的」ではありません。

 それに今の自分たちは過去の結果を知っているので、後出しジャンケン的な意見で、相手を批難できてしまいます。

 相手を簡単に言い負かすことができるのです。

 そんな議論にはたして意味があるのでしょうか。


 そんな頭が悪い議論をする暇があったら、未来の話をしてはいかがでしょうか。


「お二人は、今すべきことがなんであるか、把握なさっていますか?」

「とりあえず、大岩井さんの作った朝食を食べる。みんなで。」

「そうね。そうしましょう。」

「ステイ! あなたたちは馬鹿なのですか? そういう話ではありません。この国を、この世界を守るために、あなたたちのすべきことは、まず、何であるか、聞いているのですよ?」


 はぐらかそうとしてもダメ。

 この話は、朝食前に済ませておかなければダメ。

 私には見えてしまいました。

 この話を朝食前に終わらせなければ、BADEND直行であるということが。


 何を馬鹿なことをと思われるかもしれません。

 でも、この世界をゲームとして考えるのなら、選択肢は今、私の手元にあります。

 セーブロードができない現実の厳しい仕様です。

 選択肢が見えたのに気がついたのならば、慎重にもなります。


 絶対に間違えられない。

 ゲームじゃない世界で、これは絶対。


「分かっているわ。最初はその話をしていたの。話が逸れて、喧嘩になっただけ。考えていなかったわけじゃないから。」

「まあ、喧嘩になるくらいだから、その話も、意見が一致していないんだけどな。」


 その話を聞いて、私はちょっとは安心しました。

 本格的なアホであるという訳ではないことに。


「いいでしょう。重畳です。ならば、伊藤さんから、考えを言ってください。野中は、途中で口を挟んではいけませんよ?」

「おう、わかった。」


 ちょっと野中は不満そう。

 表情に出ていますよ?

 でも、それくらいでちょうどいいんです。


「じゃあ、私から。まず、この国を守るための防御策をきちんと作るべきだというのが私の大きな目標。そのためには、きちんと税金はとるべきだと思うの。あと、そのお金で城壁もきちんと作るべき。箱ものは、無駄と言われるけれども、国民の命には変えられないから。」


「はい。それでは野中の話を聞かせてください。伊藤さんは口を挟んではダメですからね?」

「わかったわ。」


 言いたいことが言えて、スッキリした顔をしている伊藤さん。

 対して野中は、危機迫る顔だ。

 追い詰められている感じだった。

 何から?


「僕の話は簡単だ。さっさと大魔王討伐を進めていこうという話だ。大魔王さえ討伐してしまえば、元の世界にも帰れるし、この世界の人たちも平和になって幸せになれる。今は、国防に必要だと言って、それじゃなくても貧乏な国民から、お金を搾り取って、生活を苦しくさせる場面じゃないだろ? うっかりすると、餓死するぞ?」


 さて、お二人の話は180度反対のことを言っているようにも聞こえますし、実質的には同じことを言っているとも言えます。


 もちろん、意見が対立しているわけですから、反対のことを言っていることに間違いはありません。

 簡単な意見の対立は、国民からより多くの税金を集めるかどうか。


 伊藤さんは国防のためなら仕方ないので税金を上げるべきだと。

 野中は、そんなことしたら、国民が干上がってしまうと。


 国民を守りたいのは、二人とも同じでしょうに。

 手段として、税金を集めて、国民を苦しめつつきっちり守るのか。

 税金を集めないで、そこそこに守るのか。

 分かりやすく言い換えるなら、伊藤さんは100点じゃなきゃダメな考え方で、野中は、60点くらいで満足してくれっていう考え方。


 野中は、あれだけの死人を見て、どちらかと言えば伊藤さんの意見になると、私は予想していたのですけれども、違ったのですね。

 やはり、男の子なんですね。

 

 でも、これは困りました。

 二人いれば意見が二つ出るのは当たり前なのですが、お二人が幼馴染だと聞いていて、どちらかが合わせることで、うまく付き合っているんだと思いましたが、違ったようですね。

 もっとも、もしそれができていたのなら、もうとっくにお付き合いされているでしょうしね。

 リア充になっていないことが、なによりの証拠。


「さて、困りましたね。お二人とも、意見が一致しないご様子ですね。でも、まあ、とりあえずは野中の意見しか選択する余地がないことも、指摘しておきます。伊藤さんには申し訳ないのですけれども。」

「どうして? どうして野中の肩を持つの?」

「もっと、ロジカルな問題です。伊藤さんはその重税、どう説明してかけるのですか? 国民の顔を思い出しながら想像してみてください。現実問題としては、そんな説明よりももっと重要で大切なこと、その税金を、具体的に誰がどのようにして集めるのですか?」

「うわ。そこを突くんだ? 大岩井さんえげつないね。僕もそれは思っていたけど遠慮していたんだよ?」


 幼馴染だから、斜め上に気を使っていたみたいですね。

 もう少し、上手に使っていただきたいのですけれども。


「野中は『小さな政府』的な考え方ですね。夜警国家を目指す感じでしょうか。伊藤さんは重税高福祉国家を目指す『大きな政府』的な考え方ですね。お二人とも両極端ですね。」

「いや、大岩井。違うぞ。僕は本来、大きな政府が好きだ。重税高福祉結構。だが、今のこの国でそれはできない。不可能だ。なにせ、人手がいない。税金を集めるのだって人手がいるし、周知徹底させる必要もある。国民の協力が必要なんだ。今すぐには無理。将来的には、伊藤さんの目指す国家観でいいと思うけど。」


 そこで、意見が一致しているの?

 めんどくせーやつらですね。

 ほんとはお二人、リア充なんじゃないでしょうか?


「私は将来じゃなくて今すぐ、直ちに、という話をしているの。」

「僕のスキルの駅と違って、お城も城壁も、一瞬ではできないんだよ?」

「知ってる。でも、極力早くすることはできる。大岩井さんが1週間で村の南に土塁と堀を作った。同じことができるはず。」

「あと、それは、人間同士の戦いでしか有効にならない。今回みたいに空飛ぶ魔族には、全く効果がないよ?」


 話は平行線でした。

 そういうテーマの話ですから、それは仕方のないことです。

 でも、このままではいけませんね。

 何も決まっていません。


 私には、ちょっとした焦りがあります。

 このままではBADENDへ進んでしまうのではと。


「その話は、平行線なので一旦棚上げがいいと思いますよ? まずは、国防の要である人員をどうするか。そこから決めてしまいましょう。」


 私は強引に話を切り替えました。

 おそらく、一週間話し合っても平行線でしょうから。

 なら、少しでも生産性を上げる努力をすべきです。

 そこで、具体策に入りました。


 税金の話はともかく、兵士はどうするのか、正式に決めるべきです。

 そして、そうすると賃金の支払いが発生します。


 話し合った結果、メンバー表ができました。


  近衛騎士団:伊藤さんとか、お城の警備をする騎士。

        団長 〜 ゴンザレス 

        団員 〜 ゴンザレスの息子である一太郎以下6名

   近衛騎士団は、はっきり言って今まで通り。

   特に何かが変わるわけじゃないことが強み。


  王国兵士団:王国を守ったり、外敵と戦う兵士。雑用もこなす。

        団長 〜 大岩井

        団員 〜 マインウルフ(村民)およそ130名(随時増加予定)

 

  国境警備隊:オールドコソナで、国境の関所を守ったり手続きしたりする兵士。

        隊員 〜 リザード族の皆さん(隊長は、族長)


  領   主:いくつかの町や村を統括する。管轄区域内の直属の兵士を動かす。

        ウーバン領 〜 パトリシア(ウーバン村長兼務)

                直属の兵士:ゴーレム

        コソナ領  〜 ブルーパル(鳥人種)

                直属の兵士:ソラメたち 


 伊藤さんと野中が中心となって、このメンバー表になりました。

 それを、それぞれ本人に伝達して、承諾を得ようという段になって、異議あり! と。

 主な勢力は、ワーランドの人たち。


 まず、ガルダ族が噛み付いてきました。


「ねえ、ノナカ? これ、キミが一枚噛んでいるんだよね? ちょっとこの表を見ていておかしいなと思わなかったのかい? 僕たちは、どこにも入っていないように見えるんだけどね?」

「そのとおり。入れていない。何か問題でも?」

「大ありさ。国境警備に頭の硬いリザード族を使うとか、いかれているよね? まあ、僕たちなら、もっとスマートにしてみせるし。どうだい? リザード族はあきらめて僕たちに国境警備をさせるつもりはないのかい? なんならガルダ族は全員、そのつもりなんだよ?」


 野中さんは、詰め寄られてタジタジです。

 確かにこれは予想しておくべきでした。

 なぜなら、鳥人のガルダ族と、爬虫人のリザード族は、とても仲が悪いと。

 一方に肩入れしているような人事。


 彼らが、それを見逃すわけがありません。


 対抗意識という意味でもそうでしょうし、実際の戦力という意味でもそうなのでしょう。

 まだ、いろいろ言い募っていますね。


 先程の戦いも、空を自由に飛び回ることのできるガルダ族に声がかからなかったのは何故なのかと問い詰めています。

 僕たちが呼ばれていれば、もっと楽に戦いを進められたかもしれないと。

 しかし、それをいうならば、そもそもリザード族には、こちらから声をかけていません。

 大変そうだと気がついて、手伝いに来てくれたまでのこと。


 あ、そうそう。


 リザード族も、自分たちで気がついて手伝いに来た訳ではないようです。

 裏では、ソラメとかいう簡単な伝令のできる小鳥たちが暗躍していたとか。

 操っていたのは、コソナ領主になった、ソラメの親玉である、精霊ブルーパル。

 どういう意図があって、リザード族を動かしたのかは謎ですが。


 結局のところ、ワーランド村の人たちも、国境警備に参加したいというので、参加させることになってしまいました。

 野中と伊藤さんは、押し切られた形ですね。


 国境警備隊の隊長は、村長でもあるエレメント族はライトエレメントのエナジナーさんに決定しました。

 その配下に、村の中の複雑な人間関係を持ち込んで、多種族混合の国境警備隊が編成されてしまったのです。

 もうなんか、絶対にこちらの意向を汲んでもらえなさそうな不安があります。

 国境警備隊は、実質的に、独立愚連隊と思って差し支えないのではないでしょうか。


 リザード族は、力が強く素早く、物理戦闘向き。

 真面目で実直、しかし、逆に返せば、力任せの石頭という評価もできます。


 逆に、ガルダ族は、力は大きくないものの、風魔法を得意としていて魔法戦闘向き。

 快活で明るく、ムードメーカー。

 逆に返せば、遠距離攻撃専門の後衛で、快楽主義者の気分屋たち。


 その他の種族は、もう、私たちの常識で計っても良さそうな相手ではありませんし。

 隊長のエナジナーさんは、常に眩しいですし。

 夜は、迷惑かもしれませんね。

 あかりが必要ないと、ありがたがられるかもしれませんが。


 このあたりは、実戦配備してから、徐々に変更を加えていけばいいのではないでしょうか。



 問題は、賃金です。


 国家の兵士として働かせるからには、賃金が必要になります。

 しかも、新しい王国なのですから、新しい通貨を作るべきでは?

 そんな意見もちらほらと。


 そこで、ガーター村に話をもっていくと、金属加工職人たちが、色めき立ちました。

 金属加工の職人たちにもいろいろな専門家がいるので、意見は対立していましたが、面白そうなので、いろいろな通貨を作ってみたいと言い出してきました。


 手元にある鉱山から取れる金属は、鉄と銅。

 ですから、銅貨が作れるだろうと思っていました。

 素人考えには。


「賎貨と亜銅貨なら、作れますぜ? それを作っときましょうか、だんな?」


 野中がガーター村の村長から、貨幣の見本を見せられていた。

 技術的には素晴らしい。

 デザインはある程度自由にできると。


 賎貨は、銅貨よりも価値の低い通貨で、鉄の合金でできているようです。

 その上の銅貨として、「亜銅貨」を勧められていました。

 要は合金です。


 亜鉛との合金である真鍮とか、いろいろな金属との合金であることが、さび防止につながるので、長持ちするということ。

 勧められたのを承諾するとともに、レイン先生が、図案を渡していました。


 絶対に悪い予感しかしません。



 お金の目処もついて、人員も確保できて。

 これで、伊藤さんのヨーコー嬢王国は、なんとか回していくことができそうです。


 悪い予感しかしませんが。


 大事なことなので、2回、言いました。 

ブックマークありがとうございます。


現代であれ、中世であれ、異世界であれ、国を守ると言うのは、とても難しいことです。

現代日本であれば、国が、防衛省を使って守ることになっています。

憲法違反では? というつっこみが、いつまで経っても発生し続けるということさえ気にしなければ。

中世、特にヨーロッパでは、それぞれの諸侯が、それぞれの国的なものを守っていました。

守っていないことももちろんありましたが。

異世界なら、あまりそう言う危険な内容には触れないようにしていることが多いです。

触れるにしても、敵は、大魔王限定ですよね。

人と人との戦いの場合には、誰もが認める悪役を準備します。


でも、現実問題として、それで通用するのかと言うと疑義があります。


疑義があると言うことを表明したために消されていなければ、また、明日の12時過ぎに。


訂正履歴

 フラッシュ → エナジナー 2箇所 設定ミス

 BADENA → BADEND ※誤字報告感謝いたします。

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