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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第6章 教科書知識でチートな国家運営(笑)
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第75節 嬢王陛下と自称女神様

==通算100回投稿記念企画==


それでは、どうそ!

<異世界召喚後28日目昼ごろ:コソナにある魔物の森/女神様視点>


 みなさんごきげんよう。

 女神です。

 なぜだか悪役だとか性格悪いだとか誹謗中傷を受けています。

 それでも、ダントツの人気を誇るあなたの女神です。


 さて、今日は、野中だとか大岩井だとか伊藤だとかが死ぬ予定だったのに、それを覆された原因を調査しにきました。

 だって、危ないじゃないですか。

 もう絶対に、私のことを恨んでいますよ?


 そうしたら、普通、どうするのでしょうか?

 復讐、しに来ちゃいますよね?

 女神様、殺したいですよね。

 ですから、やられる前にやれの精神です。


 サクッと消えてもらいましょう。



 でも、ここまで生き残ったのですから、なんらかの原因があるはずです。

 ちゃんと偵察して、隙をついて処理します。

 女神様は用心深いのです。

 うさぎ相手でも、容赦なく、大人気なく全力です。

 決して見逃しません。


 なんなら、私の顔に泥を塗った訳ですし。

 勇者の残り人数が変化しないことに、各国の国王が、私を嘲笑していましたね。

 許しません。

 ええ、絶対に許しませんよ?


 あ、大岩井を発見しました。

 木造の掘建小屋みたいなところを拠点にして、大量のモンスターを操っていますね。

 彼女はそういう恩寵でしたし、なるほど、そういうことですね。


 全国の鉱山という鉱山には、大魔王が魔族を放って、占領したと聞いていました。

 ですから、ただの人間には、突破できないはずと、甘く見てしまいました。

 甘々でしたね。

 脇が甘いにも程があります。


 つまりあれですね。

 恩寵を使って、鉱山内の魔物をテイムしまくったのですね。

 わかります。

 そして、今もなお、使役し続けていると。


 でもそれじゃ、国民は、あなたのこと、魔王の手下として見てしまいますよ?

 だって、これだけ大量の魔物を操っていたら、誰が見ても魔王軍の大幹部です。

 国民がついてこないのなら、放置していても問題ありませんね。

 なにより、あの数のマインウルフに守られていては、手の出しようがありません。


 女神様は、か弱い女の子ですから、マインウルフとか魔物と戦うとか無理。

 次のターゲットを偵察しにいきましょう。

 どちらにしましょうか?

 え? はい。


 それでは、伊藤にしましょう。

 彼女、王様ですからね。

 首を取るのは、一番最後がいいでしょう。



<異世界召喚後28日目昼過ぎ:ウーバン村>


 さっそくいました。

 今、ちょうど拠点にしている駅に帰ってきたところですね。

 って、なぜこの世界に線路と駅が?

 文明侵略された感じです!


 今どんな気持ち? 今どんな気持ち? って聞かれている気分です。

 とても気分が悪いです。


 おやおや?

 なぜか伊藤にも、マインウルフがついていますよ?

 どういうことでしょうか?

 大岩井がテイムしたとしても、伊藤のいうことを聞くはずがありません。


 おかしいですね。

 そして、伊藤もまた、常にマインウルフに守られているのなら手を出せません。

 なんてことでしょう。

 この女神の予定を狂わせるとか、ひどい勇者たちです。


 王様しているということですから、住民にちょっと聞いてみましょう。

 きっと、所詮高校生のだめだめな国家運営に、国民は陰で笑っているはずですよね。

 悩みを聞くふりをして、いろいろと聞き出しちゃいましょう。

 そういうの、大好物ですよ?



「ごめんください?」


 酒場っぽいお店に自然に入り込みました。

 今のところ疑われていません。

 さすが女神です。

 これくらい簡単ですよ?


「へ〜? よそものかい。めずらしい。ま、座んな。何処から来たんだい?」

「サッシー王国の王都から来ましたよ?」

「どうやって?」


 変ですね?

 なんだかかなり疑われているように感じます。

 不思議ですね。

 普通の旅人だと思ってくれていいんですよ?

 それがお互いのためですし。


「普通に馬車に乗ってきましたよ? 定期便で。」

「そうかい。それは大変だったね。」


 なんとかきりぬけたようですね。

 私のアドリブ能力を甘く見ないほうがいいですよ?

 先程のおばさん、奥に入っていってしまいましたよ?

 ここは普通、注文を取りに来るところじゃないんですか?


 ああ、来ましたよ?

 若い女の子のウエイターさんです。

 テーブルには、赤いフルーツ系のワインが載せられました。

 水じゃないんですね。


「お客様。ご注文は何にいたしましょうか?」

「そうですね。おすすめで。ここでは、みなさんどのようなものを主に食べてらっしゃるので?」

「はい。主食はイモ類です。通常は甘いガーター芋を蒸したものを。量が欲しい場合は、甘くないウーバン芋を焼いたものを。それぞれバターをつけて食べます。それでよろしいですか?」

「そうですね。では、両方いただきましょう。ふかし芋と焼き芋ですか。秋から冬にかけての代表的な風物詩じゃないですか。」


 値段を言われました。

 そうですよね。日本と違うんですよね。

 先払い。

 言われた数の銅貨をジャラジャラと渡しましたよ?


 え?

 女神様お金持ってるのかって?

 当たり前です。

 そんな、人を一文なしみたいに言わないで下さいね?


「しばらくおまちくださいませ。」


 そう言うと、ウエイターの女の子はカウンターに入って行きました。

 こういう所で注文して、ご飯を食べるのも久しぶりです。

 女神はなかなか人里で食事とかできませんし。

 こういう機会を逃してはいけませんね。


 きっと、とてもおいしいものが出てきますよ?

 もう、期待でいっぱいです。


 ワインも、なかなかにおいしいのが出てきていますね。

 結構、裕福な村のようです。

 この世界は、冬を越すのにかなり苦労するようにできていますから。

 ここまでできる村は、なかなかありませんよ?


「お? なんでぃ? ねーちゃん、ここは初めてか?」


 むさいごろつきが、気安く声をかけてきましたよ?

 12人もいますね。

 まさにごろつきの典型。

 この人たちもここでご飯を食べるのでしょうか。


 お金持ってなさそうですけれども。


「お声かけありがとうございます。そして、さようなら。」


 きっぱりと意思表示しました。

 こう言う人たちには、はっきり言わなければ伝わりません。

 厳密に? ええ。そのとおりです。

 こう言う人たちには、はっきりと言ったにもかかわらず伝わりませんでした。


「今日はどこに泊まるんで? なんなら、ここに2階が宿屋になってるぜ? 部屋とってやろうか?」

「結構です。自分でできます。」

「夕食はどうするんで? ここも閉まっちまうぜ?」


 え?

 なぜ?

 夕食時の方が、目一杯稼げるんじゃないんですか?

 酒場じゃないんですか?


 情報屋とか、荒くれ者の喧嘩とか、そういう異世界テンプレートの酒場じゃないんですか?

 なぜでしょう。

 嫌な予感しかしません。


 もっとも、別に空間魔法が使える私には、ここで泊まる必要は一切ありませんが。


「それでしたら、家に帰っていただきます。」

「家、近いんか? 送っていくぜ? オレは、ここいらを仕切っている義賊の親分で、」

「あなたも、家に帰った方がいいんじゃないですか?」


 気安く肩とか腰とかに手を回そうとしてくるので、見えないように電撃魔法を放っておきました。

 もう、うっとおしいので。

 本人には、何が起こったのかわからないと思いますよ?

 弱い静電気が流れたようにしか感じませんし。


 でも、その小さな電流で神経を刺激して、触れないように、びっくりして手を離すような動作をするように、コントロールしておきました。

 10回くらい、腰に手を回したり、胸を揉みしだこうとしたりと、だんだんエスカレートしてくるのですが、全部返り討ちにしてやりましたよ。

 でも、この男、全くあきらめる気配がありません。

 どうしましょうか。


 偵察中なので、あまり目立ってはいけません。

 とりあえず、食事用に出されたフォークで、私に触ろうとしている左手のひらを刺して、貫通させておきました。

 流石に、結構な血が出てしまい、もう、触ろうとはしてきません。

 それくらいの分別はあったようです。


 もっと早く、見切りをつけられていたら、もっといい人生を遅れていたのにと。


「おまたせしました〜。」


 ウエイターの女の子が、ちょっと間延びした声を出して、芋料理を運んできてくれましたよ?

 間違いなく、ジャガイモとさつまいもです。

 ジャガイモがふかしいも。

 さつまいもが焼き芋。


 なんともわかりやすい組み合わせです。

 きちんとバターもとろけています。

 最高です。


 あと、サービスなのか、ちょっとだけ肉もついていました。

 冬の辺境の村とは思えない贅沢。

 正体がバレているんじゃと、心配してしまうじゃないですか。


「ここの国の王様って、どんな人なのか知っていますか?」


 チップを握らせて、女の子から情報収集をはじめました。

 ちょっと、異世界ものっぽいでしょ?

 実際に、女神様するまえは、よくこうして情報収集していたものですし。

 なれているのですよ? 年季が違うのですよ?


「1ヶ月くらい前に突然きて、私たちの村に君臨しました。人柄は真面目で、曲がったことが嫌いな人です。村人が困っているのを助けないと気が済まないというのが、困りものです。国王として、国の仕事をちゃんとして欲しいです。」


 なかなかに、辛辣な意見。

 やっぱり、所詮は高校生。

 目の前に見えることしか対処できていませんね。

 そう言うのは、領主とか村長のお仕事です。


 国王クラスの仕事は、見えない相手を動かすお仕事。

 実際に見ていない町やお城の中の人がどう動いているのか見えていないといけないお仕事。

 逆に言えば、見える人間じゃないと務まらないお仕事。

 それが、統治する人間に求められる能力。


「犬を連れているってきいたのですけれども。私、犬、苦手で。」

「あれは、ウルフだそうですよ? 詳しくはお話できませんが、すごく強いです。あと、村人の言うことをちゃんと理解してくれて、噛んできたりはしません。スカートをめくってきたりはします。」

「すけべなウルフたちですね。」

「そうなんです。気をつけてくださいね? おねーさん、きれいだから、きっといろいろされますよ?」


 人間だけじゃなくて、魔物からも貞操を守らなければいけない村。

 国民の評価は高くないと見た。

 所詮は、付け焼き刃。

 大したことはできていないじゃない。


「店長! 大変です! 魔物が! 魔物が襲撃してきました!」


 はいはい。それ、伊藤の引き連れているマインウルフなんですよね?

 騙されませんよ?

 お約束のギャグですね。

 わかります。


「ちょっと待ってろ? 見てくらぁ!」


 左手にフォークが刺さったままの荒くれ者が、食事もそこそこに飛び出して行きましたよ?

 そして、空を見上げていますね。

 固まってしまいました。

 よく見ると、外にいる人たちは、上ばかり見ていますね。


 9割方の人間は、急いで家の中に入り込んでいますね。

 ということは、空からの襲撃。

 マインウルフとかじゃないみたいですね。

 空気の読めない魔族たちですね!


 心配になってきたので私も、酒場の外に出て、空を見上げましたよ?


 え?


 どうして?


 空を埋め尽くさんばかりの魔族、魔獣。

 その数、およそ1000。

 かなり上空を飛んでいるので大丈夫でしょうけれども、この村は通過するみたいですね。

 安心しました。


 女神は魔族とか悪魔とか大魔王とかと戦うことを禁止されています。

 そもそも、それに逆らって攻撃しようとしても、全く効果がありませんし。

 もちろん、相手側も同じです。

 ですが、間接攻撃は効果があるんですよ?

 抜け穴ですね。


 ですので、うっかりひどい目に遭うかもしれません。

 やられる前に逃げましょうか。

 あ、でも、野中を見ていません。

 彼はどうしたのでしょうか?


 とりあえず、魔族の集団が南に飛び去って行きましたので、昼食の続きにしましたよ?

 作物を作ってくれた農家の人と、調理してくれた酒場の人に感謝しながら、きちんと完食しましたよ?

 喉が詰まりそうになりましたけれども、ワインのおかわりをついでくれたので助かりました。


 食休みをしていました。

 うるさい男たちもいなくなって、いい環境です。

 ちょっと、女の人が多くて、噂話がいっぱい聴こえるのが、日本っぽい。

 昼下がりの喫茶店みたいですよ?


 そこに、何やら聞き慣れた、そして、ここで聞くはずのない音が聞こえてきました。


 がたん、がたん、がたんごとん!


 あれですよね。

 電車の音です。

 でも、ここは日本じゃありませんよ?

 中世ヨーロッパ基準くらいの異世界ですよ?


 もちろん列車なんて。



 酒場から外を見る私の目の前を、猛スピードでトロッコが通過して行きます。

 野中が、トロッコに乗っていましたよ?

 他にも何人か。


 なぜ?

 そして、どこから?

 まったく理解できないまま、それでも魔族に襲われないように、私は店を出ると、森の中に入って空間転移魔法で拠点に戻りました。


 どういうことでしょうか?

 なにか、大きな力がはたらいているとしか思えません。

 まさか、大魔王の力を借りているのでは?


 魔族たちと行動を共にしているのでは?


 それを調べるのは、また次の機会にしたいと思います。

 とにかく、ちょっと、情報を整理しないといけません。

 あと、冷静な頭脳が必要です。


 私、もしかすると、とんでもない相手に喧嘩を売ってしまったかもしれません。

 でも、負けませんよ?

 ええ。

 負けませんとも。

久しぶりの全編女神様視点での物語、いかがでしたでしょうか。

女神様が主役だと、ノリノリで書けるので、いつもの半分以下の時間しかかかりませんでした。

もう、女神様主役でいいんじゃないでしょうか、と自分の中の女神様が甘く囁いてきます。

そんな、地味な攻撃を受けても、主役は変わりません。

そもそも、元から女神様は影の主役なんですし。


それでは、女神様にひどい目に遭わされていなければ、明日の12時すぎに。


訂正履歴

 こう言うところ → こういう所

 10階 → 10回

 9割型 → 9割方

 どんに人 → どんな人 ※ 誤字報告ありがとうございます。

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