第8話
ライラックさんたちの戦いは圧巻の一言だった。
予想通り8匹のウルフがやってきたがライラックさんの剣術とシュウさんの投げナイフによって片付いてしまった。
5分も戦っていなかったように思える。
「すご…。」
ライラックさんの流れるような剣術もだが、シュウさんのナイフもすごい。あんなに遠くに飛ぶんだな。
どのウルフも一撃で仕留められている。
「まぁ、あの2人なら当然よね。」
なぜかマヤさんがどや顔している。
「2人とも怪我がなくてよかったです。」
ミザリーさんに賛同しようかと思い振り向いたとき、視界の端でなにかが動いた。
ッウルフだ!
声をかける前にウルフが飛び出す。
ミザリーさんからは死角になっている!
俺も思わずウルフの前に出る。
だが、失敗した。
目の前に迫ってきたウルフが大きくて恐怖で目を閉じてしまったのだ。
次の瞬間にやってくる衝撃を身を強張らせて待っていた。
しかし、やってこない。
目を開けると異様な光景が視界に入る。
ウルフの体と……あとなんだ?
今まで見たことない形のものだったので脳の処理が追い付かなかった。
「すげーな。ウルフの上顎から頭まで真っ二つだ。」
シュウさんの言葉で理解できた。
あれ、ウルフの頭の上半分だ。
グロい!
……しかし、俺が斬ったのだろうか?
何かを斬った感覚はなかったのだが。
ライラックさんがウルフに近寄っていく。
「すごい切れ味だな、その剣。」
切断面を見ていたのか。よく見れるな。
冒険者になるには肉や毛皮の解体など出来なくては話にならないのだろう。
「ちょっと貸してくれるか?」
「あ、はい。どうぞ。」
「うーむ。重いな。そんな細い腕でよく持っていられるな。」
重い?あの剣が?
「しかも切れ味もそれほど…。こんなんでどうやったら物が斬れるんだ?」
「……え…と。さぁ。俺も思わず目を瞑ってしまったので何が起きたのか。」
「そうか。ま!何にしても助かった!たかがウルフと油断していた!」
「そうです!出来事にびっくりしてお礼をしていませんでした!ありがとうございます!」
「カッコよかったぜ!へっぴり腰だったがな!」
シュウさんがカカカと笑う。
マヤさんは真剣な面持ちだ。
「ふーん。もしかして、それがあなたのスキルってやつ?」
うん?
「あー、なるほど。さしあたり、『剣術スキル』ってやつか!」
ライラックさんが納得したように頷く。
剣術スキルか。
ステータスが見えなくてもスキルを所持していることもあるんだな。
何にしてもミザリーさんに何事もなくてよかった!