第5話
「それで、転移者っていうのは自分の世界に帰れたって話しは聞かないですか?」
1番気になることを直球で聞いてみる。
まぁ、どの物語でも転生者、転移者が簡単に元の世界に帰れた話しはあまり聞かない。
少し持ち直してきたとは言え、これ以上気分が落ち込まないようにあまり期待しないでおく。
「ああ。あるみたいだぞ。」
……。
「あ、帰れるんですか。」
別の意味でびっくりした。
「なんか、お役目が終われば元の世界に戻すとかなんとか。」
お役目ってなんだ?
ライラックさんもあやふやみたいだな。
まあ、昔ばなし、噂話で聞いたことあるだけらしいし。
だったとしたら寧ろ詳しい方だろう。
何気なくミザリーさんの方を見ると少し悩んだ様子で話し出した。
「いえ、待って。元の世界にっていうのは召喚者さんのことじゃないかしら。」
「あそっか。」
でたぜ。召喚者。
女神様やどこかの国のお姫様が魔法陣とかで呼び出す奴だ。
俺も召喚されていたらもう少し落ち着いていられたかな。
「その召喚者さんだったらやるべきことをやったら元に戻れたってことですか?」
お役目ってそういうことだよな?
お約束的には魔王を倒したりとかだけど。
「そうね。この世界には魔力が満ち溢れているわ。
その魔力が人々に恩恵を与える反面、魔物にも恩恵があるの。」
「うーん。もしかして、魔力によって強化された魔物…魔王が現れるとかですか?」
「さすが転移者ね。異界の知識かしら。」
「知識ってほどでは。俺の世界では魔力も魔法もありませんがもしあったなら、ある世界に行けたら。って話をよく目にしましたので。」
「ほーん。なら、もとの世界に帰った召喚者が本を書いたてことかね?」
シュウさんはあっけらかんとしたように言うが、核心をついているような気もする。
今でこそファンタジー小説や漫画はありふれているが、ファンタジーストーリー黎明期の物語は異世界から戻ってきた人の冒険譚だったのかもしれない。
そう考えるとロマンがある。
俺が帰れる可能性もあるわけだし。
1番最初のファンタジーがどんな話なのかはしらないけど。
「召喚者の話しは聞いたことあるけど、それって本当にもとの世界にかえしてるのかしら?」