第3話
「ちょっと待って!」
「どうした。ミザリー。」
「彼が本当の事を言っている可能性もあるわ。」
ミザリーさんと言う方が味方になってくれた。いい人なのかもしれない。
「ライラックも知っている通り私もマムル村にある日突然転移してしまったわ。」
「ああ。しかも村のど真ん中。俺の目の前にな。今も覚えてるよ。」
「ライラックってばビックリしすぎて変な叫び声あげてたよね。びょ!?って」
「うっせーぞ。マヤ。誰だって驚くだろーが!」
「彼も転移魔法で跳ばされたのかもしれないわ。」
「まあ、なくはないが。」
!?
今、転移魔法って言ったか!
あるのか!魔法!
いや、さっきは確かに異世界転移ならテンション上がるとか思ったが殆どジョークだ。
その場の雰囲気に飲まれないように気を紛らわしただけだったのに。
「おい!お前!……どうした?」
「!あ、いや。まさか魔法で跳ばされたのかもしれないって聞いたら…」
よっぽど驚いた顔でもしていたのかもしれない。
さっきまで真偽を見極めたようとした顔だったライラック?さんが少し心配したような目でこちらを見ていた。
「……あるんですか?転移魔法なんて。」
「ええ。あるわ。私もその被害者って言っていいかな。
なぜ起こるのかは分かっていないわ。魔法学会では妖精のイタズラなんて言っている人もけど、妖精にしては悪質すぎるし。」
魔法学会も妖精も出てきた。
さっきまでは人に会えれば帰れるかもと思っていたが本当に異世界に来てしまったのだとしたら2度と家に帰ることが出来ないかもしれない。
家族にも友人にも会えない?
……だめだ!悪い方に考えるな。心臓がバクバク鳴っている。
「…い!……おい!」
ライラックさんが俺を揺する。
「す、すみません!お、俺どうしたらいいか分からなくって。」
「おいおい。男なんだから情けない顔すんなよ…。
……しょーがねーな。」
「お、ライラックのお人好しが出たな?」
「仕方がないだろ。こいつが本当の事言っていたとしたらお前は放っておけるのかよ。」
「シュウにも無理だろうねー。ライラックの次にお人好しだから。」
「マヤだって人の事言えないだろ。」
この人たちは仲がいいんだろうか。
3人のやり取りを見ていたら少し落ち着いてきた。
「あなたの出身はどちら何ですか?」
俺はミザリーさんの言うことに即答できなかった。
日本なんて言っても異世界だと通じない。
かといって嘘っぽい適当な村の名前を上げてしまうのは信じてくれようとしているこの人たちに不義理になってしまう。
ミザリーさんは俺が言葉を発するのを待ってくれている。
……よーし。本当の事を言ってみよう。
「あの。日本て所です。」