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修羅の道

2人は『鬼火』を広範囲に漂わせて、森を照らす。

 蓮は納刀状態のまま構え、藤二郎とうじろうは弓を引いて音の方向を狙う。

 闇の中で赤い目が光った。

「ゴギャアアアアァ!」

 叫び声と同時に根っこごと引き抜かれた木が飛んできた。

 2人は左右に躱す。

 後方で飛んできた木が、轟音と共に地面をえぐる様な音をたてる。

『鬼火』に照らされて地響きを鳴らしながら近いてくる姿が見えた。

 2人の身長を足しても届かぬ程の巨体で、褐色の肌にバラバラの牙を持ち、目を赤く光らせた魔物が現れた。

「あの肌の色に声、やっぱりキングゴブリンか、森を荒らしやがって。」

「俺は初めて見ました。俺たちで対処出来そうですね。」

「ふつうのキングゴブリンならな、だがあいつは妙だ。 奴らは仲間を引き連れて襲ってくる。わざわざ自分で仲間まで殺したりしない。」

「なるほど。それからあいつが持ってる武器からすごい力を感じますね。」

「ああ、とりあえず様子見だ。」


 藤二郎とうじろうは矢尻に『鬼火』を纏わせて放つ。

 矢は木々の間をすり抜けて飛んでいく。

 ゴブリンの左肩に刺さり、炸裂した。

 肩が破裂し、左腕もろとも肉片が飛び散る。

 身体から骨が見え、顔の皮膚や耳も焼けていた。

「ギャ、ギャアアアアアッ!」

 その隙を逃さず蓮が踏み込みに行こうとすると、

「待て! 様子が変だ!」

「え?」

 蓮は静止に従い、敵の方を見つめる。

 ゴブリンの身体から骨や筋肉が再構成され始めていた。

 顔の火傷には新たな皮膚が作られ、腕も元どおりの形を取り戻していく。

「なんだあいつ、本当にゴブリンか?」

「大気中の魔素は変化してますけど、キングゴブリンはそんな事出来るんですか?」

「いや、奴等にそんな技術はない。出来たとしても自分の魔力を使った低級魔法だけだ。」

「じゃあ、カラクリの正体はあの刀ですかね。」

「恐らくな。」

 キングゴブリンの身体には何事もなかったかのように傷が消えた。

「ギ、ギ、グギギ!」

 キングゴブリンは左手に持った刀を振りかぶった。

 そして大振りで横になぎ払う。

「伏せろ!」

 刀を振ると、半透明の刃の様なものが伸びる。

 2人は地面に片手を着いて伏せた。

 刀を振った方向の多くの木が綺麗に切りこみが入る。

 そして轟音をたてて次々と倒れていった。

 月明かりにあたりが照らされ視界がひらける。

「長引くと森が荒れる。次で仕留めるぞ。」

「了解。」

 蓮は一瞬で踏み込みゴブリンの間合いにはいる。

 ゴブリンの腹部へ居合斬りを繰り出す。

 刀で蓮の斬撃を防いぐが、

 ゴブリンの赤褐色の巨体が、回転しながら吹き飛ばされた。

 すぐさま追撃をしようと蓮は踏み込んだ。

 しかしゴブリンは片足を地面につけて踏ん張り、マルタの様に太い腕で握り締めた刀を振り下ろす。

 蓮は刀で凌ごうとした。

 だが刀もろとも身体を叩きつけられた。

「がっ...」

「油断しすぎだ。」

 藤二郎とうじろうは二本の矢を指で挟み弓を構える。

 そしてバチバチと音を立てる矢を同時に放つ。

 体勢を立て直そうとする蓮に刀を振り下ろそうとするが、藤二郎とうじろうの矢が刺さった途端、身体に電流がながれる。

「ギッ」

 すかさず蓮は動きが止まった隙を逃さずに刀を振る。

「『屠神流とじんりゅう 十文字』。」

「ギャ!」

 蓮は下から刀を斬り上げ、目にも留まらぬ速さで横薙ぎをした。

 ゴブリンの身体を左右に両断され、2つに分かれた首が撥ねられた。

 鈍い音をたてて2つに分かれた頭部が地面におち、身体は膝から崩れ落ちた。

「念のため、」

 そう言って蓮は死体を一瞬で灰にした。

 霧は晴れ始め月がくっきりと辺りを照らす。

 刀を鞘に納め、顔についた土を拭う。

「何とかなりましたね。」

「ああ。だが油断したな蓮、危なかったぞ。」

「すいません。筋力で負けるはずないと過信していました。」

「分かってるならいい。 俺は向こうも灰にしてくる、お前は休んでろ。」

 藤二郎とうじろうはそう言うと200ml程度の濁った真緑色の回復薬が入った小瓶を蓮に手渡した。

「はい。ありがとうございます。」

 蓮はコルクの様な蓋を開け、中身を一気に飲み干して、顔を歪める。

 ふと先程、蓮は燃やした灰の中から何か光が反射しているのに気づいた。

「ん?」

 足で灰を除けて確認する。

「さっきの刀か......これは日本刀か?」

 キングゴブリンが使ってた刀がまだ熱を帯びた灰の中に埋まっていた。

 黄金色の柄頭つかがしらと菊の模様をした鍔つば

に、黒色の柄つかをした刀はいつの間にか、白い鞘さやに納まっていた。

「すごく綺麗だな......」

 蓮は吸い込まれるようにまだ熱い灰の中に手をいれて、その刀に触れた。

 そして鞘さやを持ち、刀の柄つかを握った。

 途端蓮の周りは真っ暗になる。

「えっ? 」

 さっきまでそこにあった木や地面は無く、蓮は真っ黒の水面に立っていた。

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