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鍛冶屋の三兄弟

蓮と菫は明かりのついた家に帰ってきた。

 蓮は自室で黒色の生地にハスの花柄のある厚い羽織りを着て、夜間警備の任務の支度を終えた。

 早めの晩ご飯を食べている時に母が

「昼に渡せなかったから、蓮が代わりに藤一郎さんにこの薬品を届けておくれ。」

 と夜食と一緒に布で包まれた荷物を持たされた。

 そのため、早めに家を出て集合場所の山小屋に行く前に嵐花村らんかむらの鍛冶屋に向かった。

 空はまだ少し明るく、鬼人たちが住む家の光と等間隔に置かれている石でできた灯籠のおかげで村の中は明るい。

 時々通りすぎる家から夕飯の匂いがする。

 遠くに鍛冶屋が見えてきた。

 村同士の商いの中で、この嵐花村らんかむらでは武器や工具、農具などの製造や修理などが特産の一つだった。

 そしてこの辺は、鍛冶屋の工房などが密集していた。


「藤一郎とういちろうさーん!」

 鉄の匂いと熱気を感じる工房に入ると、2人の巨漢があぐらをかいて何か作業をしていた。

 身長は高く、隆起した筋肉を持ち、上半身が裸で武器を研いでいる30代くらいの長男、藤一郎と、

 オールバックで藤一郎と同じくらいデカい身体の割に物静かでクールな感じの男は二男の藤二郎、が黙々と刀を手入れしていた。


「はいこれ、母さんから工房で使う薬品持ってきたよ。」

「おお! ありがとう蓮くん! 助かるよ。」

 手を止めて、短いく、藤花とうかと同じ色の髪を後ろにかき上げ、汗を拭きながら藤一郎が近づいてくる。

 威圧感のある大きな声で気さくに話し続ける。

「そうそう! 聞いたぞ。お前竜胆様と組手をするそうだな。」

「ええ! 父上と手合わせするいい機会だと思って」

「ははは! 相変わらず豪気! 無理しすぎて死ぬなよ!」


《鬼組手》を行う場所は、相撲の土俵の様な形をしている。

 大きさは相撲の土俵よりかなり広い。

 稲藁のようなものを俵状に編んだロープで囲んでおり、ロープとフィールドの中には魔術を込めた土が入っている。

 この土と稲藁で囲まれた魔法陣で魔術を発動している。

 それは、土俵の中ではある程度の傷を受けたとしても、外に出た途端に元に戻る。

 そういう魔術がかけられているが、しかしもし即死してしまえばたとえ土俵の外に出ようと治る事はない。

 また、1度出た後にもう一度どその傷のまま入っても魔法は発動しない。

 勝敗の決め方は戦闘不能になるか、降参するかのどちらかだ。


「竜胆りんどう様の一撃は半端じゃねえからな。分かってると思うが上手く魔力で対処しろよ? じゃねーと刀がもたねーからな! 」

 俺の家族は爺様と俺以外はみんな金棒派だった。

 金棒相手に刀で弾こうとすれば刀は壊れる。だから基本は魔力を自分の武器に纏わせ、耐久性や切れ味を底上げする。また魔力を身体に纏わせれば筋力を上げたり、傷を受けない様に防御力もあげられる。

「ありがとう藤一郎とういちろうさん。でも心配要らないよ!魔力操作もいつも鍛錬してるから大丈夫!」

「魔力で筋力を補うのは単純な筋力を鍛えて向上させるよりは燃費は悪いが、蓮の魔力は大量だからなんとかなるかもな。

 まぁそれに蓮は麒麟児ってやつだしな! 来月の『鬼組手』は楽しみにしてるぜ! 」

「兄貴、そろそろ時間だ」

 藤二郎とうじろうが立ち上がりバックを肩にかけて冷たい声で言う。

 藤二郎とうじろうは鬼人の中では珍しく物静かで無表情な冷たい人に思われがちだが根は優しい性格だった。

「よっしゃ! じゃあ行こうか!」

「藤三郎藤三郎さんはまだ帰ってきてないの?」

「どうせまだ警備小屋で遊んでるんだろ。」

 そう言いながら藤一郎は手拭いで汗を拭いた後に、上着を着て警備隊の羽織を着た。

「弟に絡まれてるやつを早く助けてやらなくてはな! では行こうか!」

 そう言ってたくましく笑った藤一郎と共に工房を出た。

 蓮たちは警備小屋に向かい、蓮の家とは違う方向の山への道を歩いて行った。

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