表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/13

鬼の剣技

蓮と菫が進んでいるこの青く生い茂った森は、木が風に吹かれて囁くような音を立てていた。

 嵐花村らんかむらとこの森は山に囲まれた地形にあった。

 さらに奥に見える一際大きな山には『月姫つきひめ』と呼ばれる竜神様が住んでおり、この豊かな土地に恵みをもたらしてくれていた。

 この世界ではちょうど一ヶ月周期の満月の日に、恩恵を受けている者達の長が月姫様の元で会合を行う。

 この土地に住む者達は皆、彼女を信仰していた。

 森を進むにつれて遠くから声が聴こえてくる。

 森を抜けて草原に出た。

 1人は木陰の中に立っていて、黄色い髪をポニーテールの様に結い上げた後ろ姿の少女は蓮の幼馴染である雛菊ひなぎくが見えた。

 雛菊ひなぎくとその姉の菊花きっかは村では屈指の美人姉妹と評判と言われている。

 そして雛菊が見ている方向に木刀を持つ爺様と、金棒で襲いかかってる赤髪でツンツン頭の熱血少年は、もう1人の幼馴染の椿が見えた。


「うおぉ! 死ねじじぃ!」

椿が踏み込みながら金棒を振り下ろし、鈍い音を立てて地面にめり込む。

「カカカっ、芸がないのぉ」

 一犀いっせいは蝶の様にひらりと避ける。

 椿は背中に連撃を入れられ森の中に吹き飛んでいく。

 しかしすぐに森から飛び出して立ち向かっている。


「雛菊さんこんにちは!」

「あら、菫ちゃんこんにちは!」

 誰もが美人だと思うほど整った顔に少し土がついた雛菊が振り返る。

「ギュってしてー!」

「いいわよー。 ふふふ、菫ちゃんは今日も可愛いわね。」

「蓮くんもこんにちわ!」

「おう、今日は雛菊と椿しか来てないの?」

「うん。他のみんなは今日はお勤めがあるみたい。」

「そっか」

「それより蓮は竜胆りんどう様と組手をするって聞いたわ。そっちは大丈夫なの?」

「もー、雛菊さん心配しすぎだよー! 兄貴は強いもん」

「心配してくれてありがとな、俺は今の実力をどうしても測っておきたくてさ。」

「蓮は確かにとても強いけど、無理はしないようにね。応援してるわ。」

「ありがとな雛菊。」


「蓮と菫もやるか?」

爺様は担いでいた気を失ってる椿を雛菊に預けて、肩を回している。

「兄貴、お先にどーぞー」

(なるべく爺様が弱ってる時にやりたいから.....)

「相変わらずの負けず嫌いだな......じゃあ俺から鬼人刀のみでいきます。

「いいだろう。」


 木陰から出て納刀状態のまま構えた蓮は、片手で木刀を構えている一犀と向かい合う。

「『屠神流とじんりゅう 一閃いっせん』。」

 蓮は納刀したまま瞬時に踏み込み居合斬りをする。

 しかし一犀は軽々と弾き、受け流す。

「ほう! 昨日よりまた鋭くなったな!」

「まだまだ、『屠神流とじんりゅう 乱雲渡り』。」

 一つ一つ違った太刀筋の連撃をいれる。

 一犀は軽々と全て受け流しながら下がる。

「カカカッ 見事!」

 しかし乱撃の流れが、途端に変わった。

 一犀は重く蓮の一撃を弾く。

 蓮は体勢を崩して少しだけのけぞった。

「『屠神流とじんりゅう 一閃いっせん』。」

 蓮の腹部に居合斬りをする。

 ガードするが強烈な一撃と共に突風が起こる。

 身体が後ろに吹き飛んでいく。

「『屠神流とじんりゅう 穿破せんぱ』っ」

 一犀は空中で更に追撃。

「がはっ、」

 蓮は胸に突きを入れられ、さらに森の中に吹き飛んでいった。

「うむ、技のキレは良かったがまだ魔力の操作で次の行動が読みやすいぞ。それに最後の突きはお前なら『魔力探知』で見えなくとも見切る事もできたはずだ。」

 森の中に歩いて行き、倒れている蓮に真緑色の回復薬が入った小瓶を渡しながら言う。

 瓶の口にコルクのような木製の蓋を外し、中の液体を一気に飲み込み顔を歪める。

「ニッガァ......」

「立てるか?」

「大丈夫、もっと力の扱いを上手くなるよ」

「お前は飲み込みが異常に早いから楽しみにしてあるぞ」

「はい、ありがとうございました。」

「うむ、これからも精進しろよ! 」

 蓮は鬼人刀を使って立ち上がり、一犀と一緒に雛菊達がいる木に戻った。


「次は菫だな、準備はいいか?」

「オッケー! 行くよ爺様」

 そう言って菫は金棒を握り走って行った。


「イテテ、」

 蓮は片方の手で胸をさする。

「蓮くんお疲れ様。また強くなってたるのね。」

 そう言って雛菊は水が入った、竹の様な物で出来た木製のボトルを渡してくれた。

「ありがとう」

 蓮は手渡されたボトルを飲みながら刀を横に置いて、木に寄りかかりながら座った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ