魔法の人魂
蓮と菫は昼過ぎにようやく薬草の下準備を終えた。
家から出る時に蓮は鬼人刀を持ち、菫は金棒を背負って裏山の湧水が流れている洞窟に入った。
洞窟内は適度な湿気に冷たい冷気に満たされていた。
『鬼火』と言う青白い人魂ひとだまの様な炎の魔法で、道を照らしながら進むと奥から湧水が流れてきている。
その透明度の高い小川は炎の光に照らされて淡い青色に照らされている。
絶景スポットとして有名になりそうなくらい綺麗な場所だった。
さらに奥に進むと、浅く透明度の高い青色の地底湖のが見えてきた。
「さて、この辺でやろうか。」
「まず菫が苦手な『鬼火』を出してみて。」
「分かった、見ててね。」
そう言って菫は手のひらを頭上にかがける。
すると青白い洞窟を覆い尽くしそうな程巨大な火球が出た。
「デカすぎだよ!」
「わわ! ごめん!」
「力みすぎだ。」
そう言って蓮は菫の頭上に掲げた腕を掴む。
「魔力の操作を手伝うから、まず集中して魔素の流れを感じてみて。」
「うん......なんとなく......」
「そしたら上の『鬼火』の魔力を氷を手で握って溶かすイメージで熱と一緒に少しずつ散らしていく。」
徐々に火球が小さくなっていき、やがて無数の拳程度の大きさの人魂に分裂して漂い始めた。
「これで後はすぐ消えるでしょ、感覚は掴めた?」
「はぁー、疲れたー! まだいまいちかな。」
「菫は自分の魔力をもっと感じて調整できるようになるのが目標だね。瞬間的に魔力を出せるのは電気系の魔法には向いてるけど、『鬼火』はあんな巨大なやつ2、3発撃って終わりじゃ戦闘で使えないから、まずは人の頭くらいの人魂を作る練習からだね。」
「そうだよねー。」
「大きさを調整していくつか出せるようになったら、その次に軌道を変化されたり、スピードや威力の調整を練習しよう。」
「そこまでできる人はお兄か藤二郎さんくらいじゃん」
「練習あるのみだよ」
「絶対才能だよ」
「はいはい、そんじゃあ瞑想で魔力を感じる訓練をしようか」
「えー」
「自分と空気の魔素を感じて操れるようになるためには必要だよ。これを極めて『魔力探知』が使えれば奇襲に対応したり、戦闘で応用して使えたりして便利だから。」
「お兄はどんくらいで出来る様になったの?」
「......見たらすぐ出来た。」
「やっぱ兄貴は天才だなぁ......これ私にはなかなか難しいんだよな〜、コツはなんかあるの?」
「うーん。まず自分の魔力が身体の中を流れてる感覚を掴んでから、今度は大気中の魔素を感じることかな。」
「やってみるね」
......
「ん? 菫寝てる?」
「......はっ、起きてる起きてる。」
「寝てたじゃん!」
「ごめんごめん。ついウトウトしちゃった。」
「やれやれ。」
「私のはこれくらいにして、兄貴の練習にもなんか付き合ってあげるよ。」
菫は金棒で肩を叩き、自信満々の笑みを浮かべる。
「俺はいいよ、魔法使って疲れてるだろ? それに時間が空いたら爺様に稽古をつけて貰おうと思ってる」
「うっわ! 兄貴私の事馬鹿にしてる? 私は身体動かす方が得意だし!」
「菫は負けず嫌いだから大怪我しても我慢して、危ないからやりたくないんだよ。だから今日は爺様とやりたいから一緒に行こう。」
「えー、 私も何か兄貴の助けになりたかったのに。」
「ありがとう。でも気持ちだけで嬉しいよ。」
「分かったよ、それじゃあ爺様の所に行こう!」
それから2人は外の光が差し込む、元来た洞窟の出口から森に出た。