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夜明け

3人は警備小屋に何事もなくたどり着いた。

 中に入り、数本の消えていた蝋燭に火をつける。

 藤二郎は弓矢と矢筒をドアの近くに立てかけ、金棒をその隣に置いてベットに座った。

 蓮は魔術でお湯を沸かすコンロの様な金属製の板で水を沸かす。

「お茶飲みます?」

「私は遠慮しとくわ。見廻組に報告してこなくちゃ。」

「俺も要らん。」

 そう言って藤二郎とうじろうは壁側を向いて身体を横たえた。

「分かりました。」

「すぐ戻るわ」

 そう言って菊花きっかは小屋を出て行った。

 蓮はコップにお茶の葉を粉末にして乾かした物を入れ、お湯を注ぐ。

 若草色の少し濁ったお茶が入ったコップを持ち、椅子に座る。

 ゆっくりと口をつけてひと息ついた。

「ふぅ......」


 コップをテーブルに置き、刀を脇差から抜く。

 そして鞘さやと柄えを両手で握り目を瞑って先ほどの刀の魔力を感じ、先程の感覚を思い出す。

「黒姫.....?」

 蓮は目を開けると、再び真っ暗で黒い水面の世界に入っていた。

「わざわざこの世界に入らなくても、念じるだけで会話は出来るのだぞ?」

 振り返ると先程の大人の女性の形をした黒姫くろひめが、怪しい笑みを浮かべて水面に立っていた。

「藤二郎とうじろうさんが寝てるから、ここなら煩くないと思ったんだけど.....」

「ふふふ、妾が呼んでもいない奴がここに来るのは初めてじゃ。 して、何か聞きたいことでもあるのか?」

 黒姫くろひめが蓮に歩み寄り、顔を覗く。

「俺の鬼人刀は?」

「ああ。あれはお前の『鬼喰い』で妾が取り込んだ。」

「え......?」

「そうそう、先程蓮の力を覗かせてもらったが、なかなか強力な能力を持っておるな? 【鬼才】と【鬼喰い】はなかなか良い力じゃの」

「俺の能力が分かるんですか?」

「妾を扱う者とは魂で繋がる、もはやお互い身体の一部とも言える一心同体というやつだ。 したがって、蓮の【鬼才】や【鬼喰い】等、蓮と我が会得している魔法やスキルを我等は共有出来る。」

「というと?」

「ふふふ、蓮の【鬼才】や【鬼喰い】を扱う事が出来るとは、すなわち菊一文字で斬っただけで相手から傷の深さや部位に応じてた量の魔力や能力を会得できる。低級の魔物ならばかすっただけで命すら削ぎ取れるだろうな!」

「なるほど。すごいな...」

「回復できるのは魔力だけではないぞ? 妾には傷を癒す力があるのだ!」

 得意げに黒姫くろひめが鼻を鳴らす。

「さっきのゴブリンみたいなやつか。」

「奴のは妾が協力して無かった故、回復するのに時間をかけておったが、我が本気を出せばあんなもんじゃないぞ!」

「本当に黒姫は凄いな。」

「そうじゃろそうじゃろ!」

 無邪気に喜ぶ女性の姿をした黒姫の足元からは、水面に広がる波紋が楽しそうに小刻みに大きくなっていた。

「黒姫くろひめはこの世界に来る前から、その強大な魔力と回復能力を持っていたのか?」

「いや、日本にいた時は本人が気づかない程度の筋力向上と、決して刃こぼれしないだけの力じゃった。 今の能力はこちらに来る時に与えられた。」

「神様に選ばれたの?」

「いや、こちらの世界の術者だ。それに我を呼び出した者は他にも邪悪な者を呼び出しておった。」

「何のために?」

「分からんが、何か邪よこしまな目的があるように思えた。願わくは、ああいう輩とは対峙したくないの。」

「邪な目的......」

 蓮は人差し指を曲げて唇に軽く当てて考える。


「それはそうと、魔力と筋力が数倍に跳ね上がった身体はどうじゃ?」

「ああ.......無限の可能性を感じる...」

「ふっ、そうか。 蓮なら力に飲まれて己を見失うことが無いのを祈っておるよ。」 

「気をつけるよ。」

「もう妾が気に入った者が死ぬのは見たくないからな...」

 黒姫は背中を向けてポツリとつぶやいたが、蓮には聞こえなかった。

「そろそろ戻りたまえ。あまりここにいるのは蓮でもよくない気がする。」

「分かった、ありがとう黒姫。改めてこれからよろしくな。」

「うむ。」

 雫が落ちる音が聞こえると同時に蓮の足下から広がる波紋に合わせて、闇に包まれ黒姫が見えなくなった。

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