第八話 魔竜少女とダイナー2
『OCHAME DAD』での食事は魔竜の少女を大変満足させた。
更に言うと、彼女の『OCHAME DAD』での食事は、周りの人間をも満足させた。
いつの時代、いずれの国においてもやはり子供は無条件に許され愛される存在らしい。
カウンターに置かれたパティが積み重ねられたチーズたっぷりのバーガーを前に顔を輝かせて歓声を漏らした彼女を見て、旭もみゆきもジョンもそして近くのボックスに座っていた女子大生達も顔を綻ばせた。
初めて目の当たりにするバーガーに、悪戦苦闘しながらも口いっぱいに頬張る姿は非常に愛らしいものだったし、髪を揺らしバーガーにかぶり付き口元をソースで汚しながら、ひと口ごとに感想を述べながら食べる姿はとても黄金の魔竜と呼ばれるものとは思えなかった。ただ躊躇う事なく豪快にバーガーを頬張るその姿勢は《雄々しき太陽》に恥じないものではあったが。
小さな手の割に随分と大きなバーガーだったため、中身を何度も落としそうになったり、ソースが垂れそうになってりしていたので、その都度、旭が皿から落ちる具材をキャッチしたり、みゆきが口元を汚すソースを拭き取ったりと世話をする羽目になったのは言うまでもない。ジョンが早々に紙エプロンを出さなければ、彼女の着ているシャツとワンピースは台無しになっていただろう。
旭やみゆき口元や頰のソースを拭き取るたびに、彼女は満足そうに目を細め、
「うむ、敬虔な姿勢だ、良いぞ」
と、ご機嫌な様子で足をパタパタさせていた。
不覚にも、本当に不覚にもだが、旭の父性が刺激されたのは言うまでもない。
ジョンは既にノックアウト状態で、とてもじゃないがカウンターに立つような表情をしていなかった。緩み切った顔でザジを見やる姿を見かねて百代が何度も彼の尻を蹴飛ばし、その度に野太い呻き声が漏れて笑いを誘う。
「う……む。なかなかの量だな」
残り三分の一になったバーガーを目の前に剣の表情を作りザジに、そうだろうな、と旭はコーヒーを口にしながら思う。
厚みのあるパティが四枚とその間から溢れるチーズ。オニオンやピクルスの類が挟まれていたとしても、味の重たさは相当だし人間の少女が食べる量にしては随分と大きい。
むしろよく半分以上食べんたものだと、旭は感心していたくらいだ。
ザジは小さく唸ると皿の脇に置かれていたおしぼりで手を拭き、カトラリーボックスに入れられてナイフとフォークを手にとった。彼女はややぎこちない動きで肉厚のパティを一口大に切り分け、バーガーのソースと絡めると旭へ視線を向ける。
「仕方がない。オレ自らが施しをしてやろう」
「腹膨れたんなら素直にそう言えって」
「施しだ、旭がずっとオレの皿を見ているからな。心優しいオレはその想いに応える事にしたのだ」
「はいはい。ありがとうございます」
得意げに笑みを浮かべる魔竜に旭は苦笑を見せた。
旭がザジの皿の方へ顔を寄せて口を開けると、ザジがフォークに刺さった肉を放り込んできた。
咀嚼。
染み出した肉汁と旨味は濃厚なチーズと絡み合い舌に美味さを広げてゆく。
「うむ、もう一塊いけそうだな。さすが男の子だ」
嬉々としてナイフとフォークを操り、ザジは二口目を口元に差し出した。
鼻先に突き出されたパティを見た後に視線を動かして隣の魔竜を見やる。彼女は赤い瞳を細めて楽しそうな笑みを浮かべこちらの二口目を待っていた。
催促する様にフォークを上下に動かすので、観念して口を開けると遠慮なく二口目が放り込まれる。
「隣の人も待ってるぞ、ザジ」
旭は口を動かしながらおしぼりで口元を拭くと、ザジの右側でやりとりをじっと見ていたみゆきを指さす。
彼女は一瞬慌てたが、しかし、咳払いをすると小首を傾げてザジを見た。
「私も貰ってもいいの?」
「うむ。良く食べる女はいい女だ」
「うーん、太っちゃうかも」
みゆきは苦笑しながらもザジから差し出された一口を躊躇う事なく頬張る。
彼女は頰に両手を当てて顔を綻ばせ、身悶えする様に体を揺らす。
「はぁー……ちっちゃい子に食べさせてもらうと、美味しさ倍増ですね」
「気に入ってもらった様で何よりだ」
満足そうに呟くみさきにザジが頷きながら二口目を差し出す。
う、と躊躇いを見せたみさきであるが、ザジがじっと黙ったまま見つめていると、逆らえぬ、と武士の様に呟き観念して口を開けた。
「うぅー最近、飲み会が多かったから追い討ちだなぁ。また太っちゃうよ」
「みさきちゃんよ、ここでガッツリとバーガー食べた後のセリフじゃないぜ?」
カウンターに突っ伏しながら後悔の言葉を絞り出すみさきに、洗われたグラスを拭いているジョンが苦笑を向ける。
労働の後がからいいんですよ、と唇を尖らせる彼女へ旭は視線を向ける。
特に太っている様には見えないが、女子には女子なりの理想と言うものがあるのだろう。
ただ大きめのグレーのパーカーを着ているので、体のラインが隠れているだけかも知れないが。
ジョンに諭され百代にからかわれ、カウンターにめり込みそうになっているみさきに、旭は声をかけた。
「そんなことないと思いますけど?」
「旭の言う通りだぞみさき。それほど太っている訳でもあるまいに」
「ありがとう。でもね、最近ちょっとお腹周りにお肉が……」
ナイフとフォークで残りを切り分けるザジが肯定すると、みさきが身を起こして苦笑しながら己の腹の肉をつまむ。
シャツの上から摘まれた姿を見せられてもピンとこないな、と旭はザジから差し出された最後の一口を咀嚼しながら内心思う。
隠す様にお腹を両手で抑え恥ずかしそうにみゆきは笑みをこぼす。
「いや、それでは分からんよ」
バーガーを一口、ザジがみさきのシャツの裾をめくり上げた。
ジョンが慌ててカウンターに背を向けるが旭は反応することができなかった。
柔らかそうな白い肌が遠慮なく露わになり、女性特有のくびれを持った腰と形の良いへそが旭の視界に飛び込んでくる。
「え——や、旭君は見ちゃだめ!」
「すいません!」
みゆきは顔を真っ赤にすると慌ててザジの手を引き剥がして裾を下ろす。
旭は謝罪と共に顔を逸らし、しかし、一拍おいて気付いた様にザジの後頭部をどつく。
ぐ、とくぐもった呻き声が少女から響き、彼女は反動でみゆきの胸へ突っ込んだ。
「アホか! いきなり何やってるんだ!」
「いや……すまん。つい出来心で」
「出来心で乙女の柔肌を晒すな!」
頭を摩りながら涙目でザジが振り返る。
悪かったと思っているのか唇を尖らせて不服そうだが、素直に謝罪の言葉を述べる。
「お、乙女って……ごめんね、変なもの見せて」
みゆきが苦笑しながら再度お腹を隠すので、旭は恐縮しながら頭を下げる。
ついでにザジの頭も掴んで一緒に下げさせる。
「いや……ウチのが申し訳ないです。本当にすいません」
「いいよいいよ! その、ザジちゃんも出来心だったんだもんね?」
「すまない」
頭をさげさせられたままのザジの絞り出す様な声を聞いて、みゆきは旭に手を離す様に頼む。
「旭……殴られるのは仕方がないが、もうちょっと力を加減してくれ」
「そうだよ。ザジちゃんの頭、割れちゃうよ」
「いや、その……そこはごめん」
瞳の端に涙を浮かべながら抗議するザジと、それに同意するみゆきに旭はたじろぎ謝罪する。
ザジが訴える様に強い視線を向けてくるので旭は嘆息すると、彼女へ向けて手招きをした。
「わかったよほら、すまなかったって」
「オレは丁寧に扱えと言ったはずだ」
「ごめんって。うっかりしてただけだ」
「許そう」
差し出された頭を労わる様に撫でてやると、彼女は文句を言った後に満足そうに鼻を鳴らした。
ほう、と感心した様な吐息を聞いて顔をあげると、ジョンとみゆきがこちらを興味深げに見ている。
「お前ら、親子みたいだなぁ」
ジョンが含んだ笑いを浮かべると、みゆきが同意する様に頷いた。
旭は少し眉を寄せた後、苦笑を浮かべる。
「流石に未婚で一人娘はは勘弁だなぁ」
◆□◆□◆□
旭がトイレから戻るとカウンターは随分と姦しい状況になっていた。
困惑顔を浮かべて旭がジョンを見やると、彼は苦笑を浮かべ片手を眼前へ上げて軽い謝罪のポーズを取る。
ザジとみゆきを中心として女性が三人カウンターに陣取り会話に花を咲かせていた。
背後のボックス席に座っていた人達だろうか、と旭は適当に検討をつける。
これ食べていいよ、と旭と年齢が変わらない位の女性達がフライドポテトやホットパイ等をザジの皿に載せていた。
興味深げに皿に乗せられた料理を見て、次に彼女はこちらに振り向いて皿の上の者を指さす。
「あーすいません。ウチの子が何かねだりましたか?」
遠慮がちに旭が女性達に声をかけると、彼女達は振り向いて慌てて席を立ち始めたので、座る様に促すと彼女達は照れ笑いを浮かべて口を開く。
「突然ごめんなさい。どうしてもお話してみたくって」
「余ってたパイを興味深げにみてたから、つい」
「可愛くてもう抱っこしたくって……」
旭が戻るま前に我慢できずに飛び出したのだろう。
なるほど、と旭は小さく頷くと笑みを浮かべた。
「なんだザジ、お姉さん達に餌付けされてるのか?」
「餌付けとは随分だな。これはそう……オレの尊さへの献上品だ」
「献上品ときたか。随分安上がりだな」
「心が篭っていればなんでも構わんのさ」
半笑いの旭にザジが肩を竦めると、イケメン、と黄色い声を上げて明るい茶髪の派手目な女子がザジを抱きすくめる。
「彩子、突然だとびっくりする」
「もうザジちゃんお持ち帰りしたい。心が篭っていればいい、なんてその歳じゃ言えないよー」
派手目な女子の名前は彩子と言うらしい。
「ザジ、ちょっとこれ食べよう! そして私にもハグさせて!」
「揚げた芋か。好物を持ってくるとは殊勝だな、褒めて遣わすぞ玲奈」
「年齢と好物と表情と口調のギャップが堪らん……」
ニコニコしながら芋を頬張るザジの姿を見て、玲奈と呼ばれた赤メッシュの黒髪ショートボブが天井を仰ぐ。
尊い、と拳を握りながら呟く姿は非常にシュールだ。
「お騒がせしてすいません——お父さん?」
「真弓、旭は父ではないのだ。兄? うん、違うな……」
眉尻を下げて恐縮そうに頭を下げる大人しめの格好をした茶色の髪は真美と言うらしい。
ザジが彩子に頬擦りをされ、口の中に放り込まれたポテトを咀嚼しながら難しい顔で関係を表す言葉を探す。
「父じゃなけりゃ、兄でもなんでもいいよ。保護者代理だ、保護者代理」
「そう、それでいい。保護者代理。世話になっているのは変わりないな」
旭は苦笑をこぼしながらみゆきの隣に腰掛ける。
「ごめんね旭君。壬生瀬さんと綾坂さん、大学が同じで顔見知りだったのもあって……」
「壬生瀬さんと綾坂さんが誰か分からないけど、知り合いだったら断るのも気まずいですよね」
女性には色々あると言うからな、と旭はザジを囲んで姦しい三人を見やる。
黒髪がザジを膝に乗せてご満悦の表情をしており、その姿を彩子と呼ばれた派手目の子が写真に収めていた。
ザジはスマホと写真に興味津々な様子であれこれ質問をしていた。
「ありがとう。壬生瀬さんは黒髪の子で、綾坂さんは立ってる子だよ」
「ご丁寧にどうも。またザジが何かやらかしたのかと思ったよ」
「全然そんなことないよ。ザジちゃん、凄く堂々としてて貫禄があるよね」
みゆきが三人におもちゃとされているザジを見ながらしみじみと告げるのに、旭は苦笑と曖昧な返事を返した。
齢千年を生きる異世界の魔竜で実は神様です、とは口が裂けても言えないし、言ったところで誰も信じないだろう。
真弓に髪を解かれ三つ編みにされている黄金の魔竜は、玲奈の膝の上で彩子からパイを与えられている。
王様気分だな、と旭がそれを見て苦笑を漏らすと、みゆきもその視線を追い、ザジの姿を認めて笑みを浮かべた。
「大人気だね」
「どっちかって言うと動物園の客寄せパンダですね」
「どうだ旭! 真弓がやってくれたんだ」
ザジが玲奈の膝から飛び降りて、こちらへ綺麗に一本の三つ編みにされた長い髪を見せつける。
向けられた後ろ頭がご機嫌に揺らされ、頭の動きを追う様に金色の長い髪が揺れた。
「竜の尻尾みたいで似合ってるよ、ザジ」
旭のコメントにみゆき達は怪訝そうな顔をしたが、ザジは満足そうに顔を綻ばせた。
勝気な笑みを浮かべ、旭に向き直り、腰に手を当てて胸を張る。
鼻高々、と言う言葉がぴったりだ。
「そうだろう、そうだろう! 真弓は器用であるな! 旭はこの髪型を作ることはできるのか?」
「三つ編み程度だったら大丈夫。孤児院のチビ達の髪もよく弄ってやるし」
ザジが顔を輝かせる。
「そうか。ならば毎回、真弓を呼び出さなくても大丈夫だな」
「なんてこと考えてるんだお前は。迷惑だろうが」
「迷惑なのか?」
旭は大胆を通り越して不遜な発言をするザジに釘をさす。
彼女は眉尻を下げて少しだけ悲しそうな顔で真弓を振り返ると、彼女は小さく苦笑した。
「迷惑ではありませんけど、タイミングが合えば、ですね」
「そうか、それは残念だ」
「またどこかで会った時にやって貰えばいいさ」
そうする、と少しだけ気落ちしたザジを見て、真弓は旭におずおずと提案をする。
「あの……旭さんが良ければですが、連絡先を教えて頂ければこちらからご連絡しますよ? 幸い商店街の近くに住んでいますし」
「いや、悪いですよ。髪を結ぶだけで呼び出すとか」
「タイミングが合えば、ですから。それにザジちゃんも色々な髪型、試してみたいよね?」
「オレはこの髪型だけでいいが……真弓が何かしてくれるならそれはそれで楽しみたい」
決まりですね、と真弓が笑みを作った。
「なんか……すいません。ザジの我が儘に付き合ってもらう形で」
「いいえ、そんな。私もザジちゃんと会える機会があると思うと、嬉しいです」
「ザジ、綾坂さんにお礼を言っておけよ」
「感謝するぞ真弓」
「喜んで貰えて嬉しいです」
真弓がボックス席に置かれていた鞄からスマホを取り出す。旭もそれに倣ってポケットからスマホを取り出すと、なぜかみゆきもスマホを取り出した。
旭が怪訝そうな視線を隣に送ると、彼女は照れ笑いを浮かべた。
「いや、今後も孤児院のボランティア関係でお世話になるかなーって。あと私もザジちゃんと遊びたい」
「お前大人気だな、ザジ」
「これがオレの神徳と言うものだ」
微妙にニュアンスの異なる言葉に旭は苦笑すると、スマホを操作してメッセージアプリを起動した。
まずは真弓とアカウントを交換して、次に隣のみゆきとも交換する。
「藍染坂って言う苗字なんですね」
「珍しい苗字だよね」
真弓とみゆきが画面をタップしながら口々に感想を漏らす。
「ねー旭君、ボク達もいいかな? 機会があればザジとまた遊びたい」
「あたしとも交換しようよ。ついでに男友達と一緒に飲みに行こ!」
「まぁ……二人が良ければ交換しましょうか」
メッセージアプリを起動した二人とも連絡先を交換する。
アドレス帳に増えた四人分の名前を見て、旭は小さくため息した。
「旭君ーアイコンなしって寂しないー?」
「別に気にしたことはないんで」
「せっかくだからアイコン入れよ? ザジちゃんの写真でいいじゃん——ザジちゃん、さっきのポーズやってみ?」
「良かろう」
ザジは旭の前に仁王立ちすると、スッと息をはいた。
数秒の沈黙の後、彼女はウィンクをしてチロリと小さく舌を出し両頬の真横でピースサインを作る。
可愛いを前面に押し出し叩きつけてゆくあざといポーズだ。
幼いなりに整った、そして愛らしい顔立ちなのでハマっているが、中身を知っている旭からすると滑稽でしかない。
「うん……可愛いけど、なんだろ。ザジ……頑張ったな。今に順応しすぎて逆に怖いわ」
「ぐ……ぬ……彩子が一撃必殺だと言っていたがダメだったか」
「いや、ダメではないし可愛いと思う。実際にジョンも芦野さんも壬生瀬さんもダウンしてるし」
壬生瀬さんは先ほどと同じく顔を覆って天井を仰ぎ見ており、みゆきはカウンターに突っ伏していた。
ジョンに至っては両手を合わせて静かな表情でザジを拝んでおり、キッチンから百代が、働けよ、と苦言を投げつけている。
「まぁほら、せっかくザジちゃんの写真撮ったし、拘りないなら使いなよ。送ってあげるから」
「どうも……気持ちを無碍にするのもあれなんで、いただきます」
「あ、私にもいただけますかー?」
「いいよー。みゆきちゃんだっけ? あたしとも連絡先交換しようよ」
「うわー嬉しいです。ありがとうございます」
女子達が集まって楽しげに会話をし始める。
同時にメッセージが届いたことを知らせる音がなり、旭は送られた画像をタップした。
先ほどのポーズを取ったザジの写真だ。
「良く撮れてるな」
「ザジとしてはどうよ? 複雑な気持ちか?」
覗き込んできたザジに画面を見せながら旭は尋ねる。
彼女の紅の双眸は旭のスマホの画面を見つめており、楽しそうな笑みを浮かべていた。
「いいや。異なる文化に触れるのは、いつになっても楽しいな」
「妙に馴染んでるのは気のせいか?」
「オレがどれくらい生きてると思っている。学び触れるのに妙な矜恃など些末なものだ、捨ててしまうのが一番いい」
旭はスマホを操作してアイコンをザジのあざとい写真へ変更する。
トリミングを行いちょうどバストアップになる様に設定を行う。
「まぁ、ノーアイコンよりは見栄えが良いな。何かご利益あるか?」
「どうだろうなぁ。見てて楽しくはなるのではないか?」
旭は寝転びながらメッセージアプリのアカウントを見て笑みを浮かべる自身を想像し、あまりのシュールさに苦笑を浮かべた。
適度に楽しませてもらうよ、とザジの頭を撫で付けると、彩子から声がかかる。
「ねー旭君、どこ大なの? 合コンしようよ」
「あーそれなんですけど」
「ですけど?」
「高校生なんでお酒はちょっと無理ですね、ごめんなさい」
苦笑と共に断りを入れると、彩子が絶句した。