表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我が家の魔竜のご近所事情  作者: 鹿嶋臣治
第一章 黄金の魔竜、異国に立つ
1/14

第一話 黄金の来訪者1

 屋根裏部屋で大爆発が起きた。


 いや、正確には違う。

 屋根裏部屋で爆弾でも爆発したかの様な、腹の底を嫌に震わせ響く轟音が聞こえ、その直後に不安になるレベルで家が揺れた。

 天井から細かい埃も落ちてくると言う、ありがたいおまけ付だ。

 さらに追い討ちをかける様に、甲高い少女の声で想像を絶する位に口汚い内容の、まるで世界を呪い祟り倒すことも辞さないと言う物騒な気概に溢れた、罵り詰る言葉が聞こえてくる。

 ついでに飛んだり跳ねたりぶつかったり倒れたりする音も続く。

 何が起きているか想像もつかないが、地獄の様な有様は理解できた。

 いつもこうだ、と優雅な朝食の時間に別れを告げる様に珈琲を一口。

 この家では家主のせいで頻繁に、と言うわけではないが不思議なことが度々起こるが、今朝の屋根裏部屋から響いた爆発音は近年稀に見る不思議だとも思う。


 朝飯を食べてたら屋根裏部屋から爆発音が響いてガキの罵倒が聞こえてきた。


 下手なコメディドラマよりも胡散臭くて鼻で笑われる内容に思わず苦笑が漏れる。

 嫌な予感しかないし関わりたくない気持ちが胸に溢れて留まることを知らないが、しかし事態をこのまま放置していても、更に良くない方向に転がっていくだろう。

 カップの中の珈琲を飲み終える頃には、屋根裏部屋のドタバタも治っていた。

 重くて上げたくない腰を無理やり上げリビ、ング兼ダイニングの部屋を出て軋む古い階段から二階に上がり、廊下の突き当たり、壁に立てかけてある梯子を上る。

 何かがドタバタと跳ね回っていたからか、舞っている塵と埃に咳き込む。

 そろそろ掃除もしてやらんとな、と意を決し天井を押し開く様にして扉を開けると、所構わず踊る様に舞う埃に更に顔をしかめた。


 小さな物置として化している屋根裏部屋は凄惨たる有様。

 いつも薄暗い小部屋はバッチリと屋根が抜け落ちており、しっかりと朝の日差しを取り込んでいた。

 笑ってしまいたくなる現実を突きつけられ、そして後片付けの大変さを憂いて思わず顔をしかめた時、朝日を背にして立つ人影を見つけた。


「おい、誰だ?」


 思わず尖った声を投げかけると、気持ちの良い朝の日差しを背に人影はこちらに振り向いた。

 その姿に息を飲み、思わず見惚れる。


「オレの名前はザジ。南の大陸にて“雄々しき太陽”の名で信仰を集める、大陸と大空の覇者たる黄金の魔竜だ」


 八重歯が覗く勝気な笑み。

 燃える炎の様な真紅の瞳。

 太陽を閉じ込めた輝きを持つ金色の長い髪。

 健康そうに日焼けした張りの良い褐色の肌。

 腕を組み、胸を張り、瓦礫の山に仁王立つ、夏の太陽の様な小柄な()()の少女。

 

「何が信仰だ馬鹿野郎! 人様の家を壊した挙句に全裸とはいい度胸だ!」


 腹の底から少女に向かって吠える。

 それが藍染坂旭(あいぜんざかあさひ)の日常をぶち壊した小さな侵略者との出会いだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ