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6・幻への挑戦を行う

 火星搭載の一号機に関しては火星の現状出力を考慮して性能を算出したが、どうやら目標値には達しないことが判明してしまう。まあ、史実通りだ。


 対して金星搭載の二号機については現行の1300馬力型でも600km出せるという予測が出ている。


 一号機開発に手間取るのに対して二号機は順調に開発が進んだ。初飛行は昭和十五(1940)年十二月に早くも行われるという異例のスケジュールで進められた。


 そして、試験が本格的に始まると予想通りに600km超えを記録し、最高速度は606kmだった。未だに火星搭載の一号機は苦労していたが、ここに至って中止が決定した。延長軸だのなんだの専用で作ったがうまく行かないのも史実通り。性能も二号機に届きもしなかった。

 二号機の試験は順調に進んでいるのだが、実は搭載機銃が決まっていないので本当の意味での試験が行えていない。


 何を搭載するかという事で紛糾している原因は、MG131を制式化した九八式十三粍固定機銃を採用するという当初案だったのに対し、四発爆撃機への対応という事で20mmの採用が俄かに持ち上がったためだ。


 しかし、規格統一という事で13mm機銃を陸海軍がともに採用した事から20mmも規格統一をという話になったのだが、これが大きな問題となった。


 陸軍は胴体に装備することを前提としているため、どうしてもプロペラ同調機構を必須としているが、海軍は翼銃として主翼への搭載を前提にしているので既に購入しているエリコンを使いたいという思いがあってなかなか決まらなかった。なにせ、エリコンはその構造上、同調装置に適合しない。

 結局、20mmをどうするのかがまるで決まらない中で十四試局戦の開発が行われていた。その為、まずは13mm6丁を装備した形での開発が決まり、それに合わせて機銃レイアウトを決めることになった。


 実は、Fw190を意識しすぎた結果、胴体装備は不可能になっているため、米機のように主翼に3丁づつ並べるという配置を採用することになった。


 参考にしたのがFw190や鍾馗であったため、十四試局戦も全長9mに満たない機体となり、翼幅も10m足らずしかない。翼面積を稼ぐ気もなく、翼面積16㎡で戦闘重量3tに達するので、翼面荷重は考えてはいけないレベルとなっている。ただ、金星の改良が進めば1600馬力が見込めるので、速度は630kmが期待できるかもしれない。


 制式化を待たずに俺はその開発から離れ、新たな機体を手掛けることになる。


 十四試局戦、後の雷電が初飛行を迎えた頃、海軍から新しい艦戦の開発の内示が届いた。


 新たな艦戦に求められたのは時速600kmどころか640km近い要求だった。搭載エンジンとして想定されているのは、当然だが、金星を18気筒化したモノだ。この時点ですでに試験を終えており、海軍には翠星として採用されていた。

 ただ、時代的な事もあって出力は史実のハ43ほどは無い。現状は1850馬力だ。今後の改良で2400馬力は可能だろうとは思われるが、今はそこまでの出力は見込めない。


 これが2400馬力のエンジンならば、冒険して烈風そのものに仕上げるのもありだったかもしれない。

 そもそも、烈風の巨大さがやり玉にあがることがあるが、同時代の米機だってデカイ。

 F4Uコルセアだって全長10.2m、翼幅12.5m、翼面積29.2㎡にもなる。F6Fでもそんなもんだ。烈風が特段にデカイ訳ではない。


 が、それらの機体が2000馬力のエンジンにモノを言わせているのに対し、翠星は少々非力だ。


 そこで、思い切った策で出ることにした。


 そう、零戦の寸法に翠星ぶっこんでしまうってわけだ。その考え方で作られた機体が米国にも存在する。あのF8Fがそれだ。あれは全長8.5m、翼幅10.8m、翼面積22.7㎡という機体だ。ならば、同じことをやればいい。

 俺の作ったゼロ戦が全長8.9m、翼幅11m、翼面積21.6㎡だが、翼形状を工夫して翼面積を26㎡程度に出来れば、翼面荷重も160少々に抑える事が出来る。まあ、海軍の要求値には届かないが。


「これはどういうことだ?」


 海軍に見せた資料では、翼面積を零戦仕様のまま産出しているので175にもなっている。いや、それすら実際には軽量機体を前提にしているので、本当は180を超えるんだが。


「大型エンジンを装備するこれからの機体はこの程度の数値になるのは仕方がりません。もし、翼面荷重に拘るのであれば、艦攻に機銃を付けて格闘戦を行わせる必要があるでしょうが、それがお望みですか?」


 挑発的にそう指摘してやった。なにせ、連中の要求を満たすには、史実の烈風が必要だが、現状でそんなことをやれば、史実を繰り返すだけになる。


「しかしだ、零戦並の空戦応力は必須と示したのを忘れているのか?」


 杓子定規にそう言ってくる。


「九六艦戦よりも翼面荷重が高く、旋回性能も悪い零戦が圧倒していた事実をお忘れでしょうか。零戦の1200馬力に対し、十六試艦戦は1850馬力です。零戦は近いうちに1400馬力に向上しますが、こちらは2000馬力超えが将来的には見込まれます。600馬力以上の差ですよ。零戦と九六艦戦でもそうでしたが?」


 そう言うと相手は何も言えなくなった。これまでどうやって前世代機を上回って来たかを見れば一目瞭然だ。何も言えるわけが無い。

 そもそも、烈風の要求値が異常なのは空戦性能ばかりではなく、高出力で重い機体であっても狭い甲板からカタパルトの様な補助なく短距離発艦できることが求められたからでもある。当時、大型空母を失い、改造空母や中型空母を量産していた海軍にとって、デカくて滑走距離が必要な艦戦では積めるフネが無かったんだ。そのため、改造空母や中型空母に積める艦戦を求めた結果があの翼面荷重だったとも言われている。

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[気になる点] 速さ=機動力? 最近速さ=機動力と言う定義ができたんだけどどう思うだろうか?
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