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10・万能機を造れって、それは無いでしょう!

 中島では疾風を作っている様だ。きっと川西でも紫電の開発を行っているだろう。アレの元は強風だし、エンジンは翠星だ。空力的な事を望むなら誉に変更してくるかもしれん。


 そして、俺の許に提示された内容を見て笑ってしまった。


「何ですか?これ。速度700km、まあ、良いでしょう。やってやれんことは無いです。航続距離3500km。零戦並かそれ以上と。大型機は確実ですね。爆弾搭載量1t?!これ、本気ですか?」


 さすがに意表を突かれた。まさか、米機並みの爆撃能力を求められるとは思いもよらなかった。おいおい、これ、流星も彗星も要らなくなるんじゃね?


「本気だ。爆撃機材の開発状況にもよるが、ゆくゆくは空母艦載機を一本化するという考えもある。コレならば、艦爆、艦攻に代わる万能艦載機が出来るのではないのか?」


 真顔で何言ってんだコイツ。確かに、米国でも似たような構想があった。あっちはR4350という化け物エンジンを装備した化け物を試作しているが、スカイレーダーの完成で制式化されることなく終わっている。

 まさか、アレを俺が作れと?さすがに止めて欲しいが、面白そうではある。


「これは、爆弾さえ積めればよいと考えて良いのですか?魚雷を積めと言われると話は違ってきますよ」


 そこの確認は必要だろう。爆弾を積むだけなら問題ない。が、モノが魚雷となると話は別だ。


「さすがに魚雷までは求めない。艦載機の一本化は極端だと私自身は思っているのでね」


 そう言って提示したのは、先ごろ陸海で統一された統一爆弾の搭載要求量だった。


「六番10発、十番9発、二十五番3発、五十番1発ですか。ん?十番9発?」


 十番というのは陸軍の陸用爆弾を海軍でも使用することになったので生まれた新しい爆弾だそうだ。それを9発というのはどういう事だろうか。


「それは増槽なしの最大量だが、何か問題があったかね?」


 十番爆弾9発というのがいまいちよく分からん。んん?あ・・・


 そういえば、烈風の爆弾搭載量はそれなりにあるので、胴体下に十番3発積めるラックを開発してたよ。あれを胴体と主翼に付けるのか?或いは、搭載か所を増やせと。


 さすがにこれには唖然とした。違う意味で無い物ねだりして来やがったよ、連中。


「分かりました。艦攻に機銃を付ければよろしいのですね?」


「だから!戦闘機に爆弾を積めと言ってるんだ!!」


 知ってるよ。ただ、デカくなると言ってるのがそこまで気に食わんのか?


 とは言え、時速700kmを出しながら、爆弾も積める大型機。なんとも欲が深すぎる話だ。


 そうは思ったが、投げ出す気はない。


 翠星を搭載して1tの爆弾を積めて、航続距離3000km超という機体となると、やはり空冷P51だろうか?


 そう思いながらP51をモデルに設計を行ったのだが、それは艦戦としてはまるで使えそうになかった。確実に艦上機としては落第だった。


 そうかといって、史実烈風を多少小型化した機体にしても、零戦やこの世界の烈風の方が優れている。作るだけ無駄と言って良いだろう。


 そんなことに頭を悩ませていると、ソロモンからじりじり後退していく中で、零戦の劣勢が語られるようになり、ようやく烈風に生産に軸足を置くことになったそうだが、13mm6丁型であって、20mm型ではない。イマイチ評判がよろしくない原因はそこではないだろうか。


 そのせいもあってか十八試艦戦の要求は20mm機銃4丁だった。


 あれこれ考えて見たが、どうやっても性能が多少上がった史実烈風かF4Uあたりの機体にしかならないことがシミュレーションで示されてしまう。

 このディスプレイ、これまでものすごく役に立っているが、今回は実機が飛ぶ以前に全ての結果が要求値を下回るモノとして示され、どうしたものかと頭を悩ませている。最高速700km超えなんて無理なんじゃね?それか、爆弾の積み過ぎか・・・・・・


 半ばあきらめていた。


 そんな時に新型エンジンがようやく実用化出来たという話が聞こえてきた。


 そう、この世界では史実のハ43に当たる翠星が先に開発されていたので、ハ42に当たるエンジンは開発されていない。

 そもそも、翠星が万能すぎて必要性すら疑問視されていたというのもある。しかし、どうやら爆撃機用にさらに余裕のある大出力エンジンが欲しいと陸軍の重爆や四発大攻用に開発が行われたという。

 このエンジン、史実では火星の18気筒化であったが、この世界では翠星の排気量を拡大する形で開発された。

 そのため、史実のハ42よりは排気量が幾分小さく、史実のハ44程度である。そして、翠星の構造が優秀で燃焼効率も良い事から、すでに2300馬力を達成しており、過給機の開発次第では2600馬力近くが狙えると意気込んでいるようだ。重量は1tを軽く超え、直径も1300mmを超えているが、いまさらそんなことは問題ではない。


 ようやく搭載エンジンが見つかったことで、コレを搭載した機体を設計した。全長10m、翼幅12m、翼面積27㎡という機体寸法になった。速度は何とか700kmに達したが、航続距離3000kmには大型増槽を必要とする機体となっている。戦闘重量はとうとう5tを超えてしまい、爆装の場合は6tに達することになる。


 ただ、機体が初飛行した昭和十九(1944)年七月の段階ではすでに航続力がどうしたという要求も無くなっていた。カタパルトも何とか完成しており、6tという重量は何とか射出可能な上限となっている。艦攻の流星もだいたい同じだし、運用上の問題とはならないらしい。いや、すでにマリアナで主力空母無くなってんじゃないの?まだ耳にしてないけどさ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 海軍の無茶振りがドイヒー。 そりゃ発動機の馬力に余裕が出来ればあれだけど、それにしたって限度ってもんが......。
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