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文芸部の活動

ピピピピ、ピピピピ…カチッ


「ん…もうこんな時間か」


時計を見るとすでに夕方の5時を過ぎていた。12時くらいに寝たから、大体5時間は寝ていたことになるな。夜間部の始業時間は8時。まだまだ時間はある。


「っと、そうだ…薬、薬…」


机の引き出しから可愛らしい布にくるまれた薬を取りだし、一粒口にする。これが結構苦いので、口の中に薬の成分が広まる前に水で流し込む。


「ぷはっ…。ふぅ…」


一週間もすれば薬を飲むのも習慣になった。気づけばこの薬がない生活が考えられなくなっていた。

セラからもらった魔力を抑える薬の効果はてきめんで、呪いの影響はだいぶマシになっていた。多少の視線は感じるけど、周りの人間が迫ってくるなんてことはなくなった。フードなしで往来を歩けるなんて何年ぶりだろうか。思わずスキップしそうになったけど、周囲からの視線を気にしてやめた。


(これも全部セラのおかげだ)


何か恩返しがしたいけど、魔法なんてついこないだまで信じてなかった僕にできることなんて限られてる。一体僕はセラに何ができるだろう?


「…そういえば」


ふと部長の言葉が気になった。


『この子もセラの依頼人みたいなもんだよ?』


「あれどういう意味なんだろう…?」


ボクはいつセラに依頼をしただろうか。


「…まあいいや。聞いてみよう」


ボクはベッドから立ち上がり、着替えて夕食の準備を始めた。




放課後。文芸部の部室の扉を開けると、そこは本でごった返していた。


「こことか良いんじゃない?」

「…ここからだと遠すぎる。別の場所が良いだろう」

「飛べば距離なんて関係ない」

「途中で魔力切れ起こしたらどうすんのさ」


セラを中心に他の部員たちが本をペラペラめくっている。近くに落ちてた本を拾えば、それは魔法絡みの植物図鑑だった。あまり馴染みのない名前の植物がずらりと並んでいる。

本を踏まないように気を付けながら、入口から一番近くにいた副部長に話しかける。


「これは何をしてるんですか?」

「あ、来てたんだ」

「こんばんはー神楽くん」

「こんばんは。で、何してるの?」

「絶賛部活動中だよ。言ったろ?私達は見習いの魔者を支えるのが仕事だって」

「…ボクにはひたすら散らかして雑談してるようにしか見えませんが」


すると部長はチッチッチッ、と口を鳴らして指を振った。


「わかってないなー。全然わかってない」

「…わかるも何も、神楽は入部したばかりなんだ。知らなくて当たり前だろ」

「あー、そういえば説明してなかったっけ?セラ、説明したげて」

「はい!えーとですね、わたしは見習いの魔法使いで、一人前の魔法使いを目指してるんです」

「そんな感じのこと言ってたね。それがどうしたの?」

「わたしが一人前になるために、おししょーからある課題が出されてまして。その課題というのが、一年間で依頼を100件達成するってことなんです」

「その課題を達成できるよう、サポートするのが私達の役目。今こうして本棚をひっくり返してるのもその役目の一つ」


途中で副部長に遮られ、セラは驚きつつも頬を膨らませた。


「わたしがまだ話してる途中ですよ!」

「ごめん」

「まあ良いですけど…」

「それじゃあ今回の依頼が植物に関係してるってこと?」

「そ。これこれ」


そう言って部長は、図鑑のあるページを僕に見せた。そこには月見草という名前の植物が載っていた。


「月見草?…って、普通にありますよね。魔法関係あるんですか?」

「あるある。りーくんが言ってるのはただのツキミソウ。私らが探してるのは月見草さ」

「…違いある?」

「大アリですよ!わたしたちが探してる月見草は、月の周期に合わせて光り方や姿が変わる植物なんですよ」

「え、すごいねそれ。見てみたいな」

「なら今日は神楽が行く?」


何気なくボクが言った言葉に、副部長は耳ざとく反応した。


「え?行くって何ですか?」

「あー良いかもね。りーくんまだ未体験だし、経験値積ませないと」

「…えっと、つまりどういうことですか?」


木場さんに話を振ってみる。


「…依頼達成のサポート役として、必ず誰かがセラについて回るんだ。…神楽はこれが初めてだ。そう大変な依頼でもないし、ちょうど良いんじゃないか?」

「そゆこと。サポート役決まったなら早く月見草がよく見つかりそうな場所探さないとねー」

「あぁ、なるほど…。でもそれなら、本よりネットで調べた方が…って、何ですかその目は」


部長は白けた目で僕を見ていた。


「甘いなー。こういう時こそ文芸部らしく本で調べるのが良いんじゃないか」

「それにネットじゃ出てきませんよ。そんな簡単に出てきたら、魔法の存在はもっと知れわたってます」

「まぁ、それもそうか…。で、どこに採りに行くか決まりました?」

「ここは?学校からもそう遠くない」


副部長は地図にマークをして僕達に見せてくれた。学校からマークした場所まで指でたどってみると、たしかにそんなに遠くはないように思う。


「じゃあそこで良いんじゃない?セラ、異論はある?」

「いいえ、ありません。それじゃあ早速行きましょうか、神楽くん」

「うん」


ボク達は部長達に見送られながら部室を出ていった。

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