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文芸部の審査②

文芸部に仮入部した翌日。どこから情報が出回ったのか、ボクが文芸部に仮入部したという話はすっかりクラス中に知れわたっていた。


「聞いたッスよー!文芸部に仮入部したって!」

「なんで知ってるの?」

「セラが教えてくれたッス」

「キキはセラと仲良いの?」


少し意外だった。ボクら2組の教室と、セラのいる5組の教室は離れているから、交流はそうないものだと思っていたから。


「この学校は人数少ないから、クラスとか関係なく仲良しなんだヨ。クラスごちゃ混ぜで行事やることも多いからネ」

「カコ、聞いてたのか」

「そりゃあ隣ですから」


にやにやと笑うカコは、心底楽しそうに見える。


「そう言うリヒトこそセラと仲良さそうだよネー。どういう関係?」

「ボクとセラの関係?」


ボクとセラがどういう関係かなんて考えたことまなかった。友人…にしてはまだ知り合ったばかりだし。


「うーん…恩人?」

「あ、わかるッス!セラって困ってたらすぐ助けてくれるし、感謝してもしきれないッスよね!」

「キキはセラに頼り過ぎだけどネ。もう少し物を壊さないよう気を付けたら?」

「うっ…が、頑張るッス…」


色々話しているうちにHRの時間になり、ボクらは教卓に体を向けた。




『すみません、今日は部活に行けません!』


放課後。スマホをいじればセラからメッセージが届いていたことに気付いた。別にいつも一緒に行こうと約束してたわけでもないんだから、謝らなくていいのに。


『わかった。今日は一人で行くね』


メッセージを返して、ボクはまっすぐ部室に向かうことにした。




「…あ…」

「?」


文芸部の部室の扉を開けようとした時。横から声が聞こえてきた。声のした方に目を向ければ、金色の瞳が薄暗い廊下で光る青年が、ボクを見ながら立っていた。


「…誰だ?」

「いや、こっちの台詞なんですけど…」

「…なぜそこに入ろうとしている?」


目が細められ、むき出しの敵意が向けられる。今まで向けられたこたのない感情に、ボクは冷や汗をかきつつ何もすることができなかった。


「…答えろ。…何をしようとしてる?」


青年はゆっくり歩を進め、ボクとの距離を詰めてくる。後ずさろうにも、まるで足から根が生えたみたいにその場から動けなくなったボクは、ただ冷や汗を流すしかなかった。

そうこうしてるうちに、青年はボクの目の前に立った。ゆっくりと顔が近付けられ、手が伸びてきた時だった。


「こーら。なに後輩怯えさせてるのさ」


日比野さんが現れ、青年の頭を軽く叩いた。青年はボクから視線を逸らし、顔を日比野さんに向けた。


「…だって、知らないやつが入ろうとしたら止めるだろ」

「気持ちはわかるけどやり過ぎ。この子もセラの依頼人の一人みたいなもんだよ?丁重に扱わなくてどうすんのさ」

「…む…」


小突かれて青年は、渋々といった様子で僕から離れ、頭を下げた。


「…すまなかった」

「あ、いや、気にしてないんで。それより日比野さん。もしかしてこの人が…?」

「ん、そーだよ。昨日いなかったもう一人の部員がこいつ。ほら、自己紹介」


青年は頭を上げ、またまっすぐに僕を見つめた。


「…木場雅成。狼男だ。よろしく頼む」

「神楽理人です。よろしくお願いします」

「…」

「…」

「…」

「…なんで黙ったままこっちをじっと見てるんですか?」

「マサは少し口下手なところがあってねー。ま、気にしないでやってよ。ところでマサ、どう?彼」


すると木場さんは、ボクの首筋に顔を近づけた。


「え、ちょっ…な、何ですか!?」

「そのまま動かないでねー。これも大事な審査の一つなんだから」


木場さんはしばらくすんすん、と鼻を鳴らしていた。ボクはどうすればいいのかわからず、なされるがままになっていた。


「…うん、問題ない」

「…い、今のは?」

「マサは狼男だからね。鼻が良いんだ。悪人か善人か、なんてこともわかっちゃうくらいにね」

「…神楽は善人だ。俺が保証する」

「まあ昨日色々見たからわかってるけどね。それじゃあ改めて、ようこそ文芸部へ!歓迎するよーりーくん?」


ここでボクは、周りを見てさっきから気にしていたことを口にした。


「…これ、廊下でする必要あります?」

「「ないね/ないな」」


いつしか集まっていたギャラリーの、こそこそとしたキャーキャーという声に、ボクは大きくため息を吐いた。




一方、セラはというと。

「ニーア=スリーザード」と登録している電話番号に電話をかけていた。


「もしもしおししょー!どうですか?ミストさんと連絡とれました?」

『うん、何とかね。今日なら大丈夫だってさ。行けそう?』

「はい、大丈夫です!」

『何かわかると良いね。この件に関しては、私は力になれそうにないから』

「おししょーは悪くないです!人には得手不得手があって当然ですから!ミストさんに話を通してくれてありがとうございます。では!」


電話を切り、スマホをしまう。頭の中で呪文を唱えたセラは、紙に地図を浮かび上がらせた。


「よし、行きましょう!」

ギャラリーがキャーキャー言ってたのは、理人と木場がBLのワンシーンみたいな光景になってたからです。人外や能力者だって腐ってる。


ちなみに理人は黒髪赤目の美少年、木場は金髪金目のイケメンという設定があったりします。

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