プリンセスは逃亡した 共通① 実はお姫様でした?
私はおしゃれなカフェで、お気に入りのエイラティカの音楽を聞きながら。
「アニメの主題歌でさ…」
「えー!マジで~買わなきゃ!!」
ギャルの会話を雑音として耳にした。
近々放送する新アニメ“王子はサイキン系”の主題歌を歌うのが、人気アイドルグループらしい。
一般向け歌手は、アニメとは無縁の人がにわかるから起用しないでほしい。
「“悪魔”の一巻買いっと」
アニメで好きになり気に入ったものは原作が漫画でもゲームでもつい手がでてしまう。
元は漫画から、であったがしっかりとアニメを見たときに、漫画と違い色があり、声があって動くことにひきつけられたから。
「おはよー」
「おはよう」
―――何気無い朝、通学中に執事のコスプレした人が道を歩いているのを見かけた。
「あなたは…祭林麻里也様!」
いきなり声をかけられたと思ったら様付け?
随分役になりきっているらしい。
なんで私の名前を知っているんだろう。
「あなたは野菜の国の姫です」
私いま執事のコスプレしたイケメンに、お姫様って呼ばれたわけ?
…野菜の国なんかあるんだ。
笑いを堪えるのに必死で返事ができない。
「なりきってますね」
としか言いようがない。
「プリンセス…」
「ってプリンセス!?」
少女漫画ならともかく、ドッキリならベタとは言えないドッキリだ。
執事ならお嬢様呼びのほうが、まだわかる。
姫かお嬢様、ならまだお嬢様のほうにリアリティがある。
エイプリルフールで死んだフリをされたほうがマシなくらいつまらない。
「その反応…嬉しくないみたいだね」
「どうせなら果物の国がよかったなあ…フルーツのほうがかわいいし?」
あるわけないけど…野菜があるならあっても――――――。
「うんうん、野菜だからねーダッサイよね」
ていうか、誰だよあんた。
「果物の国なら隣国に存在しますが…」
「フフッ我々の同盟国には相応しくないほど、自由すぎる国ですからねぇ」
「とにかく城へ来てください」
強引に車に乗せられてしまった。
高級車なんて初めてで、緊張してしまう。