お姫様のわがまま
夢の国のお姫様の続編になります。
気楽に読んでくださればとても嬉しいです。
突然のことではあるが、わたしの姉は夢の国のお姫様になった。
夢の国では国の中で1番夢を持っている者が王となる。姉がお姫様になったのは、姉がお姫様がいい、とわがままを言ったためである。
わがままは小さい子が言うから可愛いのであって、力あるものが言うわがままはたまったものではないとわたしは常々おもう。
ここ3ヶ月の食事が姉のワガママでブルーベリージャムになってからはなおさらである。おかげでわたしは嫌いだった野菜を食べられる喜びにないた。野菜万歳。健康的な食事万歳である。
姉はある日かっこいい執事に絵本を読み聞かせてもらいながら呟いた。
「わたし、恋がしたいわ。」
わたしは耳を疑った。鯉がしたいとはいかなことか。姉は鯉になりたいのだろうか。はたして人間は鯉になれるのだろうか。わたしは、その願いを叶えられるのか。気が遠くなりそうである。
「姉様はどんな鱗がおこのみで。」
「うろこ?妹は何をいっているの?」
姉はキョトンとわたしをみた。わたしもキョトンと見返した。
「わたし、この絵本のように恋がしたいのよ。」
姉はそう言って絵本をさす。
「失礼します。」といってわたしはかっこいい執事の読み聞かせている絵本を覗き込んだ。全体的にピンク色の絵である。どうやらお姫様と王子様が抱き合っているらしい。これは、恋愛だろうか。
「恋、ですか。」
「ええ、恋よ。」
姉はうっとりと微笑む。
恋というものはしたいと思ってできるものなのだろうか。しかし、家臣であるわたしはなんとかして叶えるしかないのである。お姫様の夢は叶えなければならぬ。それが夢の国の絶対なのだ。
「かしこまりました。」
それからわたしは国中におふれをだした。
『お姫様の恋人、求む』
そうして城にはたくさんの恋人候補たちが並ぶようになった。
列の一番最初は花屋の親父であった。
「お姫様!俺と一緒に愛の逃避行でもしてみっか!」
ガハハと親父が笑う。
「まあ、豪快ね。」
姉が微笑んだ。
「お姫様も大人の恋がしてえだろ。俺が大人にさせてやんよ!」
親父が鼻の下を伸ばしながら言う。
「わたし、下品な話はいやよ。絵本はきらきらしてるもの。」
姉が顔をしかめていう。
「おかえりください。」
親父にはお帰り願う。そもそも親父には奥さんがいるだろう。なぜここにきてるのだ。
2番目はお菓子好きなふとっちょだった。ブルーベリージャムのせいかまだ紫色をしているため、まるでブルーベリーが服を着ているようだ。
「僕、甘いもの好き。お姫様のブルーベリージャムの山、とっても嬉しかったよ!いっぱい食べちゃった!僕たち気があうんじゃないかな?」
ブルーベリージャムと聞いたからか少し姉の顔色が悪くなる。
「わたし、ブルーベリージャムの話聞きたくないわ。それに紫色の恋人はいやよ。」
「おかえりください。」
人よりブルーベリージャムを食べてくれた彼にはとても感謝している。あとで菓子折りを送ろう。
「俺と結婚してくれ!」
「気がはやいわ。」
「お姫様のことなんか全然好きじゃないんだからな!」
「わたしのこと好きな人と付き合いたいわ。」
「僕は世界で一番美しい。僕と付き合えたらしあわせだよ?」
「執事の方がかっこいいわ。」
熱血も、ツンデレも、ナルシストも、他にも様々な人が来たがダメだった。ついにおふれは国外にも知られることとなった。
「やあ、お姫様。僕は宝石の国の王子。この宝石とても綺麗だと思わない?お姫様の白い肌によく似合うよ。」
「まあ、ほんとう?うれしいわ。」
宝石の国の王子は宝石を売りつけるだけ売りつけてかえった。
「俺は火の国の王子!うおぉぉ!」
「まあ、燃えてるわ。」
火の国の王子は城が燃えかけたので帰ってもらった。
他にも、気難し屋の国や、植物の国、眠りの国や猫の国などの王子もきたが、ことごとくダメだった。
どうやら姉の初恋はまだまだ先らしい。
読んでいただき、ありがとうございました。