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S3フラワーズ  作者: 青井けい
第一章 何でもありな何でも屋
4/48

4.  総英雄長

「じゃーねぇー、ボス!」

「ばはーい、ボス!」


 元気に手を振るのは、工業学科の英雄長のアンドロイドたち。


「待った、寮まで送っていくよ」


 ロボットでも女の子だ。二人だけで夜道を帰らせるのは心苦しい。

 二人は尾を揺らすと、片腕を上げて交差。大きなばってん。


「遠慮しなくていいぞ。僕もちょっと歩きたい気分だし」

「そんな、困るです、ボス」

「マイハウスには、有機体にお出しできるもの、何もないかも?」

「上がったりしないって。送って行くのは寮の玄関までだ」

「「ふにゅうー」」


 ぶんぶんと首を振って拒否された。

 声色を聞けば、遠慮ではなく、単に迷惑がられているだけだと知れた。

 男のエチケットも成り立たない時代である。


 しかし声色で情動を判断できるあたり、流石はアンドロイドといったところか。

 ちょうど百年前に開発された人型ロボットの性能は、それまであったAI搭載型ロボットと比べても頭一つ、二つは抜けていた。


 人工知能には、多数の電子装置を複合した『3Dマテリアルモデル』なる複合基盤が配され、設計段階で付加された性格をもとに経験、学習を合理化、行動論理に組み込むことで人格を形成していくという。


 とても人間らしいロボットということだ。はちゃめちゃっぷりは、幻界種の種族としては中の上くらい。


「じゃあ気をつけて帰れよ。知らないやつについて行ったりするなよ?」

「「えー? どってー?」」

「女の子は夜道には気をつけなきゃ。好き者だっているだろうしさ」

「「いやーん!」」


 そんなこんなでロボット姉妹とは別れて、茂来武彦もらいたけひこは一人で歩き出した。

 戦闘が長引いたせいもあり、時刻は十九時をこえている。

 健全な若者なら寄り道をせずに家に帰るか、当て所なく夜の街をぶらつくか、どれにしても結局は〝らしい〟行動のように思える。


 財布の中身が薄っぺらいやつの足先は、自然と寮へ向くのだが。


 今日の『悪行秘密結社・研究会』の活動は、未来学園の北西部で起こった。学内に設けられた四校では、工業学科の校舎がもっとも近い。

 敷地面積は町に匹敵するものの、名目上は全体が学園。住宅区も工業区もひっくるめて学内となる。そんな未来学園はあくまで、


『各学科を代表する英雄長を始めとして、人々を率いるリーダーを養成し、競争相手の悪行秘密結社・研究会では、情報戦におけるノウハウや集団社会の全体主義的なモラルを学ぶことができる私立高校』

 を、標榜ひょうぼうしているのだった。


「はぁ」


 とぼとぼ歩きつづけて三十分弱。夜道はまだ学生でにぎわっている。

 行き交うグループは人間が多いが、ちらほらと人以外の姿も見て取ることができた。

 人間と、幻界種。人間に見えても中身は幻界種だったりするから、簡単には区別が付かない。


(そんなことはどうでもいいんだ)


 考えるべきなのは英雄長V‐Ⅲの愛莉も、今頃は女子会を楽しんでいるということ。

(ちくしょう!)

 いらだち紛れに空き缶を蹴飛ばすと、思いの他にやかましい音を立てて転がった。

 総英雄長なんてろくなもんじゃない、と武彦は思う。

 ヒーローの敵にノイローゼが含まれているとは聞いていなかった。


「……どうしてこうなったんだ」


 独りごちて、そして独りで笑った。どうしてって?

 理由は決まっている。大変な紆余曲折うよきょくせつがあった。

 問題は、その紆余曲折の大半が押しつけられた結果ということだ。


 元から断れない性格ではあった。小学生には何でも屋さん、とあだ名をつけられ、中学生には便利屋・茂来支店。

 高校に当たる未来学園では、晴れて『総英雄長』に仕立て上げられた。


「遊びにも誘われない。それが英雄」


 英雄でも学生。

 友人付き合いに奔走する愛莉の気持ちも、少しはわかる気がした。

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