救出
包囲しかけたところで、再び、飛び出して行く鳥もどき……通称『銀狐』に、その後を追うシルフィードの搭乗者たちは舌打ちし、あるいは、歯噛みした。
唯一の例外は、指揮官のギリアムだった。
なんとなく、先ほどまでの翻弄するような動きとは異なる殺気のようなものを感じたのである。
「気を付けろ。仕掛けてくるぞ」
その言葉を聞いたかのように、即座に『銀狐』の機体が反転して来る。
そして、その先端から二つの光条が断続的に放たれた。
BMRのビームバルカンの出力は、携帯用ビームガンの比では無い。
また、飛行型のシルフィードはその機体的特徴から、陸戦で前衛を務めるノーム級は元より、後方支援のサラマンダー級に比べても軽量化の為に装甲が薄い。
瞬時にして五機のシルフィードが凄まじい熱量を伴った光条に貫かれた。
魔導機関を直撃された機体は爆散し、そうでないものも『風の結界』を維持できずに堕ちていく。
「な、なんという威力だ。雷撃……いや、火の魔法でも無い。くっ、それどころではないな。全機、散開せよ」
一瞬、茫然となりかけたが、ギリアムは優秀な指揮官には違いなかった。
ビームバルカンと言う兵器は知らないが、その熱線ビームの特徴である収束性、即ち、点の攻撃である事を即座に理解し、密集隊形の不利を悟ったのだから。
その光景を《クワポリガ》の艦橋から見ていたテレーゼ皇女も、『銀狐』と呼称した鳥もどきが狐どころではない猛獣、いや、猛禽の類であったことを認めたようだった。
「やむをえん。シルフィードには迎撃命令を出せ。興味深い機体ではあるが、シルフィードにやられるようであれば、それまでの話だ」
それでも、なお『銀狐』の鹵獲を断念したわけでも無いようで、次の命令を下す。
「《クワポリガ》は餌の準備にかかれ。急げ」
◇
不意打ちにも近い先制攻撃を仕掛けた事になるが、シンゴに後悔とか逡巡の念は無かった。
およそ、空戦における撃墜王は不意打ちと先制攻撃でその戦果を挙げたのであって、現在でも敵のアウトレンジから攻撃する方向で戦闘技術は発達しているのだ。
空戦に限らず、戦闘と言うものは、つまるところ、自分の身をなるべく安全圏に置きながら相手を殺す行為であって、殺し合いだの、いわんや正々堂々の戦いとは別の次元の話である。
この考えを否定する場合、盾や鎧の防具と言う存在を否定するところから始めなければならないし、武器の選択も槍とか弓矢は否定しなければならないだろう、と言う類の主張がなされるのは『ウォー・アンド・ビルド・オンライン』の掲示板に限った話では無い。
もっとも、今のシンゴには、それらはどうでも良い話である。
爆散した、あるいは、墜落した機体に搭乗していた人間を殺したと言う事実すらも念頭に無い。
今の彼の意識にとって、目の前のシルフィードは獲物ですら無かった。
機械的に処理するだけの単なる標的である。
ただし、相手もこちらを殺す権利を有していると言う自覚はある。
これはお互いの命を賭け金としたゲームなのだ。
それは九之池慎吾と言う大学生では無く、BMRパイロットであるシンゴ特務曹長の意識であろうか。
いや、そうした意識すらも薄らいでいる。
今の彼は、BMRと言う戦闘ユニットを構成する部品の一部でしかない。
ただ、首筋の疼きのような感覚だけが、慎吾と言う人間の名残でもあった。
『敵性オブジェクト、残数二十二、散開しました。なお、ビームバルカンの発射可能限界は時間換算にして残り六十秒です』
チルが機械的な声で状況を告げる。
ビームバルカンは核融合エンジンから供給されるエネルギーを転換して撃つ兵器なので、弾薬の補充切れを懸念する必要は無いが、動力とはエネルギー系統が異なる為、一端、専用のバッテリーにチャージする必要があり、また、砲塔の過熱の面からも、戦闘中に無制限に撃てるものでもない。
そうした武器使用に関する制約は、『ウォー・アンド・ビルド・オンライン』をプレイする上での醍醐味でもあるわけだが、今のシンゴにとっては、単なる解決すべき課題でしかない。
散開したシルフィードが反撃を始めた。
次々と雷球を発生させ、撃ち出してくる。
だが、超絶レベルにあるシンゴの反射神経は、即座に《ファーブネル・フライヤー》を回避させる。
もっとも、直撃したところで、空戦型BMRにどのくらいのダメージを与えられたかはわからない。
《ファーブネル・フライヤー》は、落雷の直撃を受けたところで、機体表面に施された絶縁体と誘電線からなる多層コーディングと放電装置の組み合わせによって一瞬で大気中に放電されるようになっている。
魔導機関が生み出す雷球とは言え、本物の落雷には及ばないレベルであり、おそらくは《ファーブネル・フライヤー》の落雷対策装備には無効化されてしまったであろう。
シルフィードのもう一つの武装とも言える風の刃も、大気中を高速で移動する《ファーブネル・フライヤー》へはほとんど打撃を与えられない。
ザミーンの飛行型魔装機甲兵シルフィードにとって、『銀狐』は最悪な相性の権化であった。
とはいえ、《ファーブネル・フライヤー》の固定武装であるビームバルカンにとっても、シルフィードは相性が良いかと言えばそうでもない。
風の魔法に特化した機体は、直線的な機動速度は《ファーブネル・フライヤー》に遥かに及ばないものの、その変幻自在の動きは非常に予測しづらい。
ロボット形態で使用するビームライフルの類であればともかく、パルス発振するビームバルカンは、大気中で減衰するビーム兵器の特徴から有効射程距離がそれほど大きくない。
従って、これだけ散開されると、おおよそ、五秒照射で一機撃墜する程度の効率となってしまう。
そこまでを瞬時に判断したシンゴは、逆に距離を開ける事にした。
またしてもシルフィードの群れから離れる『銀狐』に、ギリアムは訝しげな表情になった。
あれは逃げているのでは無く、再び襲い掛かるための準備であろう事までは予測がついたが、あの機体の武装がどのようなものかが不明である。
あの光の矢を撃ってこないのは、魔導にはつきものの何かしらの制約がある為だと見当がつくが、『銀狐』はあれ以外にどのような牙を隠しているのだろうか。
距離を取ったシンゴは、機体下部……ロボット形態では背中に当たる部位の兵器庫を開いた。
内部のアームが伸び、格納していた中距離空対空ミサイル《ハウンドⅡ》を放出する。
アームから切り離された《ハウンドⅡ》は、《ファーブネル・フライヤー》から数十メートル離れたところで、発射装置を点火させた。
『銀狐』が矢弾を撃ってきた。
あのような飛び道具を装備していたのなら距離を取ったのも納得がいくが、このシルフィードを侮っているとも言える。
確かに『銀狐』本体よりも速いには違いないが、あの光の矢よりも遅い。
風の化身とも言うべき機動性を誇るシルフィードにとって、これだけ距離があれば弾道を見切って回避するのは容易い話だ。
そう考えたシルフィードの搭乗者達は、技量を誇るように紙一重で躱そうとした。
たしかに、これが大型弩砲から放たれた矢弾であれば、その行為は優れた技量の証明になっただろう。
しかし、《ハウンドⅡ》は矢弾では無く、シーカーを備えた対空ミサイルであった。
入力されたデータ諸元に基づく複数の目標に、もっとも効果的な打撃を与える位置にきたとシーカーが判断した瞬間、信管が反応した。
その弾頭の爆発は、シルフィードの纏う風の結界を剥ぎ取り、その破片で機体をずたずたに引き裂いた上で、全てを炎に飲み込んだ。
凄まじい大きさで発生した火球に、三機のシルフィードが巻き込まれ、五機が破片の直撃を受けて大破した。
「な……何だと……?」
ギリアムは絶句するが、状況を監視していた《クワポリガ》からの警告で我に返る。
「気を付けろ、『銀狐』がまた撃ってきたぞ。今度は二発だ」
想像を絶する威力の炎の魔法を込めた矢弾である。
シルフィードの特徴である風の属性にとって、敵対する火の魔法は天敵と言える。
風によって火は煽られ、さらに威力を増すものだからだ。
「全機、逃げろ、逃げるんだ」
たまらずにギリアムは回避などと言う言葉も使わず、絶叫した。
配下のシルフィード達は、その命令に従った。
いや、従おうとした。
だが、猟犬の名をつけられた対空ミサイルはアクティブホーミング誘導によって、大きく回避運動を取ったシルフィードを執拗に追跡した。
「ひぃ、こいつ、追いかけてくる」
「逃げられない」
「助けてくれぇ」
恐慌状態に陥ったザミーン空軍の精鋭たちは、なす術も無く、雷球で迎撃を試みるでもなく、次々に発生する火球の餌食となった。
そこへ、『銀狐』本体が襲い掛かり、あの光の矢で残ったシルフィードを仕留めていく。
あの治癒院を襲った搭乗者も、ビームバルカンの直撃を受けて、瞬時にして蒸発した。
残ったのは指揮官機のギリアムだけとなった。
◇
近くで発せられている凄まじい鬼気に、ヘレーネは意識を取り戻した。
一瞬、宙に浮いているような自分の状況がわからずにパニックになりそうになったが、それを抑えたのは傍らにいる青年の放っている禍々しい気である。
状況からみて、同一人物の筈だが、どこか抜けたようなところのあった青年の面影はどこにもない。
極めて短い時間の付き合いでしかないが、結構豊かな表情の持ち主だったと記憶している。
しかし、そこに座っているのは、冷徹な表情のままに次々とシルフィードを撃破していく、全くの別人だった。
その首筋にある傷痕とも紋様とも言えない何かが、不気味に明滅しているようにも見える。
ヘレーネは、不意に、このままでは取り返しがつかない事になると言う思いに囚われた。
それはこの青年にとっても、この世界にとっても、良くない事に違いない。
全く根拠のない考えだが、この青年の放つ禍々しい気配はただ事では無い。
何よりも、この青年の首筋にある「これ」は、自分がつけたあの傷が元になったものだ。
(そう……か。終わったかと思ったが、私の支払うべき『対価』は、まだ残っていたんだな)
ヘレーネは溜息をひとつつくと、覚悟を決めた表情となって、慣れない手つきでハーネスを外し始めた。
残った一機を、どう処理したら効率的かを計算していたら、いきなり暖かく弾力のあるものが視界を塞いだ。
「おわぁ??」
そんな不意打ちにも操縦桿を誤操作しなかったのは、パイロット属性を高めたシンゴならではの事である。
しかし、的確な操縦を行いながらも、シンゴはパニックに陥っていた。
顔に押し付けられた弾力もそうだが、鼻から入る良い匂いや、軽く頭に回された腕、そして、インカム越しに耳元で優しく囁かれる言葉。
『帰ってこい』
チルがすかさず、その言葉を翻訳する。
『もう十分だ。こっちに帰ってくるんだ』
シンゴは、よくやく自分の顔に押し付けられたものがなんであるかを悟った。
サブシートで気絶して居た筈の娘が、どういうわけか身体に纏った布を取り払って、剥き出しになった豊かな胸に自分の顔を……
「あ、あの……チル? 状況を説明してくれ」
『ユーザの置かれている状況は「ラッキースケベ」もしくは「当たっているんじゃなくて当てているの」の発展形に該当するものと推測します。なお、当該状況を作り出しているのは同乗している「雌犬」ですが、戦闘の著しい障害となっています。即時廃棄処分を提言します』
「いや、しなくて良い。しないで、お願い」
『了解しました』
押し付けられたところをずらして視線を上げると、茶髪の娘と眼が合った。
『戻ってきたようだな』
ようやく、娘は押し付けたものを離したが、おかげで丸見えになってしまった。
上の日焼け跡もそうだが、下の日焼け跡もばっちりである。
(あ、少し生えている……ってことは剃っているのか、大変だなぁ)
などと、考えてしまうシンゴだった。
『女の乳房には絶大な効果があるとおばばが言っていたが、まさにその通りだったな』
そう言いながらも、さすがに恥ずかしいのか、顔を赤らめている。
しかし、全く隠そうとしない。
「あ、あの……服……は無いか。その布を………」
このままでは、伸縮性のあるパイロットスーツと言えども(一部が)カバーしきれない状況になってしまう可能性がある。
緊急メディカルシステムを備えたパイロットスーツと言えども「そのような状況」は想定外の為、痛い思いをするのか、恥ずかしい思いをするのか、まったく予測がつかない。
たしか、マニュアルにも記載が無い筈である。
『私とて好きで見せているわけでは無いが、お前を繋ぎとめておくにはこれが効果的なようだからな』
そう言いながら、素肌を晒したままでサブシートに座り、ハーネスを止める。
十八禁ゲームにマッチしたシチュエーションのせいか、チルの翻訳に誤差は無いようだった。
強調されてしまう感じになったそれを見て、食い込んで痛くないのかな、と、シンゴはつい考えてしまった。
「え……と、繋ぎとめる? そう言えば、帰って来いとか、戻ってきたとか?」
『ユーザは一種のトランス状態にありました。その事を指しているものと推測します』
「あ、えーと」
自分のとった行動の記憶はある。
その結果についても意識はしている。
だが、妙に霞がかかったような感じでもある。
何よりも先ほどまで感じていた首の疼きは跡形も無い。
「う~む。これが異世界もので読んだことのある「殺す覚悟」ってやつか」
ネットで見たコンテンツを思い出しながら、小さく独白する。
『ところで、まだ一機残って……あ!』
残った一機のシルフィードが向かう先を見て、茶髪の娘が声を上げる。
その機体が向かう先に、《空魔》から伸びる光る紐のようなもので引き上げられて行く、ぴくりとも動かない細いシルエットの魔装機甲兵がいた。
◇
「収納を急げ。全く、何をやっている」
テレーゼ皇女の口調に苛立ちの色が混じったのは錯覚ではあるまい。
麾下のシルフィードがほぼ全滅した上、今の今まで《クワポリガ》が不調で「餌」の回収に手間取っていたとなれば、それも無理は無い話とも言えた。
「分析官。《クワポリガ》の不調は直ったのか」
「はい、先ほどまで何かに怯えていた様子でしたが、現在は異常無しです」
《空魔》級や《海魔》級は特別に育てた魔法生物をコアとして作成される。
つまり、一種のサイボーグである。
通常は完全な制御下にあるが、時折、その生物としての自我が目覚め、こちらの制御を受け付けない事例が、極めて少数ではあるが報告されている。
この《クワポリガ》には今までそんなケースは無かったのだが、本国に帰還次第、再調整を行う必要があるだろう。
原因はわからないが、あの『銀狐』が本格的に牙をむいた、その少し後からと、言う事を考慮すると、あるいは、あの機体の何かが影響しているのかもしれない。
この時点で、シンゴの首筋にある傷痕の異変を知る道理も無いテレーゼ皇女は、そう結論付けて、やはり、あの『銀狐』に関するなにがしかの情報は持ち帰る事を決意していた。
「ギリアムに「餌」の警戒をさせろ。いや、「餌」を盾に使えと伝えるんだ。宮廷魔導士と近衛騎士団団長の娘は同僚と聞いている。あの機体を盾にすれば、『銀狐』も手は出せまい」
そう命じるテレーゼ皇女の耳に、慨嘆する分析官の声が聞こえる。
「しかし、驚くべき機体ですな。《空魔》の魔導圏内をものともせずに、あれだけの動きや速さを披露する。さらには、光の矢と言い、あの追いかけてくる炎の魔弾と言い、兵装も桁外れです」
「お前も初めて見る魔導か」
「はい。寡聞にして知りません。ローセンダールはいかにしてあのような技術を手に入れたものやら」
「ふむ。まぁ、宮廷魔導士を餌に捕えてみればわかる話だ。あるいは、機密を優先して「餌」に見向きもしない可能性もあるが、その場合は宮廷魔導士の口を割らせるだけだ」
ザミーンの『氷姫』は、ようやく平常を取り戻した様子だった。
◇
『くっ、卑怯な。ソニアを人質に……』
「ソニア? ああ、あの黒髪の。しかし、どうしたものかなぁ」
シンゴは考え込んでしまった。
あの細い機体に剣を突きつけている飛行型魔装機甲兵には手が出せそうにない。
脅しかもしれないが、万が一と言う事もある。
「やっぱり、元から絶たなきゃダメってことで、あのデカブツをどうにかできればいいんだろうけど」
『現在の装備では、あの巨大オブジェクトの攻略には不適切な状況であると進言します』
「だろうなぁ」
シンゴは頭をガシガシと掻きながら考え込んだ。
《ファーブネル》のセンサーによる解析で、あの《空魔》と呼ばれるデカブツの装甲がかなり厚い事がわかっている。
シルフィード相手に威力を発揮した中距離ミサイル《ハウンドⅡ》は一発残っているが、対空ミサイルである為、爆発力はあるものの、それだけではあの装甲にダメージは与えられない事はチルがシミュレーション済だ。
短距離ミサイル《ヴィオラ》は二発が手つかずだが、これは小型のフレアを多数内蔵した、迎撃、及び、欺瞞を目的として敵ミサイルに対抗して使うものだ。
やはり、あのデカブツの装甲の前には無意味である。
ビームバルカンは残量ゼロだし、パルス発振するこれでは、やはり、あの装甲を削るだけに終わるだろう。
ビームライフルや貫通力に優れた対艦ミサイルなどのオプション装備は今回標準装備で召喚した為に持ち合わせていない。
汎用機であるグランブールに搭乗している状態なら、現在のオプション装備を廃棄する代わりに、他のオプション装備だけを召喚可能ではあるが、生憎と空戦に特化した《ファーブネル》にはその機能は無い。
では、機体を乗り換えるかと言うと、そういうわけにもいかない。
召喚システムに限らず、『ウォー・アンド・ビルド・オンライン』では、戦闘中の機体の乗り換えは、ほとんどNGである。
何故なら、それができてしまうと、機体が破壊される寸前で乗り換えてしまうなどと言う事もできてしまうわけで、ロボット対戦ゲームの前提が崩れてしまうからだ。
ミッションによってはステージ変更に伴って機体の乗り換えを前提とする局面も無いでは無いが、最低でも現在のステージで直面している戦闘を勝利で完了させなければならない。
そうでなければ、同一ユーザが所有する別の機体はロック解除できない仕組みだ。
つまり、乗り換え可能になるのは、少なくとも、あのシルフィードと《空魔》を撃破した後、と言う事になるわけだ。
まさしく、ジレンマである。
もっとも、『ウォー・アンド・ビルド・オンライン』では、そうした事を可能にする反則級の機体が無いでも無い。
しかし、現在のシンゴの持ち合わせには存在しない機体である。
「ま、要は戦い方次第かな」
いつか自分で言った言葉を、もう一度口にしてみる。
そして、そちらをあまり見ないようにして、茶髪の娘に話しかける。
「えーと、知っている事だけでいい。あの《空魔》ってやつの事を教えてくれないか。それと、あいつらの事についても」
空戦ミッションは継続中だが、これに人質奪還の救出ミッションが加わったようであった。
 




