第2話 森の奥
アウラは、歩いていればどこかに出られるかもしれないと考えて森の中を歩いていた。
「なんだろう?」
アウラが歩いていると、目の前にどこかの風景画にあるような湖が現れた…
その湖は、青く澄んでいて、向こうの方には、この辺では珍しい針葉樹林が見受けられた。
中でも目を引いたのは、あまり大きくないみずうみの中心に浮かんでいる小島である…その島は、不思議なことに湖の中央あたりで空中に浮いているのだ…
「どうやって行くんだろう?」
好奇心旺盛なアウラは、入口を探そうと湖の周りを歩き始めた。
約30分ほど調べて、アウラは、見事に入口を探し当てることができた。
非常にわかりにくかったのだが、透明な板が島まで渡してあったので、何とか島に上陸することができた。
その島は、浮いているにもかかわらずかなり安定していて、たくさんの木々が生い茂っていた。
何より目を引くのは、季節は秋真っ盛りだというのに、落葉樹の葉が緑色だと言うことであろうか…
「不思議…あっちからは、小さな島にしか見えなかったのに、結構大きい…。」
アウラは、見慣れない植物を見ながら、奥へ奥へと入って行く…近くの森にはないような森を抜けると、目の前には大きな豪邸が見えた。
「すごい…誰の家だろう?」
あんな小さな島の中にあるとは思えない巨大な建物を見ながらアウラはそうつぶやいた。
「誰? 人の家に勝手に入ってきてどういうつもり?」
唐突に女の子に話しかけられたアウラは、体をビクッとさせる。
「えっと…アウラが島を探検してたら偶然…。」
「そう…どいてくれる? そこ、私の特等席なのよ…。」
アウラがその場から移動すると、女の子は木の根元に座って本を読み始めた。
「えっと…あなたは?」
アウラは、恐る恐る名前を聞いてみた。
「お姉ちゃんとでも呼びなさい…それが嫌なら好きに読んでもらってもいいわ…。」
女の子は、本を読んだままそう言った。
その態度を見る限り、わざわざ名前を名乗る必要もないといった雰囲気である。その様子を見る限り、有名人なのかもしれないのだが、お姉ちゃん以外と言っても、名前を聞いたことがないので、他にどう呼べというのか…
いろいろとあるのだろうが、アウラは一生懸命考えたのだが、先日の少女との会話もあってか、「お姉ちゃん」以外の呼び名は思いつかなかった。
「お姉ちゃん…その…ここはどこ?」
「…知らずに迷い込んだのね…かわいそうに…ここは、私の家よ…。」
「ちょっと…ここにいてもいい?」
アウラが聞くと、女の子は、本から目をあげてこう言った。
「好きにすれば?」
その言葉を聞いたアウラは、女の子の横に座った。
すると、女の子は少し驚いたような顔をする。
アウラは隣に座っただけで、おどろくようなことをしたのだろうか? と考えてはみたものの、思いつかなかったので、おとなしく座っていることにした。
「何の本読んでるの?」
「…絵本…これ大好きなんだけど、お姉ちゃんが絵本はもっと小さな子が読むものだって、読ませてくれないからここでこっそりと読んでるの…。」
アウラは、興味津々と言った様子で、本を見ようとした。
すると、女の子は、本をアウラに手渡した。
「読みたかったらいいのよ…ほかにもたくさん本があるし、持って行っても何も言わないわ…私は寝るから、帰りたかったら勝手に帰ってね…。」
女の子は、気にもたれかかって目をつぶりました。
アウラは、寝ている女の子の横で、夢中になって絵本を読んでいたのだが、ちょうどそこは、「ひだまり」と言う言葉のためにあるような空間で、ポカポカと温かかった。そのせいなのか、アウラもいつの間にか夢の世界に誘われていた。
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