プロローグ
「アイツを……アイツを殺るんだああアッ!!」
乾いた叫びが、住む者のいない廃墟を駆け抜ける。
その叫び声を発したのは、赤い髪の少年だ。彼は、周りにいる5、6人の少年たちのリーダーのようである。全員が白いスカーフを身に付けているのが印象的だ。
対峙するは、此方も少年。濃紺の軍服を身に纏っている。腰に帯びている一対の小太刀と東風の刀がやや物々しい印象だが、それは決して背伸びしている訳ではなく、確かな実力を感じさせる。
実際、一対多という状況であるにも関わらず、怯えているのは少年たちのようだった。
「それは、お前たちには不可能だ。怪我をしたくなければ、今すぐ投降しろ。
無意味な争いを続ける反乱軍ども」
「無意味……無意味だと!?
てめぇがそれを言うのか……裏切り者ッ!」
静かに告げる軍服の少年に、赤い髪の少年は怒声でもって応える。
軍服の少年はその言葉にを説得は不可能だと感じとり、臨戦態勢に入る。
そして、長剣を手に宣言した。
「ならば仕方ない。帝国術士師団所属、獅子神白……これより反乱分子を制圧する」
そこからは一方的な、いわゆるワンサイドゲームだった。反乱軍の少年たちも自らの魔法で火球を作りだし、植物を操り、精神攻撃を試みた。並の帝国軍の術士ならば敵ではなかっただろう。
しかし、相手はかの獅子神少尉である。全ての魔法は一刀のもとに切り捨てられ、十代ですでに達人級である剣術で一人一人確実に気絶させていく。
「……真珠…さ、ん」
最後の一人も小さな呟きと共に、倒れ込む。
……なつかしい名前だ。白は青空を見上げる。
その名前は、白にとって、振り払ってきたはずの過去の象徴ともいえるものだった。
「真珠、か……」
いまはもう刃を向け会う関係になってしまった、大切な幼馴染み。彼女の手を取らなかったあのとき、こうなってしまうことを知っていたなら……俺は同じ選択をしたのだろうか?
誰にも届かない、小さな小さな呟きは風に溶けて消え去った。
答えは決まっている。それでも振り返らずにはいられなかった。
壱厘と申します。以前は二次創作を書いておりました。オリジナル作品はこれが初めてとなります。至らぬところなどあると思いますが、よろしくお願いいたします。
誤字脱字の報告、アドバイス、感想などお待ちしています。
こんな始まり方ですが主人公最強モノにはならない予定ですのでご注文ください。