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幕間
<このセリフ、好き>
<どれ?>
<『三日月は不思議だ』ってとこ>
<……ああ>
<――覚えてないか?>
<覚えてるよ>
<――本当に!?>
<うん、だってお稽古でいっぱい聞いたし>
もう、そらで言える。
<いや、うん、そうじゃなくて、>
そうじゃなくて。
覚えていた。
いや、知っていた。
でも覚えていなかった。
そして今も――覚えていない。
思い出したことすら、記憶の彼方。
あのセリフ、好き。
なに?
『三日月は不思議だ』って。
……ああ。
いつかあの子もそう言った。
それともあれは――僕だったのか。




