21話「初詣」
あけましておめでとうございます。元旦終わってから正月の話をやるとか馬鹿ですね。分かってます。今年もよろしくお願いします。
「待った?」
現在22時58分。
待ち合わせ時刻は23時だから、早めに来たと言えばそうなのだろうけど。
来た時には既に相手は来ていた。
「今さっき来たばっかりだから大丈夫だよ。閖花」
鼻のてっぺんを真っ赤にした英勝が、いつも通りニヘラッと笑った。
普通に洋服を着て来ていた。白いマフラーがよく似合う。
「良かった。ごめんね。着替えるのに時間かかった」
「良いよ。年末に閖花の着物姿見れたし」
先日、文化部!でお正月の話を見た。
花咲 未来ちゃんの着物姿が可愛すぎて真似がしたくなった。で、真似した。
正に月とすっぽん。私の着物姿は超気持ち悪かった。
不細工が着物は着るものじゃないな。と痛感した。
「ごめんね。似合ってないでしょ」
「いや、全然そんなこと無いよ。可愛いしよく似合ってる」
「~~~~~ッッ!!///」
英勝は嬉しい言葉をポンポンくれる。
これ、勘違いする女子が多くても納得するね。英勝がモテてる理由が分かった。
「じゃ、行こうか。」
ポケットに突っ込んでいた手を差し出す。
「…え?」
「あれ?」
「ん?」
「え?」
繋ごう。ということなのだろうか?
「手、繋ごう?」
「え?あ、はい」
冷え性な為冷えきっている私の手を握らせるのは悪い気がした。
「冷たっ」という声が聴こえた。
「冷たいでしょ。手繋がなくてもいいよ」
「ヤダ。俺が繋ぎたいから繋ぐ」
頬を赤くして、唇を尖らせながら言う。あ、可愛い。
――――――――…
近くの神社は結構込んでいた。
ここらでは1つしかないし、有名で大きい神社だから仕方はないだろうけど。
私たちみたいに初詣デート(?)をしている人たちは沢山居た。
ここに居る大半がそれだ。
カウントダウンを共に過ごしたいとでも思っているのだろうか。
新年の何がめでたいのか、私には全く分からない。
目の前でイチャイチャされたりとかがかなり鬱陶しかった。
焚火のところにも人が沢山居て近づけなかった。
「取りあえず、何する?」
英勝が声をかける。
「あー…私はなんでも良いよ。まぁおみくじ引いたりとか、かな?」
「取りあえずお参りしておみくじ引いてお守り買ったら俺ん家行くか」
「ん、分かった」
英勝のお母さんとは大分仲良くなった。
元々仲最悪、という訳ではなかったし、当たり前なのだろうけど。
「母さんに閖花と出かけるって言ったら、お参り終わったら家に連れて来い。って、煩かったんだよね(笑」
英勝のお母さんはいい人だ。お父さんも。
私の両親とは違って。
「どうする?お参りする前に先におみくじ引く?」
「英勝の好きなようにすれば良いよ。」
「じゃあ先におみくじ引こうか」
――――――――…
おみくじは一回100円
こんな紙きれの為に100円も払うのがもったいない。とぶっちゃけ思っているけど、こういうのは気持ちの問題なんだろうな。と。
おみくじにも沢山人が並んでいる。うぜぇよ。
目の前でキスしたりしてるカップル。目に毒だからやめて気持ち悪い。
「はい。200円」
私たちの番が来た。
取りあえずおみくじを引く。
中吉。うわ微妙。
「英勝、どうだった?」
「大凶」「うわ最悪だなソレ」
「いや寧ろ運いいよ俺すげぇ(キラッ」「死ね」
「えぇ!?」
英勝の反応が可愛くて、おもしろくて。
私は英勝をからかうのが好きだった。
「閖花は?」
「中吉」
「うわ微妙」
「煩ぇよ」「サーセン」
おみくじの文章を読み上げる。
どうせこんなの本気で起こるわけないだろうけど。
「お、恋愛は隣の人が吉だって。」
「へー。私は尊敬する人を迷わず選べば一番良いんだって」
私は英勝を尊敬している。だから、それでいいのだろう。
「おーまじか!!」
「えーっと。思わぬ事実が分かりそう。事実が分かった後に気持ちは沈むだろうが今まで以上に幸せになるだろう。何これ」
気持ちが沈む?英勝が浮気してるとか?
今まで以上に幸せになる?訳が分からないよ。
「どーいうことだろうな」
「ま、でも所詮おみくじだし信じないよ。」
「だな。あ、除夜の鐘どうするよ」
あ、存在忘れてた。そういやあったなそんなの。
「行こうか。隣に除夜の鐘ならすお寺あったよね」
「うん」
再び手を繋いで歩く。
日を重ねる毎に、段々恋人らしくなってっている。
嬉しいなぁ。と心の中で呟く。
口に出せるわけがない。恥ずかしい。
除夜の鐘も沢山人が並んでいた。
ここは年配の方々と若者の人数が半々くらい。
ですよねー。
30分位並んで順番が来た。
取りあえず2人でならすことに。
―――――ゴーン
鐘が大きな音をたてる。
パンパンッと手を鳴らし頭を下げる。
これにて除夜の鐘は終了。
後は適当にお参りして、適当にお守りを買って(勿論英勝のお父さんやお母さん用にもお守りを買った)英勝の家へ向かう。
――――――――――…
「ただいまー」
「お帰り英ー」
英勝のお兄さんも帰ってきていたみたいだ。
「やめろっ!!頭くしゃくしゃするなっ!!」
「もー英は可愛いな~」
はたから見れば変態だな。と思える発言をする。
私も変態だし人の事言えないけど。
まぁ、お兄さん。貴方はブラコンですか。ショタコンですか。
大丈夫ですか貴方。犯罪に走らないでくださいね。
「あら、英お帰り。閖花ちゃんもいらっしゃい(ニッコリ」
相変わらず優しそうなお方だ。こんな人が私の親だったらよかったのに。
笑顔がよく似合う綺麗な方だなぁ。
「こんな夜遅くにすみません。お邪魔します(ペコリ」
「いーえー。いいのよ遠慮しなくて。いつでもいらっしゃい^^」
「ねーねー閖花ちゃん今日泊っていくの?」
何だこの兄さん馴れ馴れしいな。別に良いけど。
「いえ、そんなつもりはないですけど」
「泊ってって頂戴よ。私、閖花ちゃんが来るからっておせち沢山作っちゃったのよ」
「わざわざありがとうございます^^でも代えの服とか…」
「俺の服貸してあげるよ」
英勝…お前…
「いや、でも下着とかー…」
「俺が貸してあげるよ^^」
ちょっと待てお兄さん何で持ってるんだよ!!
スパーン
英勝のお母さんがお兄さんを叩く。
「私のがあるから大丈夫よ」
ここまで言われたら断れない。というか断りにくい。
「分かりました。泊ります。すみません」
「気にしなくていいのよ~」
なんて優しい人たちなんだこの家の人は…兄さん以外。
「では、お邪魔します」
靴を脱いで家へ上がったとき、英勝のお兄さんが英勝に何か言っていた。
ヒソヒソ話だったから聴こえなかったけど、顔を真っ赤にしてお兄さんを殴っている英勝が見えた。