18話「夏祭り」
只今5時23分。
買い物に出かけていた。買った物?勿論文化部!!のゲームだよ。
帰り道、異様に人が多い。辺りが騒がしい。浴衣の女性がちらほら。
不思議に思って廻りを見渡すと、出店がいっぱい。
今日はどうやらお祭りがあるようだ。
ポケットに手を突っ込む。ジャラジャラと音がする。
ひーふーみー。数えてみると500円玉が1枚、100円玉が1枚10円玉が3枚、1円玉が4枚あった。634円…超微妙…
家帰って母さんに金貰うか。
「「「うぉおおおぉおおぉお!!」」」
「ビクッ)な…なんだ!?」
異様に射的のところが騒がしい。帰る前に気になるから見に行くか。
射的の出店の前には客(?)が大量居る。一体何があったんだろうか。
「あ…ありえねぇー!!」
「えーっと…何があったんですか?」
「あの女の子がいっぺんに5個も6個も取って行くんだ」
「は?」
指差された方向には1人の女の子らしき人。浴衣着てるし女の子かなぁ。
髪の毛は俺と同じくらいか…?
パンッ
カッコンッカッカッカッ
1回打っただけなのに上手い具合に当たって跳ね返って、当たって跳ね返ってを繰り返し、当たった景品全てが落ちる。
「さっさと袋に詰めて」
やっと喋った女の子。あれ…?声に聞き覚えが…
「肩慣らしは終わった。次から本番ね」
「まだやるの!?」
確かに300円で10個以上取られたら商売あがったりだ。
「響の2分の1スケールの人形…」
ボソッとそう聴こえた。まさか…な…
カチャ
銃を綺麗に構えて、打つ。
パンッパンッパンッ
3発目で、響の2分の1スケールの人形が落ちた。
「やった♪手に入れた♪」
「もう来ないでください…(泣」
女の子は嬉しそうに人形を抱きかかえてクルッとこっちを向いた。
「は…ははは…濱野!?////」
「川崎!?」
どうやらあの女の子は川崎だったようだ。
スラッと着こなした綺麗な藍色の浴衣。射的や、多分輪投げであろう物の景品を沢山抱えている。顔は化粧をしているのか、少し唇が赤い。
「あの…いや…その…こ…これはッッ!!」
「ゲーム得意なのね」
「…まぁ」
両手いっぱいに景品を抱えている。ちゃっかり文化部!!もいっぱいとってるみたいだ。
「なぁ。一緒に回らね?」
「良いの?」
「おう。唯、金ねぇから一回家帰るけどな」
「分かった」
「ん?お前も俺ん家来るんだぜ?」
「えぇ!?」
やっぱり分かってなかったか(笑
「当たり前じゃん。女の子1人をこんなところに放っておけるかよ(ハハッ」
「濱野よりは強い自信あるけど」
「ごもっとも」
これが本当だから怖い怖い(笑
いや、まぁ俺だって男だからな?少しぐらいは格好付けたって言うか…な。
好きな女の子くらい自分の力で守りたいだろ?
それにいくら川崎が強いとは言え、身長150㎝もないおチビさん(これ声出して本人に言ったら殺される)だから、背の高い奴とかには流石に敵わないと思うし。
―――――…
「ただいまー」
「お帰り英ー」
「わっ頭くしゃくしゃするなッッ!!」
7歳年上と、9歳年上と、10歳年上の兄貴が居る。正直むさくるしい。
いや、でも好きだけどね?あ、因みに皆働いて1人暮らししている。今日はたまたま家に帰って来たらしい。まぁ。夏休みだしね。
「ん?後ろの子…誰?」
「あー…」
「えっと…川崎閖花と申します!!」
シャッキーンってなってる。緊張してるんだろう。
「母さああああん!!英がッッ!!英がぁあぁああぁあぁ!!『彼女』連れて帰ってきたぁああぁぁぁああぁ!!」
「違ぁあああぁあぁああう!!」
こういう早とちり嫌いだ。
「まぁ!!可愛らしい子ね(ニコッ」
「い…いえっ!!そんなこと無いです///」
「英みたいな子でよかったの!?」
「どういう意味!?」
ワイワイ煩いけど、この光景を見て川崎はクスクス笑っている。
「お祭り行くから金頂戴」
「はい。彼女の分もあげるわ。仲良く行ってらっしゃい」
約4000円貰って再度俺らはお祭りのところへ歩いて行った。
――――――――…
因みに、後で聞いたら川崎は「家族皆仲良いんだね。面白かった」と言った。
あの騒がしいのが面白かったみたいだ。そういや虐待されてたんだっけ…?
その後、金魚すくいにスーパーボールすくい、ダーツに輪投げにコイン落としゲームに射的にボール投げ。ありとあらゆるゲームを川崎と戦ったが見事全敗。
恐るべし川崎…。あいつゲーマーかよ…。
アイスを食って、かき氷を食べて終了。
10時に俺達は別れ、各自の家へと帰って行った。
その後、俺の家で母さんと兄貴達からによる尋問があったのは秘密。