14話「君」2
今度は川崎目線の君です。前回の話の川崎Ver.だと思って下されば結構です。
違う…違うッッ!!
私は取ってなんかいないッッ!!
―――――――――…
私が誰かの好きな人をとったと噂が流れている。でも私は取ってない。
たまたま見た光景。噂の出だし。
濱野に告白したあの女が流していたのを―――――…
何故私?何故私の悪役にしたいの?こんなの悪役にしたって良いこと無いでしょう?
貴方に何か得がある?なんで私なの?
私、奪ってないよ。取ってないよ。
なんで?
「謝れ」
唯そう言われて、殴られて、蹴られて。冷たい目で見られて。軽蔑されて。
「土下座」「死ね」
大丈夫。もう慣れた。
でも、濱野…
どうして君は私を助けてくれないの?―――――――
唯、顔を歪ませて私を見るだけ。
私を見つめるだけ。
どうして助けてくれないの?
そんなに友達が大切なの?
曲がったことは嫌いなんじゃなかったの?
結局友達なの?
1人になるのがそんなに怖いの?
ねぇ。今までの君は一体何だったの?
あれ?何で…なんで私はこんなにイラついてるの?
1人なんて慣れてたでしょ?孤独なんて普通でしょ?
誰も助けてくれなかったのが当たり前だったんでしょ?
じゃあ濱野が味方じゃなかったって、助けてくれなかったって
どうって事ないじゃない――――――…
辛いのか、辛くないのか。苦しいのか、苦しくないのか。それは分からないけど。
唯、分かる。私の瞳から光が無くなってるのを。
濱野が居ないだけでこんなに毎日がつまらないものだと思わなかった。
何でかな。濱野がいなかったのが普通だったのに。
それが何年もあった日常だったのに。
濱野が居たのはほんのちょっとだけなのに。
何時から濱野が居ることが普通になったんだろう。
ねぇ何で?
何で濱野が居ないだけでこうも胸が痛むのかな。
何時から「普通」が普通じゃなくなったの?
何時から私はこんな子になったの?
助けない濱野にイライラしてるんじゃない。
濱野が味方に付いている奴らに嫉妬してるんだ。
「川崎」
近づいてきた濱野が発した私の名前
たったこれだけなのに、何でこんなにも嬉しいんだろう。
ちょっと話してないだけで、なんでこんなにも懐かしいと思うんだろう。
「俺は、噂なんて信じない。お前がそんな奴じゃないって分かってる。
だから…俺はお間の味方だ。お前を助けてやる。俺を信じてくれ。世界中の人がお前の敵でも、俺はお前の味方だ―――――。」
――――驚いた。ビックリした。
濱野は私を裏切った訳じゃなかったんだ。
見限ったんじゃなかったんだ。
まっすぐな瞳。真剣過ぎる眼差し。
あぁ、嘘はついていない。
私を信じてくれるんだ。こんな私の味方をしてくれるんだ。
嬉しいな。ありがとう――――。
涙が私の頬を伝う。うれし泣き…かぁ…。
一体どれぐらい振りだろう。
涙で声がふるえるだろうね。でも、これだけは伝えないと。
「ありがとう」
ニッコリ笑って言えたかな。
濱野が味方ってだけで、こんなに心強いんだね。
こんなにも嬉しいんだ。
いつも、いつでも、これからもずっと、隣にいてくれるかな。
隣に居たいな。隣は誰にも渡さない。
誰にも譲りたくない―――――…
ふと気付いた自分の気持ち。
あぁ…私、濱野が好きだ。響と同じ様に、若しくはそれ以上に濱野が好き。
何でだろ。何で嫌いだった現実の男子なんかを―――――…