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乙女ゲームのモブ令嬢は悪役令嬢を推してます  作者: 崎子


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3/3

3 お兄様に報告したよ


校門を出て、馬車寄せの広場に家門の馬車を探していると、聞き慣れた声が私を呼ぶ。


「ギスレーヌ、早かったね。私もさっき着いたところで間に合って良かったよ」


「ジスランお兄様!」


ジスラン・ドゥ・フェリゴンド、私より6歳上のお兄様。

サラサラのラベンダー色の髪は私と同じで、瞳の色はお母様譲りの濃いサファイア色、ちなみに私はお父様と同じアメジスト色。

180センチ半ばの長身に抜群のスタイルを持ったお兄様は、優しげな少し垂れ目がちな甘い美貌も含めて、この広場では目立ち過ぎていた。


身内贔屓かもしれないけれど、攻略対象並の容姿を持つお兄様は『聖なる花冠の乙女』には出てこない、モブでもなんでもない存在。

ゲームにこんなイケメンがいたら、アデライド様の次に推しまくっていたのに、勿体なさ過ぎる。お兄様の神絵師スチル見たいわぁ。


「また表情がコロコロ変わって、何か面白いこと考えてるね?」


「お兄様はこんなにカッコいいのに残念だなぁって」


するとお兄様の微笑みが深みを増し、片手を伸ばして私の頭を撫で回しきた。


「何が残念なのか分からないけれど、ひとつあげるとすればおバカな妹の存在かな。まぁ、バカな子ほど可愛いという諺は実感してるよね」


お、お兄様、力、力が強いです!

髪が崩れます!


「ハハハ、大丈夫だよ。崩れても優しいお兄様が直してあげるからね。安心して」


グリグリといった音が聞こえるような撫で回しはしばらくの間続いた。

急に怖くなるところがお母様そっくりよね、血は争えない。


「何かまた、余分なこと考えてるよね」


何で私の頭の中を見たように話すの?怖っ!


その後、馬車に乗り込み、隣の席にかける。


「入学式お疲れ様。何か変わったことはなかったかい」


「アデライド・ドゥ・モンクール嬢が女神でした!」


「アデライド・ドゥ・モンクール嬢⋯⋯?モンクール公爵家の御令嬢か。エヴァルト王子の婚約者だったね。同じクラスになったんだ?」


「ええ!畏れ多くも同じクラスに在籍してしまいました。どうしましょう。明日からアデライド様の視界に私が映り込むなんて⋯⋯。あ、先日仕立てたドレスを着ていかなくては」


「うん。学園は制服着用が義務だからね。ドレス着ていったら、入学早々、謹慎処分になるからね⋯⋯。エヴァルト王子も同学年だろう。クラスは違うのかい?」


「あ、同じクラスです」


「それだけ?」


「他に何が?」


エヴァルトお兄様は少し残念なものを見る目を私に向ける。


「自国の王子が同じクラスになったのだろう。3歳児のような感想しかないのか、お前は」


何だか風向きが悪くなってきた気がして、話を逸らしてみた。


「⋯⋯あ、聖魔法持ちの平民の特待生も同じクラスでしたわ」


「聖魔法持ちの特待生⋯⋯そうか。ギスレーヌと同じ15歳だったっけ」


「知っているのですか?」


「まあね。私の職場にも聖魔法所有者の情報は上がってくるからね。でもそうか、ギスレーヌと同じクラスなんだ」


お兄様が少し考えるように顎に手を添える。


「王子は保護役ということだね。……どんな生徒なの?」


「ストロベリーブロンドに大きな瞳の美少女ですわ!」


鼻息荒く伝えると、お兄様は軽く息をつき顎の手を眉間へと移動させた。


「⋯⋯まだ初日だし、人となりは分からないか……」


「彼女がどうかしましたか?」


「いや、何でもない。それより、かなり派手なクラスだよね。王子にその婚約者の公爵令嬢、聖魔法持ちの平民なんて、よくもまぁ固めましたって感じで」


「あと、ブリュネル公爵令息やシュヴァリエ侯爵令息もクラスメイトです」


「え?ブリュネル公爵令息?モンクール公爵令嬢もいるのに、三大公爵の二家を集めたの?それにシュヴァリエ侯爵って騎士団長のご子息だよね?」


「そうです」


軽く目を見開いたお兄様に、コクンと頷く。だって、ヒロインちゃんとその攻略候補達だもの!同じクラスになるよね〜


しかしお兄様は考え込むように、ブツブツと呟いている。⋯⋯声が小さくて聞こえないけれど。


「⋯⋯ひとつのクラスに名門家系ばかり集めるのは王子の側近候補を固めただけなのか?それとも別の意図があるのか?一度、宰相室で確認してみるか⋯⋯」


「お兄様?」


「あ、うん。ごめんね。少し考えごとをしてた。それより、今日はギスレーヌの入学祝いでお店を予約してあるから、着替えてから出掛けよう」


「え?!お祝いですか?お兄様、ありがとうございます!」


「どういたしまして。このために仕事を片付けてきたからね」


そういえば、お兄様は最近、毎日帰りが遅かったのって⋯⋯え、私のために!?


「お兄様!アデライド様と同じぐらい、ギスレーヌはお兄様を推しまくります!一生ついていきます!」


思わず、勢いよく抱きついた私をなんなくうけとめ、ジスランお兄様は背中を優しく撫でてくれた。


「大切な妹の入学だからね。兄としてはお祝いは欠かせないよ。だけど、推しまくるとか、一生ついていくとかは遠慮するよ」


お兄様ったら、照れ屋さん!


「うん。また、人の話を聞いてないね?⋯⋯学園生活で何かやらかさないか心配になってきたよ」


ハァと息をはくお兄様も、麗しい。

お兄様、ファイト!

モブ以下でも、気にしないでね!

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