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A班(外)ファイル ― えらばれたおれはたちむかう ―  作者: ぽすしち


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8/10

街(後)



「 コルボク・・・・いま、なにを捕まえやがったんだ?」

「ネズミだ」

「 ―― はなせ」

「いやだ。このネズミは、《悪い精霊》のにおいがする」

「・・・わかった。じゃあ、それをにぎったまま、会社へ行け」

「なんだ?いつもは休みの日は会社にいくなって言うだろ」

「いいから行け。行って、A班のだれかにそれを渡してこい」

「わかった。ボス」

 おれをつかんだ男がむきをかえると、『ボス』とよばれた男が、電車やバスを絶対使うな、とうしろから叫んだ。



 おれをにぎった手を顔に近づけたおとこは、鼻を鳴らして匂いをかぎ、「・・・すこしちがう匂いもするな」とおれの顔をみた。



  くわれるくわれるくわれる・・・・


 まだ会ったことはないが、オオカミやキツネに会ったら、きっとこういう感じだろう。



 あれ?でもこいつ、匂いは野生の動物に近いけど、人間の男だよなあ?



「落ち着いたか?おれも落ち着いた。 こんな昼間の街中にでる《悪い精霊》はもっとひどい匂いだ。おまえはそれとはちがう匂いがする。 だけど、おまえみたいな匂いのネズミが街のなかをうろつくのはよくない。だからおまえは、A班にわたす」


 なにをいってるのかはわからなかったが、どうやらこの人間の男におれは喰われなくてすむみたいだ。



 だが、このままこの男にどこかに連れていかれたら、おれは大切な使命を果たせなくなる。



 そうだ、これはおれの旅の最大のピンチってやつだ。



 どうする?どうにか逃げるか?チャンスはあるか?



 そうだ!ベルだ!こういうときこそ、あのベルをならせばいいのか!



 でも、・・・あれを鳴らすとみんなが助けにきてくれて・・・おれがこの使命をはたせなかったことがみんなにわかってしまう・・・。


 いや、でも、これを届けるのがおれの使命であって・・・。


 ん?まてよ。この男はだれにおれを渡すつもりなんだ?『A班』ってなまえの、こいつの『上司』ってことか?うん、きっとそうだ。さっき『会社』って単語が出た。知ってるぞ。そこで人間たちはシスターみたいな『上司』っていうのに仕えて、おれたちみたいに働くんだって、前に『コウモリ』が説明してくれたからな。


 


   ・・・・・まってくれ!!



 この男の『上司』ってことは、えーっとつまり、シスターみたいだってことか?魔女みたいに強いのか?冷たい?こわい?


 きゅうにからだが震えてきた。




「おまえ、寒いのか?」



 おれをにぎった男がおれをつかんだ手をひらいた。


 いまが逃げるチャンスだ!



 だが、おれのからだはおもうように動かなかった。



「まあ、南のほうから来たなら、この土地は寒い」


 そう言った男がおれをシャツの胸にあるポケットへいれた。


「もうすぐここでも雪がふる。いっときだけ、この街も静かになる」

 ポケットをうえからたたかれ、きゅうに動くことができた。


 どうする?ベルをならすなら今だ。



 そのときポケットに、上から何かが落ちてきた。


 なんと!ナッツだ!!





「腹が減ったら、動物も人間もうごけなくなる」



 おとこがそういったときには、おれはもう、ナッツを半分たべきっていた。









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