道路(後)
地面をゆらす音をたてて、すごいはやさで巨大で長いタンクをのせた『トラック』が通りすぎていった。おどろいて男の手の上にたおれてしまう。
「 よし。ヒッチハイクが成功したぞ。あの車にのって、つぎにとまったところでバイクにのりかえれば目的地につく。 ―― いいか、目立たないようにしておけよ」
巨大トラックのあとをゆっくりと走ってきた青いちいさなトラックをみながら、カラスがそういった。
青いトラックの荷台には、柵がついているがなにものっていない。前を通り過ぎていったが、ゆっくりと道路をはずれてゆき、かなりむこうのほうでとまった。ドアがひらき、ゆっくりとした動きで、デニムをはいた年取った男がおりてくる。
「・・・あれ、おかしいぞ。いまここに、どっかのパーティーにでも行きそうな男が立ってたよなあ?」
男はあたりをきょろきょろとみまわす。
そのあいだに、おれはその青い車のタイヤをのぼり、うしろにある大きな荷台にとびこんだ。きれいに掃除されているが、柵には羊の毛がひっかかっている。そこものぼり、暖かそうな『運転席』のほうへ移ろうと思った。『運転席』の下に入れば気づかれないだろう。
「 《 ネズミだな 》 」
運転席の横に、大きく頑丈な果物籠みたいなものがおかれ、そこにしばりつけられた、人間にしては小さい《こども》が、おれを見て言った。
低く腹にひびくようなその声は、せったいに『人間のこども』のものではないし、かいだことのない《暗い場所》みたいな匂いがした。
「 『 その、 ・・・ひっ、・・・ 』 」
もしかして、『カラス』に命じられたあのポーズは、こいつを呼び出すための、おそろしい儀式だったのか?
おれはまんまと『カラス』のおそろしい計略にはまってしまったのか・・・。
だが、『人間のこども』の姿をしたおそろしいそいつは、しばりつけられたままで手足しか動かせず、そこからは出られないようだった。
「 『 ひ・・・ひっち、ひっち 』 」
おれは負けない気持ちで、カラスにおしえられたポーズをしてみせた。
「 《 わかったから乗れよ。ヒッチハイクだろ? さっきいたのはカラスじゃねえのか? 》 」
人間のこどもはおそろしい声でそういうと、じぶんがくくりつけられた椅子の下をゆびさした。
「おかしいぞ。 なあ、ジョー・ジュニア、いたよなあ?まっしろなおめでたい服をきた若い男が」
首をかしげながら運転席にもどったとしよりが、人間のこどもではないそれに顔をよせてきき、もういちどあたりをみまわした。ジョー・ジュニア?それが名前か?
「 『 良い休日に良いねずみ 』 」
「おお!ジュニア、あたらしいことばをおぼえたのか?えらいぞ。こんどぼっちゃまにもきかせねえと」
こどもの頭をなでる年寄の男は大声でうれしそうにわらいながら、また車をだした。
『かわいいぼっちゃま』とはまたちがう、『ぼっちゃま』という人間もいるらしいと考えているうちに、眠くなってきて、 ―― おれはうとうとしてしまった。




