道路(前)
― 道路 ―
すごい音をあげて、すごくおおきな箱をのせた車が通り過ぎる。
あれは『トラック』っていうんだ。知ってるぞ。それを見送ってから、左右を確認。あと、上も。
みあげた空には鳥の影はなかったが、油断はできない。
シスターがおれに『おまじない』をしてくれたから、ふつうの鳥にはみつからないはずだが、このあたりにはときどき、《魔法使い》の遣いである『カラス』があらわれるという噂がある。なかまの一匹がみたといっていたが、おれは信じていない。
なにしろ《魔法使い》じたい、トパム山なんていうとんでもなく高い山に住んでいるっていうし、《魔法使い》だっていうやつなんて、いままで見たこともない。
その《魔法使い》に仕えてる『カラス』がこのへんにいるなんて信じられない。
だからシスターに、あいつはウソつきだと教えてやったら、シスターは顔をしわしわにしてわらい、「そりゃ、どうかねえ」としか言わなかった。
だからシスターは甘いっていうんだ。
《背中鬼》のときだって、ルールをやぶったのは人間と《背中鬼》なのに、おれたちはなぜか、ちょっと《魔女》におこられた・・・。
それなのにシスターは、なんだかちょっと《背中鬼》に同情してるようなこと言ってたし・・・。
でもそれは、シスターが『精霊』と『魔女』のあいだにできた『魔女』だからかもしれない。
おれだったら?えーと、父親がネコで母親がネズミで、ネコが人間を食べてるのがわかってそれをつかまえて・・・。
「 『 ―― うん。 ネコがわるい 』 」
立ちどまって考えていたので、その音にきづくのにおくれた。
あれは、『バイク』だ。
『タイヤ』の数がすくなくて伝わる音もちいさいけれど、スピードは車と変わらないから気を付けないといけないと旅に出る前にさんざん予習していたのにその『タイヤ』がもうすぐそこでおれの旅がはじまったばかりなのにもうここで 、
「 おまえ、ふうつうのネズミじゃないよね 」
しっぽをつまむ男がきいてくる。
いつのまにか、道路の脇に立つその男に捕まっていた。




