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A班(外)ファイル ― えらばれたおれはたちむかう ―  作者: ぽすしち


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10/10

教会

ここでおわりです




  ― 教会 ―




 シスターのむかいにすわったジョーは、おれのながい旅のはなしを聞き終えてもしばらく肩をゆらしてわらいつづけていた。



「なんだか迷惑かくちゃったかしらね。いいと思ったのよ。あたしがつくった『ベル』も試せるし、かわいいぼっちゃまのお祝いもできるし」

 シスターはジョーのカップにまた紅茶をそそいで首をかしげた。


「いや、すばらしい。迷惑だなんてとんでもない。 あのウィルが同僚に初めて誕生日を祝えてもらえたんだから、こんな喜ばしいことはないだろう。 ―― まあ、多少ガーバディ警備会社に迷惑はかかったかもしれないが、なんともない」



 そう。

 

 あのとき鳴らしたベルはしっかりと働き、ベルが鳴った場所へ、おれの仲間たちをちゃんとよびよせることができた。

 準備していた歌もしっかり歌えたし、あっけにとられた人間の男三人のうち二人は、おれたちの歌に感動したといって拍手した。


 だが、『かわいいぼっちゃま』は頭をかかえるように顔を赤くして、おれたちをうらめしげにみただけだ。


 しかも、歌い終わったときに、おれたちのベルを『火災報知器』の音とまちがえた人間たちが火元をさがして部屋のドアをあけ、まだテーブルにのったままだったおれたちをみつけると、火事でもないのに、とんでもない叫び声をあげた。

 おれたちは『武骨で勇敢な正直者』の男にかきこむようにして袋にいれられ、その間にベルでよばれた仲間たちは湿地の教会へ帰り、おれは袋の中でいっしょにいれられたビスケットも食べずにじっとしていた。

 

 『大量のネズミがテーブルにわんさとのっていた』とわめく男を『かわいいぼっちゃま』たちが幻覚だろうといいきかせたが、『会社』には『害獣駆除』っていうのがはいって、ちょっとした騒ぎになってしまったらしい。



「あの音がよくなかったのかしら?でもねえ、あの中央『劇場』のことがあるから、《リンゴン》とかいう鐘の音より、いまどきの音のほうがいいかと思ったの。 『コウモリ』も、人間は、ああいう丸いボタンを押す『ベル』のほうがわかりやすいんじゃないかっていうからさ」

 シスターはおれの分のクッキーを割って、前においてくれた。



「そうだな。それはいえるかもしれない。なにしろこれで『ベル』の使い方もわかっただろうし、彼らもきっと、気負いなくつかえるだろうしな」

 ジョーが紅茶のはいった優雅なカップをもちあげた。



「そうだといいわ。 このさき、ちょっとしたことでもなにか気になったら、ベルを押してこのこたちを呼んで、と伝えておいて。湿地じゃなくてもネズミがたよりになるのは確かなんだからね」


 シスターがおれにおかわりのクッキーをくれる。


「ハンス、あんたのおかげで『かわいいぼっちゃま』たちになにかあったら、すぐに助けにいけるようになったよ」

 ありがとうね、というシスターの指におれは手をおき、ふかくうなずいた。




 わかっている。シスターよ、わかっているんだ。



 ここからは、きっと、ながくはげしい戦いの物語となるのだろう。



 こんどの旅よりもずっと危険でおそろしいことがまちうけているかもしれない。



 だが、おれは、・・・いや、おれたちネズミは、それにたちむかい、打ち勝ち、 ・・・たちむかい、打ち勝って・・・・ この、眠気にかたなければならない。



「あら、ハンス、おなかがふくれて眠くなった?」


 気づけばおれはシスターの手によりかかってうとうとしていた。




「しかし、あんなベルをつくってネズミに届けさせるなんて、シスターはなにか気になってることがあるのかね?」


 ジョーにきかれたシスターは、おれの頭を細い指先でなでた。


「そりゃ気になってるさ。ずっとね。 ―― だからあたしは、人間をみはってる。それが役目だもの。だけど、 ―― このごろは、悪鬼や精霊と人間の関係がひどく変わってしまって、ここで人間をみはっていても気づけないような、おかしなことが起こるんだよ・・・。いったい、どうしたっていうんだかね・・・・なんだか ―― 」

 シスターの声が続いていたが、頭をなで続けられ、おれはもう半分夢の中だった。




 もしかしたら、つぎに目がさめたら、『かわいいぼっちゃま』におれがとどけたあのベルでよばれているところかもしれない。



 さあ、いつでもこい。準備はできてるぞ。



 おれは『タイヤ』をよけ、『カラス』に案内をさせ、『バイク』にのって街を走り、『ナッツ』をかじりながら『狼』にのってながい階段をのぼり、『かわいいぼっちゃま』が膝をついておれをむかえる夢をみていた。




 さあ、まってるぞ、これからさきの困難にだって、おれはこんどの旅でたちむかったように、勇気をふりしぼってたちむかう。


 さあ、いつでも・・・・




 いや・・・、いまはちょっと来なくていい。

 


 おなかがふくれて、シスターになでてもらって、あったかい寝床にいるいまみたいなときは、『かわいいぼっちゃま』には、あのベルのことは忘れていてほしい。




 それはこんど『かわいいぼっちゃま』にあったら、相談してみよう。




 覚えていられたら・・・だけど。






目をとめてくださった方、あつきあいくださった方、ありがとうございました!


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