旅立ち
ゆるふわ設定で『A班』というシリーズで続けております。 今回はそれにでてくるネズミが主役の短いはなしとなっております。。。ほのぼのというのを欲してかきました。。。
― 旅立ち ―
きょうおれは旅にでる。
いや、ただしくは、使命を負って、旅にでる。
これは、えらばれたおれの、危険と災難にみちた、危険な旅の物語となるだろう。
この先にはきっと困難がたちふさがり、危機がおそいかかるだろうが、それはすべて、おれを試すためのものなのだ。
だからおれは、それらにたちむかい、打ち勝ち、
「はいはい、あとはこのビスケットをいれて」
えっと、打ち勝ち、たちむかい、
「ああ、この角砂糖もいれておゆき。え?ああ、そうね、雨にふられたら溶けちゃうわ」
とにかく、たちむかい、・・・それから・・・
「キューブチーズはいれたからね。おや、これでもういっぱいだわ。たりるかねえ。ほんとうはパイをいれてやりたいけど、みんながやめておけっていうのさ」
その『みんな』が、いっせいに首をふり、やめておけ、の念押しをする。
「そお?じゃあいいかい?こんなもんで」
ほそい指でバッグのふたをしめると、つぎにその指先でバッグをつついた。おおきなバッグは、ものすごく小さくなる。
せおってごらん、とからだにまわされたヒモを結ばれた。
「これでまあ、つくまでは大丈夫だろうけど、・・・。ほんとうに平気かい?もしかしたら雪がふるかもしれないよ」
ああ、そうなったらそれはきっと、《おれをためすための雪》だろう。
「まあ、あんたは特別かしこいし、ほかのみんなからも信頼されてる。きっとやりとげるだろうとは信じてるけど、無理をしちゃだめさ。 いいかい?困ったときは、ちゃんとそのベルをならすんだよ。みんなが助けにいくから」
おれはしっかりうなずいた。
だが、わかっている。このベルは最終手段だ。
みんながそわそわとおれをみあげている。
ほんとうなら、みんなと握手でもして言葉を交わしてからでなければならないのだろうが、おれはただ、みんなをみおろし、『いってくる』とだけ口にした。
みんながいっせいに手をふり、がんばれ、と言ってくれる。
「じゃあ、注意したことをおもいだして、くれぐれも気をつけて」
細い指がおれの頭をなでて、鼻先をつつかれた。
おれはすばやくのっていたテーブルから椅子を伝ってかけおり、ドアの前でふりかえってさいごのあいさつをした。
「 『 いってきます しすたー ・すふぃる 』 」
「いってらっしゃい。ハンス。湿地のむこうには道路があるからね。ひかれないように気をつけるんだよ」
ドアをひらいてくれたシスターの足元にならぶネズミの仲間たちもくちぐちに、『タイヤ』や『ワシ』や『フクロウ』などに気を付けるようさけび、そのこえにみおくられ、おれの旅ははじまった。
まずめざすのは、おそろしい湿地だった。




