第9話「祈りのような一撃」
アークの黒い魔力が森を削り取る。
大地が軋み、空気が焼け、セラの肌に刃のような痛みが走った。
それでも、彼女は一歩前へ出る。
背後で、リオが震えながらも剣を握っていた。
「……セラ……」
声がかすれている。
だが逃げる足音はしない。
アークが静かに立ち、二人を見下ろす。
「理解していないな、少年。
その女は“生きるほどに世界を蝕む力”だ」
黒い光が彼の周囲に集まる。
「守れば守るほど、お前の手は血に染まる」
リオは歯を食いしばる。
「……それでも……!」
足が震えても、止まらない。
「それでも……俺は、セラをひとりにしない!!」
その声に、セラは息を呑んだ。
アークの指が動く。
空間が歪み、
黒い閃光が一直線に放たれた。
セラは考えるより先に、身体が動いていた。
「リオ、伏せて!!」
彼女は前に飛び出し、閃光と正面から衝突する。
空が砕けるような音。
衝撃が波となって吹き荒れ、木々が一斉に倒れる。
煙の中で、
セラの身体がゆっくりと崩れ落ちた。
「セラ!!」
リオが駆け寄り、彼女の腕を掴む。
その温もりに、意識が途切れかけていた彼女の瞳がわずかに揺れた。
「……どうして……そこまで……?」
リオは震える声で叫ぶように言った。
「だって……俺は……!」
言葉はうまく出てこない。
でも、心だけははっきりしていた。
「……セラと、生きたいんだ……!」
アークはその光景を、冷めた視線で見つめていた。
「なるほど……“選んだ”か」
黒い魔力が再び渦を巻く。
「ならば見せろ、少年。
その覚悟で、どこまで抗えるかを」
森が静まり返り、
三人の影だけが長く地面に伸びていた。




