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第8話 「砕ける覚悟」

黒い暴風と黒雷がぶつかり合い、空間そのものが悲鳴を上げるようだった。


セラは膝をつきながら、暴走する魔力を必死に押さえ込んでいた。

抑えようとすればするほど、逆に魔力が暴れ、内側から身体を壊そうとしてくる。


(ダメ……制御が……!

 このままじゃ、私が……みんなを……)


アークは暴風の中心を静かに見つめていた。

その顔は無表情――だが、ほんのわずかに苦味が混じっているように見えた。


「セラ。君は“滅び”を抱えている以上、

 その魔力は君一人では押さえきれない」


黒雷が指先で揺らぐ。


「だからこそ、私はここで――」


「やめろ!!」


リオが割って入った。

まだ息は荒く、足も血だらけだ。

それでもセラの前に立ちはだかる。


「セラは……絶対に、壊させない!」


アークはリオを見下ろす。


「少年。

 君は自分が何を相手にしているか、本当に分かっているのか?」


「分かってる!!

 でも……俺は逃げない!」


アークの瞳に、わずかな戸惑いが走る。

その隙はほんの一瞬――だが、セラにはそれが見えた。


(リオ……なんで……そんな顔するの……)


セラの暴走がさらに激しくなる。

黒い気流が森の木々を巻き込み、木片が空を舞う。


「セラ、離れろ! 巻き込まれるぞ!!」


「でも……っ、動けない……!」


分かっているのに身体が言うことをきかない。

魔力の奔流が筋肉を硬直させ、肺を締めつけていた。


アークが掌を向ける。


「これ以上暴れれば、本当に死ぬ。

 セラ、意識を手放せ。

 私が止める」


「……やめろアーク!!」


リオが叫び、アークに向かって飛び込む。

剣を握る手は震え、傷は深く、視界も霞んでいるはずなのに――


それでも前に出る。


アークの雷撃が弾ける。

少年の身体へ、一直線に黒雷が伸びる。


「リオ!!」


セラが必死に手を伸ばす。


しかし届かない。

魔力の暴走に足を縛られて、動けない。


黒雷がリオを貫こうとした――その瞬間。


爆ぜたのは、雷でも剣でもない。


リオの胸元から、淡い光が広がった。


アークが目を見開く。


「……“それ”を持っていたのか」


リオ自身も驚いたように胸元を見る。

外套の下から、砕けた銀色の護符が落ちた。


それは、以前セラが渡した――

「また会えた時のためのお守り」。


アークが低く呟く。


「古代結界の……欠片。

 そんなものを、どうして……」


リオは一歩、アークに迫る。


「どうでもいい。

 俺は……セラを守るために使っただけだ!!」


アークの表情が、わずかに揺れた。


セラは震えながら叫ぶ。


「リオ……そんなの、守るために使ってほしくなんて――!」


「セラは黙ってろ!!」


リオが振り返り、怒鳴った。

涙のにじんだ目で。


「守られたくないなんて言うな!!

 俺はお前を――誰よりも守りたいんだ!!」


アークがその言葉に反応し、動きを止める。


黒暴風と黒雷が絡み合う中心で、

たった一人の少年の叫びが、空気を切り裂いた。

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