第12話 「アークの本気」
世界が崩れていく。
空は裂け、地面は陥没し、
森だった場所は巨大な渦へ吸い込まれるようにねじ曲がっていた。
セラの叫びと共に放たれ続ける
《終焉魔法》は、
生き物が存在するための“土台”そのものを削っていく。
アークはその中心に立ち、歯を食いしばった。
「……これほど……!」
黒い外套が吹き飛び、素顔が露わになる。
その輪郭さえ歪むほどの圧が、
セラから四方八方に放射されていた。
崩壊の風がアークの片腕を容赦なく削り、
黒い霧のように散らしていく。
「フッ……これが“滅びの真名”か……
ならば――」
アークの足元に巨大な魔法陣が展開された。
それは、今まで彼が見せたどの魔法とも違う。
桁違いに濃密で、冷たい。
そして――純粋に“強い”。
「この私も、本気で応じなければなるまい」
黒い魔力が天へと伸び、
空の裂け目にまで触れる。
アークが放った魔法はわずか一語。
「――《深淵領域》」
瞬間、世界が止まった。
セラの《終焉魔法》と、
アークの《深淵領域》がぶつかりあう。
互いの魔法が空間の中心で押し合い、
空から無数の黒い雷が走り地面を焦がす。
「う……ぁ……あああああッ!!」
セラは暴走していない。
怒りでもない。
ただ――
リオの名を呼び続けるために魔法を放射していた。
アークが叫ぶ。
「目を覚ませ、セラ!
その力は“世界を壊すため”ではない!!
お前自身を壊すために存在しているのだッ!」
しかし、セラには届かない。
涙が流れているのに、
その目は赤く燃え、理性を完全に失っている。
「リオ……返して……返せぇぇぇぇッ!!」
崩壊が加速する。
大地がひっくり返り、
空が千切れ、
アークの足場が次々と消滅する。
アークは舌打ちした。
「……このままでは……
本当に世界そのものがもたん!」
セラの真後ろ――
リオの倒れた身体が黒い亀裂に飲み込まれかけている。
アークの目が、わずかに揺れた。
(……あの少年を、完全に失わせれば……
セラの破滅は止まらない……)
アークが拳を握りしめる。
「仕方ない……
禁じられた方法だが――
“魂の接続”で、少年の命を一度だけ繋ぎ止める」
アークが黒い光をリオへ伸ばす。
だが、その行為は――
彼自身の存在を削る行為だった。
「……死ぬなよ……少年。
お前が死ねば……
この女は、世界ごと自分を殺す。」
アークの身体が黒い風に削られ、
片膝をつきながらも手を伸ばす。
セラの叫びが止まらない。
崩壊の中心で、
アークは初めて――
必死に何かを守ろうとしていた。




