第11話 「崩壊の胎動」
アークの黒い魔力が一段階、深く沈んだ。
次の瞬間――
空気そのものが裏返るような衝撃が走り、
セラとリオの足元へ“闇の槍”がいくつも突き上がった。
「っ……!」
セラが反応するより早く、
リオが彼女を突き飛ばした。
「セラ――下がれ!!」
その声が、最後だった。
黒い槍が、リオの胸を貫いた。
時間が止まった。
真っ黒な杭が心臓の中心を突き破り、
リオの身体が糸の切れた人形みたいに崩れ落ちる。
血が、土に落ちていく。
「…………あ」
セラの喉が、その一滴の音に震えた。
アークが呟く。
「無駄死にだ。
少年の努力も、想いも……お前の存在には勝てなかった」
その瞬間。
セラの中で何かが“切れた”。
感情ではない。
理性でもない。
存在そのものの“拘束”が壊れた。
黒い風が、世界を悲鳴のようにかき乱す。
「…………リオ」
小さすぎる声。
震えすぎて、声になっていない。
「返して……」
地面が波打つ。
木々が、悲鳴を上げて裂ける。
「返してよ……」
黒い紋様が世界中に広がるように、
森全体へ無数の線が走った。
アークの顔から、余裕が完全に消えた。
「まさか……そこまでか……!」
セラの紅い瞳の奥で、
何百年も封じられていた“真名”が開く。
その声は、泣き声のまま、呪いに変わった。
「――《終焉魔法》」
世界が反転した。
空が裂け、森が崩れ、音が飲み込まれる。
アークですら後ずさるほどの、
純粋な破滅だけが満ちていく。
それでもセラはただ一言だけを繰り返した。
「返して……リオを……返してぇぇぇッ!!!」
破滅の魔法が、世界を呑み込んだ。




