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第1話 「黒き少女、焼け跡に立つ」

夜明け前の空は、墨を流したように暗かった。

村の広場には、燃え尽きた家々の骨だけが残り、まだ燻ぶる灰が風に舞っている。


その中心に、ひとりの少女が立っていた。


長い黒髪。

両手は煤で汚れ、瞳は深い紅。

――そして背中には、まだ消えぬ魔力の残光。


「……また、やっちゃった」


少女はかすかに笑った。自嘲の、そしてどこか諦めの混じった微笑みだ。


名は セラ。

王国最悪の禁呪・“滅びの系譜”を唯一扱える、災厄として恐れられる魔道士。


だが、本人にそんな自覚はない。

自分の魔力が暴走しやすい体質だと、ただそれだけに思っている。


足元に、小さな白い花が一輪だけ残っていた。焼け跡の中で奇跡のように生き残った花だ。


セラはしゃがみ込み、花の茎をそっとなでた。


「ごめんね……守れなかった」


その声は震えていた。

彼女は“滅びの魔道士”と呼ばれるが、本当は破壊が大嫌いで、人よりも弱い生き物に優しい少女だった。


そのとき――


「そこにいるのは、セラ・ノルディアか!」


甲冑の音を響かせ、王国騎士団が広場へなだれ込んできた。

セラは顔を上げる。数十名の騎士たちが剣を構えていた。


「違うんだよ……私、助けようとしただけで……!」


「村をひとつ焼き払って“違う”だと!?」


セラの肩がびくりと震えた。

やはり、また誤解される。

彼女は言い訳も反論も苦手だ。


「……逃げたほうがいいかな」


自分に問いかけるように呟き、セラは指を鳴らした。


次の瞬間――

灰の地面から黒い霧が立ち上がり、セラの姿がふっと掻き消える。


「待て、消えた!? 追え!」


騎士たちの怒号が響く中、セラは森の奥へと姿を現した。

胸を押さえ、肩で息をしながら呟く。


「……もう嫌だよ。どうして私、いつもこうなっちゃうの……」


小さな背中が、森の闇に溶けるように消えていった。


そして――

この“滅びの魔道士”の少女が、世界の命運を左右する存在になるなど、誰もまだ知らなかった。

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