9/15
駅
これは数年前、Yさんがある地方都市の駅で体験した話だ。
出張帰りの夕方、乗り換えまで時間があったので、改札内の売店に立ち寄った。
よくあるタイプの小さな売店で、雑誌と飲み物、それに菓子パンが並んでる。
Yさんは缶コーヒーとチョコパンを買った。店員は無言で、淡々とレジを打った。
レシートを受け取って、ホームのベンチでそれを見たとき、違和感に気づいた。
日付が「平成13年3月24日」になっていた。
「え?打ち間違い?」
何度確認しても、確かに「平成13年3月24日」。
よくみると印字は古びた感じで、紙も少し黄ばんでる。気味が悪くなって、売店に戻ってみた。
けれど、そこに売店はなかった。
Yさんは駅員に聞いた。「さっき、ここでパン買ったんですけど…」
駅員は怪訝そうな顔で、「そこはもう20年以上前に閉店してますよ」と言った。
手元には確かに店のレシートがある。パンの包装には、賞味期限が「01.03.23」と印字されていた。
Yさんはそのパンを食べなかった。今でも、冷蔵庫に入れてある。