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 大学時代、僕は写真サークルに所属していた。

夏休み、仲間と一緒に瀬戸内海の小さな島へ撮影旅行に行った。観光地ではない、地元の漁師しか知らないような場所だった。

 その島には、地元の人が「潮の声が聞こえる浜」と呼ぶ入り江がある。

夜になると、波の音に混じって誰かの囁き声が聞こえるという。

地元の民宿のおばあさんは「昔、あそこで溺れた人がいてねぇ」とだけ言った。

 

 僕たちは興味本位で、その浜に夜の撮影に行った。

月明かりが水面に反射して幻想的だった。

三脚を立ててシャッターを切っていると、ふと、背後から

「おいで…」

と声がした。風かと思ったが、他の仲間も顔をこわばらせている。

その瞬間、海から白い人影がゆっくりとこちらに向かって歩いてくるのが見えた。

足元は水の中。波に逆らうように、滑るように近づいてくる。

誰かが「逃げろ!」と叫び、僕たちは機材を放り出して浜を離れた。

 

 翌朝、恐る恐る浜に戻ると、三脚のそばに濡れた足跡が一列、陸の方へと続き、そして唐突に消えていた。まるで、途中で海に引き戻されたかのように。

民宿のおばあさんにその話をすると、静かにこう言った。

「潮の声を聞いたら、振り返っちゃいけんのよ。あれは、帰れんようになる声じゃけぇ。」



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