6.帰らなくても良くないか? ダメ男爆誕中!(テオ視点)
今私は港町に来ている。
セナの転移魔法で一瞬で着いてしまったのだ。
転移魔法はとても難しいのだが、問題なく使いこなしているのが本当にすごい。
そして今日の彼女はいつもと違い、女性らしい格好をしている。何故か少し落ち着かない。
「先に港でお魚を買ってその後に色々見て回りませんか!」
いつもより元気な彼女が着いてすぐに向かったのは港で行われている朝市だ。どこを見ても魚しかいない。
正直俺にはどれがおいしいのか全く分からない。
「どれを買うんだ?」
「出来るだけたくさん買う予定です!…あ!すいません、これ下さい!」
「あいよ!ありがとね!」
…セナが今買おうとしている真っ赤な魚がうまいとは少しも思えないのだが、大丈夫だろうか…。
「それはうまいのか…?」
「何言ってるんですか?この前作ったお魚の揚げ物、タルタルソースがおいしいって言ってくれたじゃないですか!」
あのサクサクとした衣とほろほろとした魚の身にタルタルソースとか言う酸味のあるうますぎるソースをかけたフィッシュフライとやらがこれから出来ているのか…?!
「あれが、これなのか…?」
「そうですよ。あ!そっちも下さい!」
「そんなに買ってくれるならサービスするよ!」
「ホントですか!ありがとうございます!」
次に手に取っている黒いのはうまくないと思うのだが…。え?エビ?!それが?!影も形もないではないか!頭と殻と尾を取って火を通すとああなる…?本当か?
どんどんと買われていく海産物はどれもうまそうには見えないが、聞くとどれも実際に食べていてうまかったものばかりだった。
本当に不思議だ。
彼女といなければ私は一生これらのことを知らずに生きていただろう。
買ったものは全て彼女のアイテムボックスへ入れられていく。
こちらも難しいうえに術者の技量によって中の容量が変わる。つまりそれだけ高位の使い手だということだ。
本当に彼女はただの平民なのだろうか…?
そんなことを考えている間に港の端まで来てしまったようだ。
相当いい買い物が出来たのだろう、とても満足したいい笑顔をしている。
「お待たせしました!次はどこに行きましょうか?」
「そうだな。前に行ったことのあるいいお店があるんだが。」
「テオさんのおすすめですか?是非行きましょう!」
「分かった、案内しよう。」
「お願いします!」
昔に友人と行った海産物を出す店でどれもうまかった記憶がある。きっと彼女も気に入るだろう。
しばらく歩いたところにその店はあった。
入ってテーブルに着き、注文をする。久しぶりに食べたが、運ばれてきた料理はどれもうまかった。彼女もとても味わっておいしそうに食べていた。連れてきて良かったと思う。
一方その時のセナはテオの連れてきたお店がめちゃくちゃ高級店でバンバン頼むので、合計金額と一口分の値段を考えてしまってゆっくり味わわざるを得なかった。ちょっとだけ後悔もしていた。
そんなセナの気持ちなんて知らないテオは「また二人で食べにこよう。」とセナが聞いたら「勘弁してくれ!」とつい言ってしまいそうなことを考えていたのだった。
店を出ると昼に近い時間になっていた。
今食事を済ませたし、次はどうするのか。
「どこか行きたいところはあるのか?」
「あります!とあるお店でお刺身が食べられるそうなんです!」
「おさしみとは何だ」
「お魚を生で食べる料理ですね。」
「魚を、生で食べる…」
「…とりあえず、行きましょう。」
…彼女が歩き出してしまった。
後ろについてはいくが、魚を生で食べるのはうまいのか?そんなのを食べて大丈夫なのかが一番気になる。腹をこわすと思うが…。
結論を言うとうまかった。
意外と魚臭いということもなく、種類によって触感が全然違って面白かった。魚につけた醤油とか言うソースも不思議と合っていて良かった。
セナがその醤油を店員にどこで買えるかを熱心に聞いていた。気に入ったようなので後で買いに行くだろうから、これから出てくる彼女の醬油料理が楽しみだ。
そして、醤油を買い、露店で買い食いをし、転移魔法を使って家に帰ってきた。
その後は風呂に入り、今日買ってきた海産物で彼女が作った料理を肴に酒を飲む。私好みのいい酒に味濃いめのうまいつまみがよく合う。
…このまま、ここに居ては駄目だろうか。
帰らずとも、私の代わりはいくらでもいるだろう。
優しく、温かで、物静かで、料理がうまく、魔法が得意で、気持ち悪い視線を向けることもなく、謙虚で、私を尊重してくれる。
こんなにも居心地のいい女性がいるだろうか。…いや、居ないだろう。
…私は、彼女の傍にいたい。
読んでいただきありがとうございます!
頭と殻が外され、背が開かれ、加熱されたエビは「もはや別物では?」という程の変化を遂げるなぁ、と感心してしまう事があります。
「面白いなぁ!」
「続きが気になる!」
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