5.いつになったら帰ってくれますか?(切実)
テオさんを助けてから約2か月が経ち、状態は完治していると言っていいと思う。
正直どんなに早くても1年くらいはかかると思っていた。恐るべし、テオ氏の体力と回復力。
しかしいつまで経っても「帰る」とは言ってこないのはなぜだろう…。
最近はそのことがすごく気になる。
私の予想では貴族で騎士な彼には帰っても居場所があるし、婚約者がいてもおかしくないだろう。
「せめて生きていることを伝えた方がいいのではないですか?」と言ってみたことがあったけど、「問題ない」とだけ言われてしまった。
何か帰れない事情があるのだろうか?
窓からの日差しで目が覚める。
窓の外から今日も気合の入った声が聞こえてくる。
私が起きてくる頃にはすでに彼は起きて朝食が完成するまでずっと素振りや剣の型を繰り返しているのだ。
「私もご飯作らないと…。」
慌てて1階に降りて食事の準備を始め、ある程度用意が出来た頃に外へ呼びに行く。
すると彼はかいた汗を流しに行くので、その間に仕上げを済ませる。
そして二人が揃ってから朝食を静かに摂り始める。
朝からボリューム感のあるものは私が食べられないので、朝食は焼いたパンにスープ、サラダ、それにベーコンや目玉焼きなどを添えることが多く、今日はウインナーとスクランブルエッグにした。
私とは違いテオさんはとても沢山食べるので約5人前分を準備するが、ペロッと軽く平らげてしまう。あの量を一体どこに収めているのか、なぜ太らないのか全く分からない。
朝食後はいつも紅茶を飲みながら今日の予定の話をしている。
「今日は何をして過ごしますか?」
「この後は本を読もうかと思っている。昼からはまた訓練に付き合ってくれるか」
「分かりました。いいですよ。」
「ありがとう。セナは買い物に行かなくていいのか?」
私は週1で決まった日にポーションの売却と買い物に出ている。
買い物では主に食料とテオさんの暇つぶし用の本を買っていて本当は今日がその日だけど明日は月1の無属性の転移魔法による遠出の予定を計画している。
テオさんと一緒に行こうと思っているのに未だに誘ってはいない。
「明日行く予定です。宜しければ、一緒に行きませんか?」
「行こう。どこに行くんだ?」
「転移魔法を使って港町に行こうかと思っています。」
「そうか。楽しみだ。」
「私も楽しみです。ずっと行っていなかったので、海鮮料理が食べたいんです。」
「それはいいな。是非食べに行こう。」
「はい!是非!」
彼からのOKも出て海産物を食べにも行けるので、本当に明日が楽しみだ!
お昼前まで彼が家で読書をしている間に私は森に入り、ポーションの材料を調達する。
今は何かとお金がかかるのでいくらあっても足りない状況だ。
しかし全てをごっそり取ってしまえば、生えなくなって困るのは自分なので考えながら収穫する。
ちょっと早めに森から家に帰り、仕分けをした後昼食の準備に取り掛かる。
お昼はしっかりボリュームのあるお肉中心のメニューだ。
ちなみに今日のメインは豚っぽい魔物肉で作るなんちゃってトンカツだ。トンカツソースはないけど、オーロラソースやトマトソースを作っておく。
そして意外と日本の家庭料理は彼の口に合ったらしく、高評価なのだ。特にカレー。
本当に見ていて良かった!ありがとう、料理動画とレシピサイト。
準備が整ったら読書中の彼を呼んで少し遅めの昼食を摂っていく。
食事中ほとんど会話がないけど、参考にするために料理の感想をどうにか聞き出し、その後はいつもと同じように黙々と完食するまで食べ続けた。
完食したら食器を下げ、紅茶を入れて食休めをする。
昼からは晴れていればテオさんの訓練に付き合い、雨が降っていれば魔法について話すか、一緒に読書をする。
今日は晴れているので二人で庭に出て距離を取る。
「始めるか。」
「いつでもどうぞ。」
私がそう言うと彼は走りだし、水魔法で10cm程の水玉を打ってくる。それを風魔法で逸らしてから躱す。
この訓練は水魔法を打ち合って当たった方が負け、というシンプルなルールで行っているが、これが意外と難しい。
まず相手も逃げるから当てるのが難しいし、土魔法で壁を作ってから当てようとしても回り込まれたら終わりだし、逃げながら魔法を打つと変な方向に飛んで行ったりするし。
私も負けじと水玉を作り出す。
数は30個と多いが、その分彼が作り出したのに比べて大きさが半分しかない。その小さな水玉たちを無差別に発射する。
しかし彼は当たらないギリギリのところで全て躱していく。私はいつも物量作戦で彼に挑んでいるので、手の内がバレてしまっているのだ。
その代わり彼が水玉を一つしか出さず、逃げに徹して機会を窺うというやり方を知っているので、まだやりようはあったりする。
「テオさん。今日の夜ご飯は何がいいですか?」
「そうだな、カレーがいい。」
「カレーですか…。カレーは仕込みが大変で作るのに時間がかかるんですよね…。」
「そうか。なら早く終わらせないとな。」
…掛かった!今、彼はカレーにドハマりしているので!
こうすると彼は攻撃に転じて近づいてくるので、そのタイミングで水魔法をシャワーの様にして水を掛ければ、私の勝ち!!
「私の勝ちです!」
「…」
私の目の前には頭から足まで全身水浸しになって髪をかき上げるテオさんがいる。
リアル水も滴るいい男だ。
「…もう一回だ。」
「負けませんよ?」
こうして毎回何回かの勝負を行うが、最後には二人ともびしょ濡れになる。両者とも負けず嫌いなので。
訓練をした後は交互にお風呂に入って私はポーション作り、彼は読書をして時間を潰す。
そして日が傾いてきたら夕食の準備をする。今日はもちろんカレー。
食べたいとリクエストされると思って前日に仕込んでおいたのだ。私は断然2日目以降のカレーが好きなので。
そして二人で夕食を囲む。
カレーの時は味わって食べたいのか、普段にも増して喋らなくなる。そして何を言うかは決まっている。
「おかわり。」
「…はい。」
カレーのなくなった器を下げ、新しい器を手に取り盛っていく。それを持って戻り、彼に渡す。
「どうぞ。」
「ありがとう。」
そしてまた自分の分を食べ始める。
…本当に食事中の会話がこれだけなの信じられる?
おいしく食べてくれているのは分かるんだけど、もう少し作っている側としては何かリアクションが欲しいところだ。
そして夕食後にテオさんは晩酌をしている。
事の始まりは足が完治したお祝いとしてお高い良いお酒を買ってきてしまったことだろう。それを飲んでから彼の夜の楽しみになってしまった。
…お酒高いし、おつまみも作らないとだし。
カレーだってスパイスがすっごい高いんだから。
貯金が尽きる…。本当にいつ帰るの…?
最近は寝る前にこの疑問が頭から離れてくれないのが悩みです。
読んでいただきありがとうございます!
2025.7.3
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