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4.嘘だけど、サンドウィッチまた作るから許して

あれからテオさんは驚異の回復力を見せた。


左足も最初は動かしづらそうだったが、いつの間にか普通に家の中を歩いていた。


みんなこんなに早いものなのか、それとも彼が異常なだけなのか甚だ疑問だ。

まあ、早く良くなるのはいいことだけど。



そして彼は鍛錬をしたがっていたが、身体の状態的に厳しくて諦めた代わりに私が普段使っている魔法に興味を持ち始めた。


私使っているのは水、風、土、無の4属性だけ。他は徹底して使わないようにしている。

それでも魔力の制御や日常生活に生かすような使い方は目新しいのだと言う。


なので最近は彼に質問されてはやり方を教えて実践してみる、というのを繰り返し行っている。




今日はとても日差しが気持ちいいので、庭に出てピクニック気分を味わいながら魔法を使ってみることになっている。


朝からせっせとサンドウィッチやスープ、クッキーなどの焼き菓子を仕込んでいく。庭にテーブルやチェア、テーブルクロスなどの準備も忘れない。


最近は彼のために普段使っている茶葉をずっと気になっていたお高い茶葉に変えたのだが、これがとてもおいしくて私がハマってしまった。

贅沢に慣れてきて彼が帰った後がちょっとやばいかもしれない。



全ての準備を済ませて彼を庭に呼ぶ。

暫くして現れた彼はとても洗練された所作でチェアに腰かけた。その姿に見惚れてしまったが、すぐに我に返って店員に聞いた通りに紅茶を入れ、テーブルに置く。


「どうぞ。」

「頂こう。」


カップを優雅に手に取り、口に運んでいく。

この空間だけ次元が違うような気がするのは私だけではないはずだ。



私は丁寧な所作を心掛けつつも普通に紅茶を飲む。

うん。いい香りがしておいしい。


次にサンドウィッチを手に取って食べる。

チーズとハムにレタスだけというシンプルな具材のサンドウィッチが私はとても大好きで、おいしくてあっという間に食べ終えてしまった。


一度紅茶を口に含んでリセットしてから手作りクッキーを手に取り、食べてみる。

バターをたくさん使っているのでサックサクな上に口いっぱいに香りが広がる。砂糖を控えめにしているのでとても食べやすい。


決して砂糖が高いからケチったわけではない、断じて違う。



食べ物に夢中で彼を一切気にしていなかったので視線をそちらに向けるとそれはそれは上品にサンドウィッチを食べていた。


本当に同じ人間か?と問い質したいくらいに私と違いすぎる。

これが貴族というものなのか。


私の視線に気が付いた彼が口の中の物を飲み込んでから話しかけてきてくれる。


「どれもうまいな。特に卵を使っているサンドウィッチが好みだ。」

「本当ですか?それは良かったです。また作りますね」

「頼む。それとセナが作った菓子はどれも甘過ぎず、食べやすい。」

「私も甘みの強いお菓子はあまり得意ではないので、お口に合って良かったです。」

「これからもこれくらいの甘さで頼む。」


そう言って彼はまた食事を再開している。

タマゴフィリングが好きなのね。卵も高いけどまた作ってあげよう。お菓子の甘さもお気に召して良かった。


そう思いながら再度クッキーに手を伸ばした。




そうしてゆっくりとした時間を過ごしていると、森から魔物が姿を現した。


テオは瞬時に臨戦態勢になり、様子を窺っていたが、魔物は私たちに気が付くことなく森へ帰っていった。


その姿に驚く彼を見ながらクッキーをまた1枚口に放り込む。

そんな私の行動が気になったようで、チェアに座り直して疑問を口にする。


「なぜ普通にしている。」

「ここには結界が張られていますから。」

「…結界だと?それはセナが張ったものか。」

「いえ、違います。結界はこの家の元持ち主が張ったもので、今も効果が持続しているのです。」


嘘である。

さすがのトムおじいちゃんも死んでまで効果の続く結界魔法は張れなかった。なので、結界魔法に関してはそれはもうスパルタで教えてもらった。結界魔法のために毎日魔力を枯渇させかけていたのを今でも覚えている。


「そうか。その人物はよほどの使い手だったのだろうな。」

「ええ。とても、とても素晴らしい人でした…。」

「…亡くなったのだったな。」

「はい…」


トムおじいちゃんのことを思い出すと今でも悲しくなる。優しくて強い、私を安心させてくれるこの世界でたった一人の家族。本当は、もっと傍にいて欲しかった。


「結界魔法はどうすればいい?」


そんな私の気持ちを察してかテオさんは気を使って話題を変えてくれた。

その気遣いが今は嬉しい。


「結界魔法はですね、基本的に媒体を使って発動します。」

「その媒体はやはり魔石か。」

「はい、その通りです。魔石で発動に足りない魔力や持続させる魔力を補います。」


魔石とは魔物の心臓辺りにある魔力を帯びた塊で魔石があるもののことを魔物と呼ぶ。

魔石は日本でいうところの電力の役割を果たしていて、なくてはならない存在だ。

小さいものだと電池を買うような気軽な値段で売っている。


「なるほど。ここに張ってある結界も魔石を使っているのか。」

「はい、そうです。常に庭まで覆う結界は魔石の減りも当然早いです。」

「なら、魔石を使わない結界はどうやって張る?」

「張れるには張れますが、お勧めしません。すぐに魔力が尽きてしまいますから。」

「そうか。結界も万能ではないのだな。」

「魔法は便利な分、意外と魔力を使うものが多いですからね。仕方ありません。」

「そんなものか…」

「そんなものです。」


魔法の話をしているとあっという間に時間が経ち、お開きとなった。


その後の片付けも大変だった。テーブルを洗っている時に誤って水を被ってしまって寒かった。風邪引くかと思った。引かなかったけど。




後日、嘘をついたお詫びにタマゴフィリングサンドウィッチを作ってあげた。彼も喜んでいたし、問題なし!

読んでいただきありがとうございます!

コンビニのシャキシャキレタスのサンドウィッチが好きです。


2025.7.3

誤字報告ありがとうございます

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