33.割と至極真っ当な初デート
劇場のロイヤルボックス席。
舞台を見下ろすような眺望のそこへ私は案内された。
ソファが二台にサイドテーブルがそれぞれに一脚ずつ備えられていた。従業員による飲食物のサービスまで充実しており、こういうものに不慣れな私に代わり、テオがオーダーを済ませてくれた。
庶民な私にとっては当たり前のように対応することなど至難の業以外の何物でもない。
サラッと注文していたところに貴族感を感じました。
先にソファへ掛けたテオに自身の隣に座るように促され、ドレスを気にしながら遠慮気味に腰かける。
ボリュームのあるドレス越しからでも分かるほどの座席の柔らかさが凄い。
それにしてもふたりで並んで座って余裕があるとはいえ、近すぎやしないだろうか?これが普通なの?
今は空いているとはいえ、真隣に誰か来ると思うと解れた緊張が再発しそうなのだけれども。
「あの、あちらのソファのお客さんはまだ来ないのでしょうか?もうすぐ劇が始まりますよね?」
「ああ。ここは私達で貸切だ。安心するといい」
逆にまったく安心できないんだけど。
それは置いておくとして、ドレスがソファ面積を占領するので退いた方が良いかな?
「狭くないですか?私、あちらに移ります」
「いや、やめておいた方が良い。一階からここは意外と見えるから、別々に観賞しているとあらぬ疑いを掛けられかねない」
「えっ」
ゆったりソファで寛ぎながら劇を楽しむだけでそんな事になるの!?
貴族こわっ!
「私の隣は嫌か?」
「あ、いえ!そういう事ではなくて、ドレスだとどうしてもソファが狭くなってしまうので…」
「なるほど。ならもう少しこちらに寄るといい」
「私は大丈夫なんです!テオがどうかなと思いまして」
「私は…セナにもっと近くに居て欲しい」
「う……はい…」
熱っぽい視線を私に送らないで欲しい。
薄暗さと非日常感も相まって顔面偏差値にやられて頷いてちゃったじゃないの!
テオはスッとこちらへと肩が触れ合うくらいまで距離を詰めてきた。
距離が!既に近いのに…!
でも、肩が当たるくらいならまあまだセーフ!
そうこうしているうちに公演時間となったのか、会場が暗闇に包まれた。
内容は自国の王女と戦争中の隣国の王子様の恋愛物語だった。
争い合う両国の情勢によって引き裂かれながらも愛を育み、結ばれて、二人の結婚により戦争も終結を迎える。
ざっとあらすじを言えばこんな感じだろうか。題名と内容含めてロミオとジュリエットを想起させる。
こちらは超ハッピーエンドだけれど。
そんな事よりも、劇団員さん達の演技もうまいし、ドレスやアクセサリーもテオ曰く本物らしいし、貴族制度のある世界で本場の観劇を観賞するってすごい…!
特に音楽は完全生演奏・生歌唱で鳥肌が立った。
夢中で観ているとあっという間に公演が終了してしまった。
幕が下りる際には観客から拍手喝采で、私も惜しみない拍手を送った。
「素晴らしかったです。連れて来てくれてありがとうございました、テオ」
「喜んでもらえたようで何よりだ。…レストランを予約しているのだが、この後一緒にどうだろうか」
「ぜひ、喜んで」
テオにエスコートされて劇場に併設されたレストランへ向かった。
そちらで提供された料理はどれも美味しいだけでなく、見た目でも楽しむことができた。
それに観劇には興味がないのだろうなと思っていたが、彼は言葉少なにも感想を返してくれて。
でも、それだけではなくて。
「これを、今日の記念に」
「本当に?…ありがとうございます。開けてもいいですか?」
「ああ」
包装を解くと、中にはふたつのイヤリングが収められていた。
初めて貰ったプレゼントのネックレスと対になるようなデザインのそれはシンプルながらも嵌められたサファイアが華やかで。
「嬉しいです。本当にありがとうございます」
「毎日、身に着けて欲しい」
いつかと似たような台詞を口にしているが、あの時とは雰囲気は似ても似つかない、懇願するかのような、期待を込めた瞳をしていた。
それが何だか少しおかしくて。
「ふふふ……言うと思いました。毎日付けますよ、ネックレスと一緒に」
「ありがとう」
真正面の彼は眉尻を下げ、満足げな表情を浮かべていた。
そして食事後、馬車で王宮まで送り届けてもらい、初デートは終了したのだった。
デート前
テオ「結局何を贈ればいいのか…」
フィン「セナ嬢なら何でも喜んでくれると思うぞ?(実用性関係なくセナ嬢の事を考えて選ぶのが大事なんだから大丈夫だろ)」
テオ「だが…」
フィン「むしろ悩み過ぎて渡さない方がダメだわ」
テオ「そうか…」
フィンさんに丸め込まれたテオなのでした。
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