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30.協力者をゲットする…!

「フィンさん助けて下さい」

「おう、いきなりどうした?!」



第八魔法省執務室にフィンさんを呼び出して開口一番に出た言葉がそれだった。

でも仕方ないって思ってほしい。


「テオとうまくいく気がしません!」

「…悩みを聞けたと嬉しそうにしてたぞ、あいつは」

「出来る限り譲歩した内容を伝えたんですよ!なのに、守る気ゼロなんですよ!あの人!」

「取り敢えず詳しく教えてくれ」


あの時の会話とシルフィ様から聞いた事を覚えている範囲で伝えていく。


この場にはユリアさん達もいる。是非とも今後について一緒に考えて欲しい。ついでに愚痴も聞いてほしい。

その為に朝からみんなの分の昼食を仕込んできたのだから。


おいしい?ありがとう。沢山食べて、対価として私の話を聞いてほしい。


「__という事なんです」

「なるほどなぁ」

「あー、ねぇ…」

「仕方ないねぇ…」

「…」


何か思ってた反応と違う。


「?何ですか?その反応」

「いやぁ何というか、貴族と平民の考え方の違いと言うか何というか?」

「違い?」

「そうだな~、うーん…。俺ら貴族は幼い頃から精霊契約者の事をどれだけ希少な存在かを聞かされて育つんだ。敬いましょう、尊びましょう、ってな」

「元々精霊は神様みたいに崇拝されているからねぇ。その精霊と契約できるのは神子みたいに考えられてるんだよ」

「……なのに何で、トムおじいちゃんは良い様に利用されたの?私の意見も当然のように無視されるの?」


幼少期から刷り込まれてるならこの状況は矛盾してない?


「えっとねぇ…精霊契約者も同じ人間って考えて甘い汁を啜ろうとする人たちが一定数いるんだよ、いつの時代も。特に前精霊契約者は酷かったんでしょ?だから王家や高位貴族家はその輩たちから君を守ろうと必死なんだよ。本人の意思を無視するほどに」

「…そこまでして守るメリットがあるんですか?」

「あるね。魔法師は特に影響を受けるぞ。魔法が発動しやすくなったり、威力が増大したりな」

「他には精霊の属性によるんだけど、聖の精霊セレーネ様は病が流行らないと謂われているし、風の精霊シルフィード様は嵐が起こることはないとされているよ?それに怒らせると逆の事が起きるから丁重に扱いたいんだろうねぇ」



…ならなおの事私の意思を尊重するべきでは?

これでは完全に…。



「…本末転倒では?」

「そうだねぇ」

「その通りだな」


私の言葉に同意するみんな。ユリアさんとマックさんも無言で頷いている。


何となく事情は理解できたけれど、気持ちへの配慮がなさすぎるというか何というか…。


前回は囲わないようにしていたのが仇になって、今回は暴走気味。

その辺をうまく加減できる人はいないの?まあ、居たらこんなことにはなってないよね。


「私はどうしたらいいんですかね?今の話を加味すると、お互いに言いたい事を言わずに不満をため込む結婚生活を送りそうなんですけど」

「テオはそんなの関係なく言うと思うんだが」

「…そうですね。はっきりと言いたい事は言うタイプでした、あの人」

「そうなると、セナちゃんが伝えられるかっていう問題だけだねぇ」

「取り敢えずテオへの不満やら悩みやらを言ってみ?」


フィンさんが問いかけてくる。


これはもう愚痴を言ってもいいって合図だと思ってもよろしい?よろしいよね?!


「では、失礼して…。まず、テオは私のこと本当に好きなの?という所からなんですけど、私の予想ではただ単に今まで周りに居なかった物珍しさに興味を持っているだけなのでは?って思うんですよ。どう考えても私の扱いは使用人レベルでしかないので。正直に言いますと、私を女性だと思ってないから気安く接することができるんじゃないかなって感じているんです。なのでそのうち飽きてくるんじゃなかなっていうのが私の予想なんですけど、問題はその後どういう対応をしてくるのかが分からないのが一番の懸念点なんです」


最初は軽めに悩みから。

言ってから改めて思ったが、テオの事を好きになれそうな部分がまるでない。


そして私自身が恋愛的に好かれているとは到底思えない。料理と媚びない態度が人間として好まれているだけだろう。


「そんなに…?」

「好かれてはいると思うよぉ?」

「いいえ!ユリアさんなら分かってくれると思うんです!ね、ユリアさん!」

「い、いきなり私に振らないで下さい!」


同性であるユリアさんならきっと…!

と思って話題を振ったんだけどいつもみたいな瞬時返答がなくて、今日は何だか大人しいような…?


「いつもと何だか違いますね?ずっと黙ってるし」

「フィン副団長様がいらっしゃるのに普通になんてできません!」

「いいよいいよ、普段通りで。それでどう?共感できる?」

「えっと、そうですね。セナちゃんから聞いた話だけの判断になっちゃいますけど、好かれてないって考えちゃっても可笑しくないかなって思います」

「どういう所がそう感じさせるのかな?」

「そ、そうですね……セナちゃんが距離を取っていた時に一回しか訪ねて来なかった所とか、何かあったんじゃないかって心配した様子がない所とか、あと自分の事を話そうとしない所とかでしょうか」


そうですよね?そうですよね?ユリアさんだけは理解してくれるんですよ!

テオにもぜひ聞かせてやりたいくらいだよ、本当に!


「それは不満しかないな!」

「当たり前です。フィンさんもテオから聞いて思う所があったんじゃないですか?」

「思う所しかなかった!」

「ほらー!」

「まあ、庇う訳ではないが、あいつが誰かと付き合うのはこれが初めてなんだ。恋愛初心者のあいつに優しく教えてやってくれ」

「それを庇ってるって言うんですよ。…決まってしまったものは仕方ないので根気強く教育していきます」

「あははは!しっかり教育してやってくれ!…貴族として婚約者への接し方はちゃんと学んでるはずだから安心してくれ」

「…まったく安心できないので、期待しないでおきます。それと時々で良いので告げ口(情報提供)もお願いします」

「任せてくれ」


気負った風もなく返事をしたフィンさん。

これは頼もしい情報提供者だわ。

セナ(テオに希望は持てないからフィンさんの働きに期待しよ)

フィン(流石に庇えるだけの根拠が何もないから好意すら疑われたままだぞ。セナ嬢にここまで言わせるテオは今から挽回できんのか…?俺が一肌脱ぐしがないのか…)


最後まで読んで頂きありがとうございます!

第三章終わりです!次回から最終章「テオ育成という名の調教編」がスタートします!

どうにか間に合わせましたので、今後加筆修正する可能性が高いです…<(_ _)>

内容に変更はないのでご安心を!

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