27.精霊契約者になるという事
目を覚ましたら知らない天井でした。
「気が付いたか!」 「気が付きましたの?!」
そして声のした方に顔を動かすとそこにはテオと見知らない美女がいた。
え~と、どういう状況?誰?
頭が???で埋め尽くされているから一度記憶を整理しよう。
確か私は、シュフィーナ様に指導を受けて、それから帰りに令嬢達に絡まれて、それから……。
顔からサッと血の気が引いていき、体が震え始める。
そうだ、あの後私は魔法で攻撃されて…!
そしてハッとしてすぐに布団を頭から被り、全身を覆い隠す。
あれだけ魔法を浴びせられ続けたのだ。ポーションや回復魔法を使用したとしても元の状態に戻すなど不可能なはずだ。
つまり今の自分は髪が短いだけでなく、顔や身体の至る所に傷跡があるはずで。
それを誰かに見られるなんて…!
「セナ?どうかしたのか?…もしかしてどこか痛むのか?!」
「セナ様!お加減がよろしくないのであればわたくしにお申し付け下さいませ!」
「セナ?出てきてくれ、頼む」
「大丈夫ですわ!わたくしに何でもお任せ下さい!」
ふたりともとても心配してくれている。
それはありがたいけれど今は誰にも会いたくない…。
「…ひとりに、して…」
「セナ…」 「セナ様…」
布団に籠っているけれど物音や人の気配で二人が移動していないのが分かる。
お願いだから今は、今だけは…!
しばらくの間誰も動こうとせずにいるとガラガラとした扉が開く音と誰かが歩み寄ってくる足音がした。
「セナ嬢!目を覚ましたのか!」
「ああ。だが起きてすぐに隠れてしまった」
「そうなのですわ。人間、何とかなさい!」
「あ~…うん、なんとなく状況が掴めたわ」
入室してきたのはフィン副団長さんだったようだ。
彼だけは私の気持ちが理解できていると信じている。
「…ひとりに、してほしいんです…」
「うん、そうだと思ったわ。…という訳で、これ見てみ?」
「…?!」
布団の中に置かれたのは下に伏せられた状態の手鏡だった。
「「あ…」」と聞こえてきたのでふたりも気が付いたことだろう。
副団長さんだけは顔を見たいとも見られたいとも思うわけないと分かってくれると思ったのに…!
でも自分の今の顔がどのような状態なのか、いつかは知らないといけない。
手鏡を震える手で握る。けれど表に反す勇気が湧いてこない。
「大丈夫だ、セナ」
「そうですわ!安心なさいませ!このセレーネ、しっかりと治療致しましたわ!」
「セナ嬢の心配しているような事にはなってねぇから」
そこまで言われると見ない訳にはいかない気がする。
ゆっくりと手鏡を持つ手を持ち上げて顔を確認すると、
「えっ?傷が、ない…?」
短い髪はそのままであるが、いつも鏡で見る見慣れた顔がそのまま映っていた。何度も何度も鏡を確認するが結果は変わらない。
あんなに魔法を受けたのにどうして…?
「当たり前ですわ!聖の精霊であるわたくし直々に治療したのですから、傷跡を残すなんてありえませんわ!」
「セレーネ様のおかげで一命を取り留めたのだ。本当に無事で良かった」
「見つけた時はもう無理だと思ったけどな」
布団から顔を出し、女性に視線を向けると嬉しそうに微笑んだ。
この人が、聖の精霊…?
「…ありがとう、ございます」
「構いませんわ!わたくしの契約者ですもの。守るのは当然の義務でしてよ!」
精霊と契約?!しかも『私の契約者』って…!?
「えっ?!わ、私が?!」
「ええ!…本当はもっと早くに参上する予定でしたのに、引継ぎに時間がかかりましたの」
「え、あ、そう…なんだ…」
ひ、引継ぎ…精霊なのに人間味のある単語だな…。
ちょっと、怒涛の展開過ぎて理解が追い付かないんだけど…。
私がトムおじいちゃんと同じ精霊契約者。
全然実感が湧かない。
「えっと…とりあえず、これからよろしくお願いします」
「はい!こちらこそよろしくお願い申し上げますわ!」
満面の笑みを向けてくれたけど顔面の破壊力に目が潰れるかと思った。傾国の美女ってこういう容姿の人を言うんだと、今学んだ。
お互いに微笑み合っているとテオが咳払いをした。
「それでセナが眠っている間に決定した事がいくつかあるんだが」
「…はい?」
それから聞かされた決定事項は四つ。
・高位貴族家と養子縁組をすること。
・加害者には軽罰として修道院送り、重刑として死刑もしくは国外追放となる。
・精霊契約者として精霊爵という爵位を賜る。
そして四つ目が。
・テオとの婚姻
私は彼からの報告に呆然としてしまった。
まず養子縁組。
私には一切の決定権も拒否権もないらしく、貴族家は国王陛下を含めた上層部のお偉いさんがこれから決めるらしい。
次に処罰。
この判決が妥当なのかそれとも重いのか判断が付かないが、死刑は私の精神衛生上勘弁して欲しいと一応テオに伝えておいた。
そして首謀者にシュフィーナ様の名前が挙がったのには驚くと同時に落胆した。
とても優しい、頼れる上司だと憧れていたのに…。
次に爵位。
精霊爵は今回新たに新設された爵位で侯爵位相当らしい。
最後に婚姻。
これはシュフィーナ様とのひと悶着時に私との仲をテオ自身が公開したうえで国王陛下に直接懇願したらしい。
それで私の意見を無視する形で国王陛下の名の下に彼と既に婚約者同士となっているそうだ。
結婚式については一年後に執り行うため、今から準備を始めなければならないようだ。
この国たった一人の精霊契約者だから仕方ないかもしれないけれど、当事者そっちのけで全部決められるなんて…。
納得できるわけないでしょ!
テオを含めた貴族の自己中心的な考え方に憤慨し、一言だけでも文句を言ってやろうと口を開いたときだった。
「でもまあ、その人間のおかげで相当いい条件を引き出せたのは違いないぞ?」
懐かしさを覚えるこの声は…!
身体の向きを変えて確認すると、そこには約半年ぶりの風の精霊シルフィード様が立っていた。
「シルフィ様…!お久しぶりです」
「久しいな。貴様はそこの人間に感謝しておけよ。でなければ、骨の髄まで貴族共に搾り取られていただろうからな」
「そ、そんなに?」
「ああ。トムの時は酷過ぎて逃げたからな」
「あのトムおじいちゃんが?!」
「人間が決めた身分に振り回されたのだ。貴様も身に覚えがあろう?」
「…うん」
納得できてしまった。
自分自身令嬢達におとなしく付いていきまんまと死にかけたのだ。
トムおじいちゃんが魔法を隠すように言ったのも、貴族を避けるように忠告したのも全部、自分の実体験が元となっていたんだ。
「これからは危なっかしい貴様を傍で見張っておいてやる。…トムの最後の願いだからな」
「!トムおじいちゃんが、そんな事を…」
「ああ」
「…そっ、かぁ……」
トムおじいちゃんは私を本当の孫のように接してくれた。
そして最後の最後まで心配してくれていた。
ありがとう、トムおじいちゃん。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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